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vs柏レイソル観戦記 イメージ共有出来てない

前日までに不利な要素が続出した。前半の主力中の主力だった右WB飯野七聖と、その後継者候補として調整していた中野嘉大が移籍。また新型コロナウイルスに感染して試合に出られない選手が複数名発生し、さらには主力3選手が未熟な不祥事を起こすなど、クラブは混乱とも言える状況に見舞われていた。ただ、相手の柏レイソルは中3日の日程をこなしてアウェイに来ているので、休養が取れていた鳥栖にとっては、それらを言い訳にすることはできない状況でもあった。

結論から言うと、過去5敗中、失点こそ最少だが内容は最も悪かった。昨日のサガン鳥栖は完成度が低く、あらゆる面でレイソルに実力で劣った。コロナで主力を欠いたというより、不穏当な空気感の中で指揮官も思考が整理できてないようだった。

現状は、今季のサガン鳥栖に訪れた最大のピンチと思う。

失点シーンについて

採点する前に失点シーンはオフサイドではないかという議論もあったので、ここをしっかり詰めておきたい。

※時刻は実際の試合の時刻とは異なる。(スロー振り返りの時刻)

この画像で見ると確かに武藤の位置はオフサイドポジションにあるように見える。しかし同じ時刻の別角度、もっと俯瞰した視点でこのシーンを見ると

実際の時刻

森谷と原田が戻っていて、武藤がオンサイドなのは明らか。オフサイドラインのコントロールが出来ていなかったとも取れるし、その可能性を考えて武藤の守備を外してはいけなかった。逆に柏からすると極上のパスが供給され、決めたFW武藤はその他のシーンでも、この日誰にも止められない無双ぶり。1失点で済んだのが不思議なくらいだった。点にするなら7、MOMだろう。

個人的採点

GK 朴 6

失点シーンの評価が難しい。あの位置にいれば朴には当然ノーチャンスだが、前に出過ぎていた気もする。ただそれは、柏レイソル川口尚樹のスルーパスが予想以上にスルーしてきたからなので、それは相手を褒めるべきだろう。その他のシーンではビッグセーブもあり、フィードも正確だった。試合後には思いの丈を仲間に発露するシーンも。

DF 田代 5

エアバトルには勝てていた。ただ失点シーンは武藤の位置をオフサイドポジションと捉えていたのか、マークを外してしまっていた。最近鳥栖で何かと反省点になるセルフジャッジによる失点。遠く離れた原田との意思疎通が難しかったことはあるだろうが、最悪を想定して守る集中力が欲しい。あの位置で抜かれてしまうとパギのポジショニングも難しくなる。

DF 原田 5.5

失点シーンはオフサイドラインを考えて止まるべきだったのかは、難しいところだと思う。柏レイソル山田選手の動きが巧妙で、もし止まれば内側に抜け出してフリーになれる位置取りをしていたので外側にいた原田が山田を押さえるにはそれより前に出て迎え撃つしかなかった。最善手が何だったのかはチーム内で意思疎通を図っていくしかないが、守りの際のフォーメーションが詰め切れてなかったようにも思われ、それは選手の責任というより試合前の準備の所だと個人的には思います。

原田個人に話を戻すと、前半は神戸に移籍した飯野七聖、湘南に移籍した中野嘉大の代わりに右WBとして登場。何度か試された位置ではあるが、同じく右のSBとして起用された中野伸との連携がハマっておらず、右サイドの攻めが機能してなかった。原田も中野も個々としては動きにキレがあったので、ここはどうしてもコロナと選手の移籍抜けで対応が追いついてないことが浮き彫りになっている。補強がいずれあるのだとしたら、なおさら今は難しい時期を過ごすことになるのだろうが、移籍ウインドーが閉まるまで同じ理由で勝ち点を失い続けるのだろうか。後半から定位置の右SBに戻った。こちらの方が動きやすそうには見えたが、それはそれで場当たり的な指示だと思う。原田もプレイしながら釈然としないものを感じていたかもしれない。けして表にそれを出す選手ではないが。

DF ジエゴ 6

前半は定位置の左SB、後半は岩崎に代わりの左WBとしてピッチを駆けた。苦しいチームの中でも勝機を見出そうと頑張る姿が印象的だった。ただ、前線に乾坤一擲のボールを送ってもFWの選手が乱調しており、報われなかった。

DF 中野 5.5

前半は右SB、後半は定位置の左SBとして自陣を守った。試合後のコメントでは「左右はあまり関係ない」と振り返っているが、正直言って前半はプレイに迷いが見られた。それでも得意の攻撃では自陣からゴール前まで駆け上がるドリブルを見せ、岩崎に絶妙なパスを送った。左からSBに戻ってからは流石に慣れている様子ではあったものの、1対1で抜かれるなど守備の甘さは相変わらず。

