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【文字起こし】「もし次の疫病大流行が来たら?私たちの準備はまだ出来ていない。」TED:ビル・ゲイツ

はじめに

次世代に発酵を伝えるアグクルCEOの小泉泰英です。

Twitterで以下のツイートを見て、10分の投資をしました。

今本当に見て欲しいからこそ、要点だけでも流し読みできる記事として、動画を文字起こししました。

この動画はマイクロソフトの創業者で、世界一の慈善家としても知られているビルゲイツがTEDにて「もし次の疫病大流行が来たら?」ということについてプレゼンした2015年の動画です。

「ビルゲイツ天才」ということが言われていますが、たしかに天才です。

でも私たちがこの動画から学べることは「彼の才能」ではなく、エボラ蔓延のときにはできなかったウィルスとの戦いの準備を今こそ始めるということではないでしょうか。

彼は動画の最後に、

If we start now, we can be ready for the next epidemic.
(今から対策を始めれば、次の疫病には間に合います。)

と述べています。

コロナウィルスを機にでも、次の疫病流行が起こらないように間に合うと思います。

だからこそ、今からできることを個人ベースでも社会ベースでも考えて行動していく必要があるのではないでしょうか。

動画ですぐに見る方は以下より、文字で流し読みしてから動画を見る方などはその下からご覧ください。

TEDの動画はこちら

【記事として見たい方へ】動画の文字起こししました!

