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21.心に燻る英国ハードロックの狼煙 = Tanith

Tanithは2016年結成、2019年にファーストアルバムを出したイギリスのバンドで、耳を疑うほどビンテージなサウンドを奏でています。ギターソロになるとツインリードとベースドラムだけになるなど、現代的なコンプレッサーで音圧を高める手法とは真逆の隙間の多いライブ一発録りのような生々しい質感、リバーブの少ない70年代かそれ以前のようなギターサウンド、そしてメロディーの洪水。聞いているうちに、何か失われた宝石を再び見つけ出したような、それでいて今までにない何かを見つけたような不思議な感覚が浮かびます。

中心人物はギターのRuss Tippins。彼は1970年代から活躍するギタリストで、New Wave Of British Heavy Metal(NWOBHM)の渦中にいたSATANのギタリストでもあります。このTanithはパートナーの女性ベーシストと彼のツインボーカルをフューチャーし、荒々しい作りのようで繊細に作りこまれたハードロックを鳴らしています。

英米ではビンテージなサウンドを標榜する若手バンドも増えてきていますが、70年代から活動を続け、まだまだ創作意欲が衰えないバンドも多数存在します。英国ハードロック/ヘヴィメタル界の王道を行くバンドを紹介しましょう。

まずはユーライア・ヒープ(URIAH HEEP)。1969年デビューで、ツェッペリンやパープルと同世代のハードロック第一世代ともいえるバンドですがまだまだ現役です。メンバーこそだいぶ入れ替わり、現在残っているオリジナルメンバーはギタリストのミック・ボックスだけとなってしまいましたが、現代性を取り入れつつヒープらしさを保ったハードロックの王道を歩んでいます。こちらは最新作『桃源郷(2018 Living the Dream)』からのリードトラック「Graced By Heaven」です。最初に聞いたときは大ベテランにしてはあまりにフレッシュな音に驚きました。

続いてはナザレス(Nazareth)です。こちらも1968年デビューで50年以上の活動歴。残っているオリジナルメンバーはベースのピート・アグニューだけですが、G'N'Rのアクセル・ローズが影響を受けたバンドとしても知られています。こちらは2018年のアルバム『Tattooed On My Brain』よりタイトルトラック。ひねりの効いたメロディーと過度にレイドバックしていないロックなサウンドです。

Diamond Headはヒープやナザレスよりは新しいバンドですが、70年代から活動し1980年デビュー。NWOBHMの一員として活躍し、METALLICAやMEGADETHに影響を与えました。こちらもメンバーチェンジがありオリジナルメンバーはギターのブライアン・タトラーだけですが、メンバーチェンジを経て若返り、現役感溢れる重厚なメタルサウンドとベテランの作曲能力で硬派な世界観を描き切っています。

最後はMotorheadです。1975年結成以来40年の間、ボーカル兼ベースのレミー・キルミスターを中心に活動を続けました。残念ながら、2015年にレミーの死によってバンドの歴史は幕を閉じましたが、ブレることのない音楽性とスタイル、そしてレミーのキャラクターは多くのバンドに影響を与えました。Motorheadについてはこちらの記事で取り上げています。


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