MF 小泉 6

チームがどんな状態にあっても落ちないプレイの質。思うに昨季から大きくメンバーの変わった鳥栖は、スタートアップ企業のようないい意味での新鮮な高揚感が、チーム内の空気として良く作用し、それが前半戦の好調を支えていたが、今のようにチーム内の空気が悪くなった時にガタガタと崩れるメンタルの弱さが目立つようになってきている。それが相手チームも読みにくくもなっており、今節も初めレイソルはかなり鳥栖をリスペクトして警戒して慎重な試合の入りになっていた。しかし先制し、流れを掴むと一気にかさにかかって攻めてくるように。その点、小泉のプレイはどんな状況でも変わらない。苦しい時、危ない位置、辛い状況にこそ彼が顔を出す。今節も変わらぬボール奪取能力だった。この小泉のプロとしての姿勢が、今チームで一番必要だと思う。ただ、小泉がボールを奪う時、いつもなら必ずそれを福田が前に繋いで鳥栖はペースを握っていくのだが、今日は相棒がいなかった。

MF 森谷 4.5

ミッションが良くわからないプレイだった。活躍の場がほぼなし。オフサイドラインコントロールを最初に崩してしまったので、そういう意味では失点の遠因にもなってしまった。

MF 堀米 5

元気はあるのだが、最近どうも精彩を欠くプレイが続く。飯野七聖の抜けを最も大きく受けた選手かもしれない。鳥栖は両サイドが快速で駆け上がって中をフリーにし、堀米がリターンを受け取ってクロスを上げる、時にはシュートも打つという攻めのパターンがあるが、右が固まってないから中の堀米まで動きに迷いが出ているように見える。鳥栖の戦術理解度では抜群の選手なので、交代は正直惜しかった。

MF 岩崎 5.5

試合前に余計な要素で騒がれた選手ではあるが、プレイは奮起していたように見えた。ただ、前半15分のシーンなどは岩崎が昨季からずっと課題にしている点がわかりやすく出てしまった。少し詳述すると、

前半15分。自陣から抜け上がってきた中野伸が左にパス

この写真のシーンはDF中野伸が自陣から駆け上がって来て風智にパス。このパスを天才的な発想で風智がスルーし、岩崎が完全にフリーでボールを持ち、前を向けているのだが、

※時刻は実際のプレイ時刻とは異なる

わざわざ相手守備に近寄ってシュートを阻まれている。東京戦の時はこの位置でミドルを打てていたはず。これはやはり敢えて感覚的な表現をするなら、試合に「ノレてない」。思うに見た目や普段の言動と違って責任感の強い選手である。別の言い方をすると臆病というか自信がないのだろう。だから好機で振り抜くという絶対的な責任を負えないでいる。これが好調の時はそれが出来ているからもう精神的な問題としか言いようがない。ただ、監督の方も岩崎のこれをわかっていて、今節は出したような所もあるのではないかと思っていた。しかし結局交代させられるので、結果としてはよくわからない采配である。後半から右WBにコンバートされた。それも悪くはないのだが…

MF 風智 5.5

シャドーとして90分を走り続けた。前半は垣田に何本かいいボールを供給したが決められず。随所にらしさも出ていたのだが、鋭いミドルも持っているので苦しい時は単発でも中距離から飛び道具を打ってほしい。同じポジションの先輩の小野と比べると物足りなさがある。とは言え、ぎこちない連携の中で宮代もそうだが、自陣まで下がってボールをもらいに行くシーンもあった。あれをしていると夏場はスタミナも奪われる。やはり試合前の準備がどうだったのかに関心がいってしまう。

FW 垣田 4

過去最低の出来。何度も決定機があり、少し触るだけで得点できたのだが、昨夜はそれすら出来なかった。ポストプレイは初心を思い出して広島戦のように「頑張る垣田」だったが、ゴールシーンの緊張に耐えられないならピッチにいるべきではない。わからないのは、早くから乱調していたこの垣田をなぜ60分近く起用したかである。「自力で不祥事を払拭せよ」というメッセージだったのか、しかしそれにしては交代もさせたわけなので、結果としては失敗だったように思う。

交代選手

FW 宮代 5
前半から出場していたら垣田が受けたチャンスを決められたようにも思えるが、交代してからの鳥栖は流れを完全に失っており、もはやボールに多くは触れなかった。なかなかボールが供給されなかったのでボランチの位置まで降りて来てボールをもらうシーンも見られた。しかし宮代本人もけして好調ではなく、トラップミスも見られ、厳しくいうと、やはりFWの選手ならアタッキングサード以内のオフザボールの動きでボールをもらうスペースを作りたい。垣田のように体格で勝負する選手ではないため、宮代の場合その点がポイントとなる。

MF 菊池 5
最近の低迷から抜け出せていない。上手い選手だが、後半の流れを変えたい場面で、果たして活躍できる選手かどうか。菊池は立ち上がりから流れを作るのには向いているので、起用するならスタメンだと思う。逆転しないといけない状況で強度の高いプレイを期待するには、まだ場数が足りない気がする。堀米、森谷、藤田、福田がいないピッチでプレースキックを誰が蹴るかという場面で、なかなか精度の高いフリーキックやコーナーキックを見せた。練習から連携の練度を高めたい。

MF 西川 4.5
課題のハードワークは出来ていたが、サッカーIQの高いプレイを披露することは出来なかった。どんなミッションが与えられていたのだろうか。コロナから回復したチーム内で序列上位を勝ち取るにはもう少し何か光るものが必要ということを再確認してしまった。

