働き方の意識改革

「働き方改革」から「働き方の意識改革」へ

街角の新入社員の姿のぎこちなさが、心なしか薄れてきたように感じる。すでに4月も終わりに近づいた。働き方改革関連法の施行からも1ヶ月ということになる。

改めて「働き方」に関する一連の動きをつぶさにみて見ると、ちょっとした違和感を覚える。

例えば、働き方改革は残業抑制、副業は(働き方改革で減った残業代を埋め合わせるための)小銭稼ぎ、のような捉えられ方になっていないだろうか。

また、早期退職は対象が50歳以上から45歳以上へと拡大し、その理由として「組織の若返り」が言われるのだが、実際に若返っているのだろうか(例えば経営者や一定以上のポジションの役職者の平均年齢は下がったのか)。

そんなことを考えていた時に、アラサーの人のこんなつぶやきがあった。

若い人でも、思いのほかこれまでの働き方の枠組みに意識が縛られているのかもしれない。この記事でも、それを感じた部分があった。

働き方を含めた人生の組み立て方の意識が変わらないと、降り注ぐキーワードに浮き足立ってしまい、世の中の動きに振り回されるだけになってしまうように思う。一方で、これらのキーワードを有機的体系的に理解して組み立てれば、意識を変え、軌道修正が効く人たちも多いのではないか。

先日、早期退職の応募を検討しているという同年代の友人に、こんな図を書いて話をした。これから、こういう考え方で過ごしてみたらどうか、その中に早期退職を位置づけてみたらどうか、と。

区切りの年齢は、プラスマイナス5歳程度の幅があって構わないのだけれど、仕事を「前半戦」と「後半戦」に分け、それぞれ30年前後の期間があると考えて組み立てる。この間に、大学に通うなどの「学び直し」があっても素晴らしい。

前半戦と後半戦は、期間はほぼ同じだが、「戦い方」は全く異なる。前半戦は、これまでの働き方とあまり変わらないが、50歳で一区切りという意識だ。前半戦で、基礎となる軸足のスキルを本業で身につけ、それが固まってきたら、副業でもう一つの軸足となるような別のスキルを身につける。この時の副業は、お金を稼ぐことがメインの目的ではない。後半戦で役に立つスキルを準備しておく、という意識である。

これらのスキルをベースに、後半戦は、いくつかの仕事を組み合わせた「複業」で食べていく。中には、時代の変化でスキルとしての需要がなくなるものもあったり、後半戦の途中での学び直しなどで新たにつけ加わるスキルもあるとよく、仕事をポートフォリオ化して行けば、時代の変化に収入が左右されにくくなる。「好きなこと」「やりたいこと」と、「仕事になる」「稼げる」ことの交点を探しながらの後半戦は、不安定かもしれないが前半戦とは違った仕事の楽しみが生まれるように思う。前半戦の頃から貯蓄や資産運用をしていれば、後半戦では前半戦ほどの収入を得なくてもよくなるかもしれず、そうであるなら不安定さのデメリットを自由というメリットで帳消しにすることも可能かもしれない。

後半戦への移行に、早期退職制度を活用することはとても良いきっかけになると思う。将来はわからないが、今なら退職金の積み増しという、後半戦への「支度金」も付いてくる。

もちろん、前半戦の会社でトップを狙える人はそのまま後半戦に続いていく、ということでいい。しかし、そういう人は、サラリーマンの数%程度、ほんの一握りに過ぎない。多くの人は、前半戦とは違った後半戦を生きていく方が幸せであるような気がするのだ。

藤原和博さんが提唱する、100万人に1人になる戦略が本格的に活きてくるのも、多くの人にとって後半戦の方だろう。

人生100年時代に、昭和の名残である定年制をずるずると引きずって、65歳やさらには70歳まで同じ会社で働くことに、やりがいや、自分の幸せ・自己実現が見いだせるか。一部の人はそれができるかもしれないが、多くの人にとってはそうではないように感じる。役職定年以降は「お荷物」的な扱いで余生を送ることを余儀なくされ、しかも60歳以降は給与も激減することが多いからだ。

経団連会長が「終身雇用はもう守れない」と発言したが、ここに書いたような実態であるなら、働く側からしても終身雇用に積極的な意義は見出しにくい。

むしろ、新卒で入った会社は「前半戦」で卒業し、「後半戦」をどのように組み立てるか、と考える方が良いのではないか。年齢を重ねても目が輝いている人が多い社会が、高齢化の進む日本の目指す姿だと私は思っているし、そうであってこそ、後から高齢化を追いかけてくる他の国々に対してモデルを示すことになる。

私自身も、「後半戦」に入って数年に過ぎないから、これから考え方が変わるかもしれないが、今の時点ではこれまで書いてきた通りの考えだ。

いま、私たち個々人に求められていることは、「働き方の意識改革」なのだと思う。

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