小さな嘘がうまれる言葉
書いた文章に、嘘がうまれることがある。
もちろん、嘘をつくつもりなどないし、騙す気もない。でも、書き上げた文章が、伝えたかったことから離れた場所に着地してしまうときがある。
それは、小さな嘘が文章の中に混ざっているからだと思う。
書く仕事に慣れた自分が見落としていた小さな嘘について、忘れないように書いておく。
小さな嘘がうまれるきっかけは、大きく2つある。
ひとつは、文脈のところ。もうひとつは、使う言葉のところだ。
1.嘘がうまれる文脈
書き始めた文章が、リズムよくタイピングされていく、その最中にこそ小さな嘘はうまれやすい。でも、気にしすぎるとブレーキを踏みながらアクセルを踏むみたいなことになるので、リズムよく書くこととを優先して問題ない。
ただ、あとで読み直したときに以下のような文脈のところがあったら、小さな嘘がうまれているかもしれない。じっくり「本当にその流れじゃないとダメだろうか…」と見つめてみよう。
・何かを比較対象にしている文章
「冬の味覚といえば牡蠣という方も多いと思いますが、やっぱりカニでしょう」みたいな文章。
「牡蠣よりもカニ」と書くことで、手っ取り早くカニの良さを表現できる。ただ、本当にカニがおいしいと思うなら、牡蠣を引っ張り出さずに、なぜおいしいのかを最初から存分に語ればいい。
・丁寧に説明しすぎる文章
「カニがおいしいというのは、うまみ成分でホニャララ酸の一種であるホニャララが」みたいな文章。
わかりやすく説明しようとするあまり、省略できる部分まで掘り下げたり、または読まなくてもわかることまで書いたりしてしまう。だいたいは、説明できる自分はすごいアピールになっているだけなので、削除してしまおう。
・余分な付け足しがある文章
「カニをおいしく食べるためには、ちなみにお酒との組み合わせも大事です」みたいな文章。
語りたかった部分を書き終えた安心感で、必要性の低い情報まで書いてしまう場合。「丁寧に説明しすぎる」と似ている。これも必要ないので、消しておこう。
書き出して気づいたのは、どれも根っこのところは「こんなに語れる私ってすごいでしょ?」という自慢というか、自己顕示が含まれている。
文章を書いて何かを伝えるときに、語るのは悪いことじゃない。ただ、削除しても伝わるなら、単に「私語り」になってるだけなので、迷わず削ろう。
2.嘘がうまれる言葉
よく使われる言葉は、知らないうちに嘘をうんでしまう。できるだけ、自分がどう感じて、どういう行動をしたかに言い換えると、その行為は事実なので嘘になりにくい。
たとえば、
おもしろい → 読み出したら止まらなかった。一気読みした。
という感じ。次にあげる言葉が出てきたら、1.の「文脈」と同じように注意して見たほうがいい。
・こだわり
・おすすめ
・おもしろい
・おいしい
・楽しい
・好き
・感動した
・愛がある
以前のぼくは、言葉を効率よく当てはめて文字スペースを消すことが文章を書くことだと思っていた。
文章を書くことに慣れるというのは、自分なりの型を持つことだ。必要のないところで悩まなくなるし、伝えたいことを的確に文章化できるようになる。
一方で、型にはまった文章ばかりを書いていると、自分が感じた「何か」を見落としてしまうことにもなる。文章にできていても、感じた「何か」が伝わらなければ、それは残念ながら嘘のある文章だ。
そんなときは、ここで挙げた嘘がうまれがちな文脈と言葉をヒントに、もう一回だけ見直してみよう。
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