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風光明媚なこのお寺、つなぐ覚悟

愛知県美浜町の大仙寺は、伊勢湾を眺める風光明媚なところにある臨済宗のお寺。後藤彰仁住職は2023年秋、矢田石材店と共同運営する「美浜はなえみ墓園」を新規オープンさせた。受け継いだお寺をさらに次世代へつなぐために。開園に踏み切った背景には、そんな想いがある。


リラックスした土地柄

――こちらはすごく見晴らしがいいですね。

「大仙寺があるのは知多半島の西海岸に近い方で、名古屋からいうとセントレアのもう少し先になります。美浜町の上野間という地域になります。お寺は高台にあるので、墓地から西側を眺めると伊勢湾が広がって、最高の景色が見られます。
自然がいっぱいで、気候もいい、のんびりした田舎にあるお寺です。住んでいる人もそんなカリカリしてなくて、僕もざっくばらんにしゃべるから、おじいさんやおばあさんからは『おーいっ!』と言って声かけられます。おいっ!じゃないよ、とか思いますけど(笑)。リラックスした地元の雰囲気は大好きです」

後藤彰仁住職

地元有力家のお堂が起源

――お寺の歴史をうかがえますか?

「古いことはよく分からないんですよ。2009年に大仙寺で古い文書が見つかったということで、名古屋大学の先生が、研究してまとめたレポートがあります。その資料に出てくる年号が延徳3年、西暦1491年です。お寺のあたりに天木家(あまきけ)というのがあって、そのご先祖を祀ったお堂を関係者が管理していたようです。天木家がどういう方たちなのかは分かりませんが、そのお堂が大仙寺の前身だったようです」

歴代住職が記された年表

――500年以上も昔のお話ですね。

「その後、別峰(べっぽう)さんという、私財で全国のあちこちにお寺を創建された、えらいお坊さんが知多半島にいらっしゃって、そのお堂を臨済宗妙心寺の直系のお寺にしたのが大仙寺です。1707年のことです。
お堂が如意院という名前だったので、山号を如意山として、別峰さんが如意山大仙寺の初代の住職に就かれました。そこから数えて、私が20世になります」

寺の歴史より古い大日如来像

――お寺には古いものが残されているのですか。

「大仙寺には唯心寺という下寺がすぐ近くにあったのですが、そのお寺は住職もいなくて、壊れそうになったということで、15年くらいに大仙寺が吸収合併しました。唯心寺にはお寺よりも歴史の古い大日如来像があって、それだけは残さなければいけないとなって、大仙寺に持ってきて、きれいにして、安置していますが、室町時代に作られた本当に古い仏像です」

大日如来像

お寺の維持への危機感

――「美浜はなえみ墓園」の開園を考えたきっかけは何だったんですか。

「僕は昔から頼りにしていて、めちゃくちゃ仲よくしてもらっているお坊さんの先輩が常滑市にいるんです。海音寺さんというんですが、そちらが先に常滑はなえみ墓園を始めていたので、いろいろ教えていただいて、うちもやろうかとなりました。永代供養が付いているなど、お墓を持つ人に安心を提供できるはなえみ墓園のしくみは、メリットがあるなあと、先輩のお話からも思って、やってみようとなりました。
墓じまいとか、少子化とかで、これからはお寺がなくなってしまうことも考えなくてはいけない。お寺を絶やさないための対策をしなければいけない時代になっていくと思っています。そういう危機感があるので、僕はとにかくお寺をなんとか維持して、檀家さんたちに安心してもらえることが一番だと考えています」

――危機感があるんですね。

「跡取り問題も、ですね。この問題を抱えているお寺はすごく多いですから。それだけは、僕は先延ばしせずに、ちゃんとやりたいなあと思って、子どもたちが小さいうちから話をしています。僕が急にぽっくり行っちゃったら、終わっちゃうんで。住職がいなくなったら、檀家さんは本当に不安になりますからね。男の子が2人、女の子が1人いるんですが、だれかが継いでくれると願っています。うちの子どもたちは、僕よりもちゃんとしているので、きっと大丈夫だと思っています」

青空に映える本堂

お寺の命を絶対に絶やさない

――お子さんたちの存在、心強いですね。

「お坊さんって、個人の名前で呼ばれるより、お寺の名前で呼ばれますよね。後藤さんじゃなくて、大仙寺さんって。それだけ、お寺を背負っているのかなあと思うんです。私は5年前に父から引き継いで、住職となりました。大仙寺はもう400年も続いていて、自分の70、80年くらいの人生で、お寺の命を引き継いで次につなぐのが、自分の役割です。続けるのって大事だと思いますよ。大仙寺には絶対に空白期間をつくっちゃいけないので、しっかりと維持していかなければいけないなと思っています」

寺名:如意山 大仙寺
宗派:臨済宗
住所:愛知県知多郡美浜町上野間高川23


永代供養のついた安心のお墓「はなえみ墓園」。
厳かな本堂でのお葬式を提案する「お寺でおみおくり」。
不安が少なく、心のこもった、供養の形を、矢田石材店とともに考える、お寺のご住職のインタビューをお届けします。
毎月の第2、第4月曜日に更新する予定です。

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