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ここでしか起き得ないサーカス<Pが語るグランヌーボーシルクその2>

 「感謝とアート」というテーマで、感謝を前回に話しました。今回はアートについて。
 
 昨今のアートの潮流で基本的な考えとして「サイトスペシフィックアート」があります。これはその土地でしか起きえない、その土地ならではのアートという意味で、幽霊に例えると解りやすいです。例えば、アメリカの足だけのゴーストが日本の畳の部屋に現れても全く説得力がありません。その場の歴史や地理や風習などから立ち上る物が、現代のアートでは重要です。
 
 今回の企画も、もし単に全国・全世界のパフォーマーを呼び集めただけだった場合、物珍しさはありますが、必然性が薄くなります。さらに言えば、パフォーマーは出演後に各地に帰ってしまうため、現地には何も残りません。それは単なる消費であり、創造的なアートではないと私は考えました。
 
 そのため、今回は関西圏のパフォーマーに多く出演していただき、大阪の持つサーカス力を掘り起こしました。いつもの公道がサーカスの世界に変わり、隣人がサーカスに出演する。間違いなく、”大阪でしか起きえないサーカス”になりました。
 
 そしてイベント後も、彼らは残り続けます。
 4月になってからも、いくらサーカスで本格的なワークショップを受けたり、MDFジャグリングショップで新しい道具を買ったり、グランフロントで活動しているバルーンアートソシオに会いに行けたりできます。もしかしたらワークショップでたまたま居合わせた人たちが、グランフロントのカフェでお茶をするかもしれません。

 出演者も客もグランフロントに集まり、そこから新しいコミュニティが出来る。その切っ掛けになれればと思っています。

 さらに、今回のイベントは大会も取り入れました。ジャグリングバトルの大会ジャグリングジャムセッション、ダンスとジャグリングの発表会MDF PEACE、それらが施設内で行われています。一般の人も見に来る場所で、プロとしてのパフォーマンスではない物を出すのは、挑戦的な試みだと思います。しかし、大会を通じて、サーカスが身近で決して自分と関係の無い世界の物では無いということを、知って欲しい。その思いがあります。

 グランヌーボーシルクは、ワークショップあり、大会あり、そしてサーカスのショウもあり、そんな客と出演者の境界がバラバラという仕掛けになっています。アートにはコミュニケーションアートというものもありますが、今回はサーカスを多面的に使ってコミュニケーションを設計しています。

 つまりグランヌーボーシルクはアートの手法である、サイトスペシフィックアートとコミュニケーションアートで仕立てている、と言えます。

 次は、サーカスがアート足り得るのか?について語ります。

公式HP:https://www.mbs.jp/gfo-gnc/

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