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【教員発信】 安田女子高校STEAMコースの特徴~遺伝子解析実験~

安田女子高校STEAMコースは、2021年4月に新設されたコースです。
今回は、安田女子高校STEAMコースで、理工系分野の特徴として実施している取組「タンポポの遺伝子解析実験」についてご紹介します。


■タンポポの遺伝子解析実験とは

タンポポには、在来種・外来種とそれらが交配した雑種とがあります。見た目では、総苞外片(そうほうがいへん)という、花の一番外側の部分で見分けることができるといわれています。この総苞外片が下の写真のように花にくっついていれば「在来種」、花から離れて反り返っていれば「外来種」、その中間であれば「雑種」と判定することができます。

矢印の部分が総苞外片。花にくっついているので、見た目としては在来種と判定される。

しかし、見た目と遺伝情報が違っているとの研究結果もあるということで、これまでに安田女子高校ではSSコースや科学部の活動で、主に広島城のたんぽぽを対象に継続的に研究をしてきました。STEAMコースでは、学校近くの牛田総合公園のたんぽぽを対象に、理工系分野の特徴として高1でこの実験をおこなっています。


■タンポポ採集フィールドワーク

まず4月に、見た目が分かるように写真で記録を残しながら、たんぽぽを採集します。採集したタンポポは乾燥させた状態で保存します。牛他総合公園では、見た目が在来種のタンポポが多く採集されました。

ヘルプで来てくださった生物の先生から話を聞きながら、タンポポを採集しました
見た目での判定でマッピングをし、分布を可視化します

■遺伝子解析実験

10月~11月にかけて、以下の3つの実験をおこなって、遺伝子を解析しました。
(1)DNA抽出実験・・・タンポポの一部をすりつぶして、薬品などを加えてDNAを抽出します。
(2)DNA増幅実験・・・いわゆるPCRで、(1)で取り出したDNAに薬品を加え、サーマルサイクラーという温度を調節する器械にセットし、DNAを増幅します。
{本来ここで、制限酵素処理という、DNAを特定の並びの箇所で切断する処理がありますが、今年度は時間の関係で実験助手の方にやっていただきました。}
(3)電気泳動実験考察・・・制限酵素処理でできたDNA断片を電気泳動によって大きさに分けて、在来種・外来種・雑種の判定をおこないます。見た目との照合などをおこないました。

マイクロピペットという特殊な器具を使って、DNAや薬品などを扱います
集中してDNAと染色材を混ぜています
電気泳動実験の結果(一番右が基準となるマーカー)

■結果

遺伝子解析実験は、途中で薬品の種類や量をまちがえて失敗することもあるのですが、最後の電気泳動まで結果が分からないのが一番の特徴です。今回では、遺伝子解析をした約30のうち、7つが判定不能となりました。また、結果的に見た目と遺伝子情報がずれているタンポポが3~4つ見つかりました。

コロナ禍になって、PCRという言葉をよく聞くようになりましたが、実際にPCRという本物を体験してもらうという貴重な場として、来年度以降も継続していきたいと思っています。


■ 執筆者:安田女子高校STEAMコース主任(2年目)
教員歴23年(理科と情報、専門は物理)。
趣味は読書、好きなことは謎解き、好きな食べ物は粒あんです。
大学・大学院時代は、赤外線天文学を専攻、できたてほやほやのすばる望遠鏡を使わせてもらいながら褐色矮星について研究していました。
未知の人と関わるときは尻込みするタイプですが、STEAMと関わり始めた2年前から一念発起して、いろいろな人と関わろうと努力しています。

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