Red

読者メーターというサービスに登録した。というのもレビュー大賞という企画が開催されているので、その課題図書を読もうと考えた。ここのところ、本の選択を人任せにして、自分では選ばないような本に出会うことで、何か新しい発見があるのではないかと思っているからだ。最初に手に取ったのが、島本理生さんの「Red」でした。

島本理生さん、当然のように読み終えるまで、全く素性の知らない作家さんだった。彼女の経歴を調べたり、内容を知ったり書評を読んだ後だったら、決して自分から読もうと思わなかった作品だ。

優柔不断な女とダメンズ達

女性視点の恋愛小説、存在も知らなかった島清恋愛文学賞受賞作品、読み進めて驚く露骨な性描写、想像を超えカルチャーショックを受ける前半の展開でした。読み始めて抱いた純真そうな主人公、塔子のラブシーンの描写が始まったところで、不覚にも興奮しそうになってしまった。読む前は、本好きの小学生の娘に勧めようとしていたが、本の存在すら無かったことのようにして、妻に勧めてしまった。

濡れ場の描写で興奮しそうになったのも最初だけで、塔子を中心に周りに集まる男がダメンズ揃いで、その駄目男に翻弄され優柔不断になる塔子に、嫌悪感と腹立たしさを感じるようになると、ラブシーンを読み進めるのが苦痛になった。興奮したいだけなら安物のエロ小説を読んだ方がましに思えるのは、男ども誰ひとりとして感情移入することができなかったからだ。それでも、この話をどう納めていくのか、徐々に展開が気になりだしたところで、島本さんの術中にはまってしまった感じだ。

経験と学習

「経験と学習」、誰ひとり経験無くして理想的な人間にはなれない。そう島本さんは訴えているように感じた。浮気という人には相談しづらい行為から自分を開放していくが、同時に後ろめたさと罪悪感も感じ苦しむ塔子。ダメンズがダメンズであるべき理由もあらわになっていく。それでも学習をすることで自分の欠点を受け入れなければならない。家族の関係性も妥協の上に成り立っている。

どんなに幸せそうに見える家族にも人には言えない問題を抱えていて、現実は、この小説に出てくる登場人物より酷いかもしれない。読み終えて、家族の在り方を考えさせられる至極の一冊になった。

ただ、性描写が過激すぎて人に勧めるとセクハラに取られてしまいそうなのが難点だ。最後に読書メーターに投稿したレビューをつける。

誰もが欠点を持っているのに自覚せず、相手の欠点にばかり目が向いて無理を言う。そういった登場人物に溢れているため、誰にも共感できず、主人公の塔子の優柔不断さ、にも嫌悪感を感じてしまう物語序盤。セックスという後ろめたい行為から快楽に目覚めることで自分の内面が見え、束縛から精神を解放させていく塔子。異なる人生を歩み、その経験が人をつくる。自分の価値観を相手に強要できないことに気づき学習していく周り。経験なく上手に生きていける人なんて誰もいないことに最後は気づく。今の人生を一生懸命生きていこうと思える一冊。


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