MF 相良 4.5
昨日は得意のドリブルも無謀なチャレンジになっていた。左WBとして岩崎とポジションを争うにはまだ物足りない。

MF 楢原 ー
後半ラスト付近に出たので採点は不可能だが、初のJ1の舞台ではボールタッチやパスも軽快に、堂々としたプレイだった。中野伸哉は昨年前半、高校在学時にスタメンを安定させていたので、トップチームのレギュラー争いにぜひ加わってほしい。
 

ユースで群を抜く活躍を見せる楢原

監督 4.5

様々なチーム事情が入り込み、体系的なチーム構築が難しかったことは理解できる。試合前の準備が不十分だった点はその意味で割り切るしかないとしても、もう少し全体方針に一貫性が欲しいことと、交代の使い方については逆に柔軟性も欲しい。

岩崎と垣田のスタメン起用は色々な意見があるものの、監督は使うと決めた。これは監督の頭の中を想像するに、2つの可能性が考えられる。

①プレイ内容で責任を取らせる
②試合前のことは試合とは関係なく合理的に判断

①なら、選手が不調でも使い続けるべきだった。②なら垣田は早い段階で交代させるべき、あるいはスタメンではないはずだ。どちらの選択だったとしても疑問の残る采配になってしまった。堀米と森谷の両方をピッチから出してしまったのも不可解な采配だ。鳥栖はこれまでセットプレイで勝ち点を奪って来たチームのはずだ。森谷、藤田、堀米、小野の誰かはピッチにいないといけないのに、その可能性すら放棄してしまうのはどのような狙いだったのだろうか。相良や西川も昨日の試合の流れだと必要な交代には思えなかった。また、試合中のバレーボールのローテーションのようなポジションチェンジも大胆に過ぎると思う。あれをすると選手がまず采配に疑問を持ってしまう。昨日は覚悟を決めて、練度の低いチームでも最初の方針の可能性を見届けるべきだったのではないだろうか。後半は全く良いところがなく、相手も1点を守る体制に入っているにも関わらずポゼッションも出来ないという事態に陥っていた。

交代についても最近は少し疑問が湧く。後半ラスト15分で交代4枚、というのが固定になっているが、ベンチの実力がチームの事情で毎試合バラツキがあるので、そのように固定していいかどうかは考えものである。基本的にはスタメンがベストチョイスとなっているので、スタミナ的に厳しい面があっても、交代は難しい状況もあるだろう。むしろスタミナを考えて交代が折込み済みならスタメンからその計算をすべきで、菊池などは途中交代よりスタメンがベストになるのではないか。前半戦での成功体験に少し囚われている所もあるような気がしている。なかなかベストなメンバーが揃わないため、采配が難しいのは事実だが、現実に即した采配をこれまでやってきたはずなので、川井監督なら過去に頼らない冷静な判断ができるはずだ。

試合前不祥事について

今回、試合の前日に垣田、岩崎、荒木の3名が会食を行ったということで懲罰の対象になった旨、リリースが出ている。この会食の内容が福岡市内の歓楽街での接客を伴う店での行動だったという噂もネット上で飛び交い、サポーターはほぼ不審感を一様に投稿し、ある選手はSNSのコメント欄も閉鎖するほど、炎上した。

私は試合の内容に集中したいタイプなので、この一連の不祥事について、3名がベンチに入れるかどうかの興味を除いては、特に感想も無くスタジアムを訪れたのだが、スタジアム内も妙な空気感で、それはチーム内も同様に見えた。

これまで川井監督を見てきて感想では、非常に冷静な人物という印象なので垣田と岩崎の起用は、ピッチ外のことと戦力計算を分けて考えた、というのが真相に近いかもしれない。ただ、柏に勝てなかったからの結果論ではあるのだが、こうまで不穏当な空気が残るということは、やはり2選手の起用は正解ではなかったようにも思う。

ここはひとつ無期限の出場停止ということにした方が火消しには有効だったのではないだろうか。無期限と言いつつ、3試合ほど出なければ、サポーターやチーム内からも必要性についての議論が再び起きただろう。

罰を与えることが必ずしも人を貶めるとは限らない。それが人を救うこともあるのだ。人がやるスポーツを人が観るという環境においては、時にそのことが合理的に作用する、とさえ言えるのかもしれない。これは気楽に観戦に行った自分にとっても大きな学びだった。

今回の罪は、最もやってはいけない時期に最もやってはいけないことをした。コロナで鳥栖に感染者が出て中止になったことは、鳥栖が相手チームに迷惑をかけたことでもあり、この不祥事は相手チームへの敬意にも欠けている。そう判断が出来なかったのは未熟と言わざるを得ないし、クラブの監督責任も問われていた。

残りの試合とチーム運営、および周辺環境をもっと冷静に俯瞰してみれば、昨夜のメンバー構成は慎重な判断が必要だったかもしれない。とは言え、いつまでも引きずることができないので、14日の天皇杯・甲府戦は重要な調整試合となるだろう。

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