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同人音声作品は儲かるのか? ~マイクロコンテンツの時代~

今年の6月から「同人音声作品」というジャンルで作品をリリースし始めました。

同人音声サークル「調教少女」(※リンク先は18禁)

音声ドラマ制作は、美少女ゲームのグッズ特典などで経験はあったのですが、こちらは音声作品単体での製作・販売です。

前々から興味があった世界で、昨日、第8作目の台本を声優事務所に届けたところです。(当記事トップ画像の「おじさん大好き部」。十月上旬発売予定)

今のところ、販売はDLsite.comDMMの二大同人ダウンロード販売サイトに絞り込んでいますが、2~3人くらいの規模で制作するなら、現時点で十分に生活できるだけの売上があります。

これは参入してまだ数ヶ月ということを考えると、驚くべき事かなと思います。

実際やってみて感じたところなどを、作り手目線で報告してみます。

マイクロであることのメリット

たとえば、いわゆる美少女ゲームやアニメーションは比較的「大きなコンテンツ」です。

たくさんの人間が関わり、製作期間も半年~一年はかかることが多いです。

そのぶんコストも大きくなり、最低でも何千本も販売しないと採算がとれなくなります。

また、何千本も売るために、宣伝や関係各所との連携が必要になり、その事自体が作業量・人件費を増やしてしまいます。

ゲームもアニメも、だいたい5000本くらいの販売をノルマとして制作するのではないでしょうか。(もちろん予算規模に応じて増えたり減ったりはします。)

それに比べて、同人音声作品の場合、ウチでは製作期間は2~3週間くらいです。

実際「調教少女」でやっているように、月2本リリースすることが可能でした。それもスタッフ2~3人で、です。総コストは、人件費コミで数十万円程度でしょう。

そのような制作コストの低さは、損益分岐点を低下させます。

同人音声作品の場合、おそらく500本も販売すれば黒字になるのではないでしょうか。ウチは声優さんへの報酬やスタジオ代はきちんとした商業水準の価格でお支払いしているので、それくらいになります。(値切りすぎたり出演交渉が失礼なサークルは時折問題を起こして炎上しているのを見かけます。)

これは5000本の販売をノルマとしていた美少女ゲームに比べれば、楽に感じます。

音声作品の売上本数は、まだまだニッチ市場で、簡単には何千本も売れるものではないですが、それでも採算をとることは比較的やさしいと感じるのです。

この「たくさん売らなくてもやっていける」というのは、価値観が多様化してきた現代には合っているのではないでしょうか?

制作していて感じる、同人音声市場の特徴

実制作については、企画力やシナリオ、表紙イラスト、編集の技量がダイレクトに問われるので、作り手としてやりがいを感じますね。コンスタントにリリースできるのが嬉しいです。

またスマホ視聴との相性も良いので、将来性も有望だと思います。

美少女ゲームと比べて、ライターの執筆量が短めで済むのも、持続可能性を感じます。(美少女ゲームでは1MBとか書きますからね…。)そのぶん、アイディア力や市場ニーズへの適合性が厳しく問われると感じています。

声優のブッキングが一番の難点なのかもしれませんが、その点は美少女ゲーム制作のコネクションが活用できています。

生活しやすい環境を生かそう

正直、クリエイターは生活しやすくなってきたと思います。

それは、ダウンロード販売プラットフォームのおかげで、出版社やビデオメーカー、流通会社などの「たくさん売ってくれる」会社との取引を前提としなくても良くなってきたからです。

ダウンロード販売プラットフォームを利用することで、個人クリエイターが「直接」作品を企画・制作し、販売してもらって生活できるようになってきています。これがなぜ重要かと言うと、出版社や流通会社、ビデオメーカーに生殺与奪権を握られないからです。

最近だとAmazon Kindleでの読み放題サービスも話題です。購入障壁なく読まれるだけでページあたり0.5円もらえるそうので、うまく使えればいいですよね。

つまり「依存」ではなく、「自立」できるのです。

これは今後出版社などと取引する場合でも、交渉時に大きな力となります。

ただ競争はそれなりに厳しく、プロとして稼いでいくのに必要なスキルは、同人DLも商業流通もさして変わらないと感じます。

どの世界もそうですが、上位5%~10%に入らないと、稼げるとはいえないでしょう。

ただ、(1)誰でも参入可能である(2)リリースしながら試行錯誤してスキルアップできる(3)いつリリースするかも自由で、大きなプレッシャーに晒されない、という自由度が、とても魅力的だと思います。

個人が個人としての自由度を確保したまま、自立して稼いでいくには、同人音声作品や、同人CG集、WEBコミック、LINEスタンプなど「マイクロなコンテンツ」の方が楽な時代だと感じます。

これは、かつての「出版社に切られたら餓死するしかない」と言われていた漫画家たちに比べれば、とても生きやすい時代だなと感じるのです。

僕が運営するクリエイター向け有料サロン「クリエイターズ・ラボ」では、このような話題や有料記事が全て読めて、いつでも情報交換できて、夏冬コミケ時の定期オフ会など交流の機会もあります。

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