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鳥栖ー神戸 観戦記 何が悪かったのか

因縁の神戸戦をスタジアム観戦しました。鳥栖にとっては0ー2の敗戦。飯野七聖の移籍先でもあり、かなり背負っていたものもありましたので、サポーターも意気消沈だと思います。私もどっと疲れました。敗因はいくつか可能性があると思いますが、最も大きいものは主力の飯野七聖が移籍し、小野裕二はおそらく前節の怪我で、それからコロナ感染疑いでトップチームから5人が出場出来なくなり、合計7人も主力から削られたことによる異常なチーム構成だったことだと思います。かなり前からその構成で準備していたのならともかく、急に5人もコロナで欠くと言うのは作戦も連携もはぼ白紙。個人的には今日の負けは気にしてはいけない内容だと思います。

ただその点を差し引いても気になる点がいくつかありました。まず神戸ですが、満身創痍の鳥栖に対しても前半はすこぶる悪かったんですね。やっぱりこれは最下位だなというチームの動きでした。ところが後半から急変。前半まるで攻めてこなかったチームが激攻めへと変わっていきました。これは作戦だったのか、それともあまりに攻めあぐねている鳥栖に対して要領を得たのでしょうか。中野嘉大を代えたあたりから、鳥栖はガタガタと音を立てて陣形が崩れていくようなイメージを持ちました。負けた試合に採点というのも萎える話ですが、ここから先は一人一人見ていく方がわかりやすいので、いつもの採点やります。ちなみにマンオブザマッチは2得点の武藤ですね。ポジショニングや飛び出しが最高で、労なく決めたように見えました。あれではGKパギもノーチャンスです。

藤田はシャドーを務めたりアンカーを務めたり可変的に動いた

個人的採点

GK パギ 5.5

失点は仕方ないとして、守りは安定はしていた。失点する前はビッグセーブも何度かあった。問題はフィード。本来パギの長所のはずが、今日は風もあったのか、前線になかなか通らなかった。守備陣との連携も前半からイマイチ。神戸も調子が悪かったので前半その連携の隙を見逃していたが、後半からその点を突かれるようになってしまった。試合後、田代や監督にかなり熱く何かを主張していたことが気になった。パギから見えた何かがあったのだろうが、切り替えも大事である。初めに書いたように直接の原因がコロナによる不慮のアクシデントであることは思い出して欲しい。深刻な負けではないのだから。

DF 田代 5.5

前半はスタジアムに吹く風が滅法強く、ビルドアップがうまくいかなかった。前半の途中から風は落ち着き、田代自身は悪くない内容だったが、島川、ジエゴ、パギとの意思疎通が上手くいかない部分があり、ボールがお見合いになってしまうようなシーンが立ち上がりから何度も見られた。原田とソッコを直前で欠いたことから、イメージを共有するのが難しかったというのが真相ではないか。試合終了後にはパギと真剣に振り返りを行っていた。

DF 島川 4.5

守備陣の連携が上手く取れていなかったというのは、要するに島川の所のことで、失点の原因は直接的には今節は島川ということになってしまうかもしれない。そもそも前節東京戦の時も微妙なパフォーマンスではあった。試合勘というより、連携不足の観がある。七聖が移籍し原田がウイングハーフになるのなら出番が増えるはず。確認をしておきたい。今の鳥栖は堅守から程遠くなっている。

DF ジエゴ 5

前半にはクロスバーにあたる惜しいヘッドシュートがあった。あれが決まっていれば流れは逆だった。ただそれ以外は岩崎との攻めの連携も守りもイマイチ。後半にはパギとお見合いになってあわやというシーンもあった。開幕から大きくパフォーマンスが落ちることはなかった選手だけに、ジエゴの低調さがそのままチームの勢いにも出たようにも見える。

MF 岩崎 5.5

運動量は変わらず守備にも攻めにも大きく貢献。ただ前節ほどにはボールに触れず好機を演出できなかった。ゴール前でもややアイデアに欠けた印象はある。ポテンシャルはあるので、苦しい時に一人で局面を打開できる選手になって欲しい。

MF 中野嘉 5

この選手について書きたいために負け試合でも詳述する気になった。結論から言うと彼自身のパフォーマンスは良い点と悪い点の両方があり、悪い点が見た目にわかりやすかったので1人出し抜けに交代になったと思う。ただ「良い点」は鳥栖の戦術の要であり、中野を代えたのでボールをキープできなくなったと推察します。

悪い点は「球離れが遅い」。これは昨季からの課題で、ボールをもらった後に福田などが散々いい飛び出しをしていて神戸の選手はその縦に動く鳥栖の選手の動きについていけず、福田や島川をフリーにしてるのに、中野がボールを見ていて味方を見ていない点。わかりやすくスペースの空いた所にドリブルしたり、パスをしたりして攻めに繋がってない。それでは敵の陣形は崩れないのです。味方はすぐにリターンやワンツーパスをもらいたいし、位置取りにも成功しているのに、それが出ない。もしこれが七聖だったら、小野だったら、原田だったら。というシーンが何度もありました。実際、私も今日のメンバー表を見て「ここから展開の早いパスが出せるのは堀米か菊池かなぁ」と思いましたし、後半川井監督もそのように交代策を指示し、堀米、菊池が右サイドを次々担いました。