子供のころ、私たちが一番恐れていた災害といえば核戦争でした。

地下室にはこんなバレルがあり、その中には缶詰や水が貯えられていました。

核ミサイルが飛んできたら、私たちは地下へ降りて、うずくまり、バレルの食糧を食べるのです。

いま、最大の世界的危機はこんな姿はしておらず、代わりにそれはこのようなものでしょう。

もし1千万人以上の人々が 次の数十年で亡くなるような災害があるとすれば、それは戦争というよりは むしろ感染性の高いです。

ウイルスが原因の可能性が大いにあります。

ミサイルではなく、微生物なのです。

その理由の一つは、これまで 私たちは核の抑制に巨額の費用をつぎ込みましたが、疫病の抑制システムの創出についてはほとんど何もやって来ていない事です。

よって、私たちは次の疫病の蔓延への準備が出来ていないのです。

エボラの例を見てみましょう。

みなさんきっとエボラについて新聞で読まれたことでしょう。

とても厳しい危機です。

我々がポリオ撲滅の状況を追ったときのケース分析ツールを用いて、エボラの状況を追跡しました。

観察していて分かったことは、システムが不十分で状況に対処し切れていなかったということではなく、そもそもシステム自体すら存在しなかったということでした。

実際、非常に明らかな重要な欠落部分があります。

それは出動準備ができている疫学者のグループはいなかったことです。

彼らは病気が何であり、どのくらい広がっているかを見ていました。

症例レポートは紙ベースで送られてきました。

報告書が電子化される(オンラインになる)までにとても時間がかかり、しかもその内容は間違いだらけでした。

招集に応じ出動する医療従事者のチームもおらず、人々の準備や体制を整える手立てもありませんでした。

国境なき医師団は大変うまくボランティア達を指揮しましたが、それでも私たちはこれらの国々へ何千人もの支援者を送り込むのに無駄な時間を要したのです。

規模の大きな伝染病が起こると、何十万という支援スタッフが必要となります。

現地では、治療が適切に行われているかを確認する人員すら一人もおらず、診断方法を見る人も、どんなツールが使われるべきか判断する人もいませんでした。

スタッフがいれば、例えば生存者の血液を採取し、それから作った血しょうを人々に注射し 免疫を作ってみたりできたでしょう。

しかしそれは実現されませんでした。

不足しているものがたくさんあったのです。

これらは実にグローバルな規模の失敗です。

WHOには疫病をモニタリングする為の研究費はありますが、こうしたことを行うための資金はありません。

映画は現実とはかなり異なります。

この美男美女の疫学者達は常に出動準備万端です。

彼ら彼女らは現場に駆けつけ、救援に成功します。

しかしそれはハリウッドの空想世界です。

予め対策が準備できていないだけで、次の疫病がエボラよりも劇的に危機をもたらすかも知れません。

今年エボラが蔓延した段階を見てみましょう。

およそ1万人が亡くなり、ほぼ全員が西アフリカの3カ国の人々でした。

これ以上に、感染拡大しなかった理由が3つあります。

一つ目はヘルスワーカー達による英雄的な努力です。

エボラ患者を発見し、感染が広がるのを防ぎました。

2つめはこのウイルスの性質です。

エボラは空気感染をしません。

患者が感染源となるまで悪化した頃には通常症状が重過ぎてベッドから動けません。

3つ目に感染は都市部にあまり行き着かなかったことです。

これは単なる運です。

もしエボラが都市部に感染拡大していたら、症例数はもっとずっと増えていたでしょう。

次はそう運に恵まれないかもしれません。

ウイルスの中には感染していても症状が無く、そのまま飛行機に乗ったり 市場に行ったりするケースもあります。

ウイルスの感染源はエボラのような自然由来の疫病だったり、バイオテロでもあり得るのです。

シナリオが劇的に悪化する理由は色々とあるのです。

この空気感染によりウイルスが広がるモデルを見てみましょう。

1918年のスペイン風邪の例です。

このような事になりました。

猛烈な勢いで 世界中に瞬く間に蔓延し、3千万人以上の感染者が死亡しました。

これは危機的な問題で、深刻に捉えなければなりません。

しかし実は私たちには既に活用出来る科学や技術があり、優れた対策システムを作ることができるのです。

私たちは携帯電話で、公開された情報を得て、逆にこちらから情報を発信できます。

衛星画像により人々の居場所や移動する様子を知ることができます。

生物学における発展のお陰で、病原体に応じて薬やワクチンを作る時間が劇的に短縮できます。

私たちにはツールがありますが、これらは世界規模のヘルスシステムの中に組み込まれなければなりません

危機に備えた体制づくりが必要です。

その為のレッスンは繰り返しになりますが、戦争に備える事から学べると思います。

兵士たちは常時招集に備えています。

対策部隊の規模をスケールアップする為の人員や資源は潤沢にあります。

NATOには非常に迅速に 現地へ赴ける機動部隊がいます。

NATOは頻繁に確認のための機動演習を行っています。

「人員が十分に訓練されているか?」
「燃料や物流の状況が理解出来ているか?」
「無線周波数の設定は?」

そうして人員は常に完璧に出動可能な状態なのです。

こうしたことが疫病への対策にも必要です。

では主なキー・ピース(鍵になるもの)は何でしょう?

第一に、貧しい国々にしっかりとした病院・健康保証システムがあることで、母親が安全に出産できて、子どもたちが必要なワクチンを全て受けられるような仕組みです。

突然の発生の初期の兆候もそこで把握できます。

次に、医療従事者達の待機部隊が必要です。

医療に携わるよう訓練され、経験のある、いつでも招集に応じられる専門知識のある人々です。

そして、彼らを軍隊と連携させます。

軍隊の機動力を利用し、物流を確保し、感染地の隔離等を素早く行えるようにです。

戦争ではなく 細菌の拡大シミュレーションをして、対策の為に欠けている要素をあぶり出すのです。

前回アメリカで細菌シミュレーションが行われた際は2001年でしたが、良い結果ではありませんでした。

細菌との戦いは 今のところ人類の負けです。

最後に、ワクチンや診断の分野での研究開発がもっと必要です。

例えばアデノウイルス系ワクチンのように、非常に速く効く目覚ましい突破口もあります。

これに必要な正確な予算はわかりませんが、予期され得る被害に比べれば大したことのない額だと確信しています。

世界銀行は世界規模でのインフルエンザ大流行が起これば、世界の総資産が360兆円以上の打撃を受けると推定しています。

加えて、何百万人という死者が見込まれます。

こうした投資は単に疫病への準備が出来るという事以上の大きな利益を生みます。

主要なヘルスケアである研究開発は、グローバルな健康の公平性を低下させ、世界をより安全かつ安全なものにするでしょう。

ですから、私はこれは絶対に優先すべき課題だと考えます。

パニックに陥る必要はありません。

スパゲッティの缶詰を買いだめしたり、地下室へ逃げ込む必要はありません。

でも今すぐに 取り組み始めなければ、時間は味方をしてはくれません。

実際、エボラの蔓延から得る何か一つ良い教訓があるとすれば、私たちが準備を始める為の警鐘となったということでしょう。

今始めれば 次の疫病への対策は間に合います。

ありがとうございました。

ここまで辿り着いてくださったあなたへ。人生で誰と出会い、どんな縁があるかはわかりません。でもそれを楽しむことができる人生こそが、発酵ある毎日だと私は思っています。サポートはみなさんとコラボするために使いたいので、意思表明としてお気持ちいただければ嬉しい限りです。