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自然のなかで人が生み出す、奇跡みたいな美しさ

「きっとわたしたちは永遠に、まだ見ぬ景色、ってものを追い続けるんじゃないかな」。

6年前の夏、北アルプス槍ヶ岳に登ったときのこと。上りの槍沢ルートで何度も皆で弱音を言い合っていたのに、同じルートを下るのではなくあえてややハードな東鎌尾根ルートを選んだ。つらい、もう歩きたくないと言いながらも、次はどこの山に登ろうかと相談していた。大変だと思っていることを熱心に繰り返そうとする自分たちがふとおもしろくなり、なぜなのでしょうね、といっしょに歩いた登山ガイドの渡辺佐智さんに話しかけた。そこで返ってきたのがこの言葉だった。

わたしは圧倒された。「まだ見ぬ景色」に出会いたいから。山のことも仕事のこともプライベートのことも、今もがいているすべてがこの言葉で説明できるのではないか。そう思うと、気持ちが晴れ渡るような爽快感があった。

このときの佐智さんの表情には、考え続け自分なりの答えをもった人特有の、突き抜けた美しさがあり、心惹きつけられた。背後にそびえる山並み、青い空の色も鮮明に覚えている。

▲右は渡辺佐智さん、左はモデル仲川希良ちゃん

それからわたしは、自分にとっての"はじめて"に向き合って孤独を感じるとき、この情景を思い出している。そうすることで、自分の行為を俯瞰して見ることができ、目の前のことに近視眼的にならずに、今から自分は人生を楽しもうとしているのだと心に余裕をもてるようになった。

自分の背中をそっと後押ししてくれるこの言葉を、いつか誰かに届けたいとずっと思ってきたから、ランドネが10周年を迎えるにあたって特集タイトルにすることができてとてもうれしい。

自然のなかで過ごすとき、人はとても魅力的だ。奇跡みたいに美しい表情をしたり、真理をつく言葉を生み出したりする。

表紙のモデルは、創刊時からもう数え切れないほどともに山に登り、そんな瞬間を何度も見せてくれた仲川希良ちゃんにお願いした。撮影終わりに希良ちゃんが流した涙からは、彼女が自然とともに過ごすなかで積み重ねてきた時間がキラキラと溢れ出しているように見えた。

ランドネを応援してくださって、いつもありがとうございます。自然×人が生み出す美しさを、わたし自身勇気をもらいながら、これからも届けていきたいと思っています。

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