しかし、そうしてみると中野の良さがわかったのです。ロアッソ戦の時からそうでしたが、彼は今日はパスがダメでしたが、貰い方は抜群に良かった。ライン際にいて空間をうまく使い、そんな難しいポジショニングでも抜群のトラップでボールを失わず、球離れは悪いが「溜め」を作ることには成功しており、結果鳥栖のターンが長く続いた。神戸戦の右サイドは代表にも選ばれた酒井高徳とのマッチアップとなっており、彼はこの日も抜群のカバーリングを発揮していたので、抜くのはもちろんボールを収めるのも一苦労なのです。その点、中野は良くやっていた。しかし中野の代わりに急ごしらえの堀米を投入するとボールの受けに苦しんでイエローカードをもらい、では菊池に替えるとボールをもらうのも難しくなり、結果鳥栖がボールを支配する時間が極端に短くなってしまいました。

この日、右サイドに予定していたのは原田だったと思います。あるいは原田が右CBで中野と連携するプランもあったでしょう。しかし直前で原田を欠いたことで、こうした連携不足が出てしまったものと推測します。右を依存していた七聖がいなくなったので、右サイドの構築は急務。その後継者として原田と中野は適任だと思いますが、前節原田も中野と同じくリターンパスには苦しんでいました。ここはよく連携を確認したい所です。

MF 小泉 6.5

この選手のパフォーマンスだけは低調にならない。昨日も危ないシーンでのカットは殆ど小泉がプレイしており、神戸は小泉1人に守られてるような不思議な気持ちになったはず。怒涛のタックルもプレイ自体は非常にクリーンなので相手も自分も大きな怪我にはならずカードももらわない。間違いなく日本を代表するボランチと言って差し支えないと思う。昨日は前半、神戸の運動量が少ないとみるや否や、攻めにも積極的に絡んだ。その献身性は観戦していて思わず胸にくるものがある。

MF 福田 6

こちらも相変わらずボールの扱いが上手く、守りから攻めに切り替える所で強みを発揮。両サイドへパスを供給したが、FWの2人へのパス経路はなかなか見つからなかった。自身もコメントの通り、後半は鳥栖がボールを持てなくなり、守備に追われることが多くなってしまった。

MF  藤田 5

小泉、福田との入れ替わりでアンカーをこなしたりシャドーをこなしたり可変的に動いた。ただ得意のミドルもプレースキックも飛び出さず、見せ場はほぼ無いままスタミナだけを消耗していった。

FW 風智 5.5

惜しいシュートシーンもあったが、全体にシュートは精度を欠いた。もらうイメージが微妙にずれていて、判断に迷いがあるプレイが多かった。それでも今日の垣田の出来や、ベンチのメンバーを考えると長くピッチにいないといけない選手だった。スタミナは夏場の課題だ。

FW  垣田 5

よく走っていたがオフザボールの動きがハマらず、味方からボールをもらえなかった。高さを活かして空中戦からポストプレイを試みるも相手にファウルをしてしまったりと攻撃の起点になれなかった。しかし垣田ひとりが低調だったと言うことではなく、やはり「七聖抜け」によってチーム全体の戦術構築のイメージがぼんやりしていたことが原因と思う。キャンプのような濃密な時間が再び今の鳥栖には必要ではないだろうか。

交代選手

MF  堀米 5
中野嘉に代わって右サイドを担当したが、ハマらず、さらに交代してきた菊池に右を譲り、得意のシャドーの位置に藤田の代わりに入る。運動量はすさまじくハードワークを見せたが、ボールにあまり触れなかった。

MF 菊池 5
ルヴァン杯で担当したことのある右サイドを久しぶりに任されるも、相手チームの名手、酒井との勝負に勝てなかった印象。ここ最近はあまり思うようなプレイが出来ておらず、伸び悩みを感じる。

MF 荒木 4.5
時間帯も苦しく、試合にあまり絡めていなかった。

MF 森谷 5
2失点目、クロスをあげた佐々木にはもっと詰めてほしかった。藤田の代わりに出たが、得意の展開にはならなかった。防戦時に出す選手ではない印象。

川井健太監督 5

相手にも自軍にも混乱があり、理論的な戦術を構築するのは難しかった。そうなると個の実力差に持ち込まれてしまう。ただ、今日の試合に限って言えば我慢も必要だったと思う。選手はバテていたが、それでも今日は交代に耐える選手が堀米ぐらいしか居なかった。中野嘉、風智を代えたことは結果的に死期を早めてしまった。後半ラスト15分の交代は半ば勝利の方程式として定着してはいるのだが、チーム状況と戦況を見て「ステイ」を選択する柔軟さも欲しかった。いずれにしても右サイドの構築は急務である。昨季も松岡抜けからチームはズルズルと後退したが、そうならないために連携を考えたい。右の候補は原田と中野で間違いない。右からどう崩すのか、チーム内でもう一度共有したい。荒木にこだわる所も再考を促したい。少なくとも彼は右サイドには現段階では相応しくないだろう。藤原が登録を外れた今、FWが適任ではないだろうか。

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