朝日新聞

「コドモアツメルナ」駄菓子店を脅す現代の「規範意識」

〈コドモアツメルナ オミセシメロ マスクノムダ〉

 4月末の昼、千葉県八千代市の竹林にたたずむ駄菓子店「まぼろし堂」の門に、貼り紙が残されていた。定規で書いたような角張った文字。店主の村山保子さん(74)はその赤い字に恐怖をおぼえ、血の気がひいた。

 「怖い、悲しい、悔しい、怒り、苦しさ……。いろんな気持ちがない交ぜになった」

 新型コロナウイルスの感染が広がり、誰もが外出自粛を求められ、ホテルや飲食店は休業要請に苦しんでいた。密を避ける、集団で集まらない――。コロナ禍の「規範意識」は、小さな店も攻撃対象に映った。

 あまりの恐怖に、この日から保子さんは近くに住む次男と行動を共にした。車で2、3分の家と店との往復は、必ず次男の車と2台で連なった。敷地の門を開けるときには、貼り紙の犯人が待ち構えているのではないか、店が焼けているのではないかとおびえた。


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