見出し画像

第24話 なにができるの?

 次の日の放課後。
 尾張さんとテニスをすることになった。

「よくラケットなんか持ってたわね紀美丹君。」

「まぁ、一応中学でテニス部だったので。」

 三年間補欠だったけど。部員が多かったからね。仕方ないね。

「紀美丹君、短パン似合わないわね。」

「ほっといてください。」

 そういう、尾張さんはやはり制服だった。

「尾張さんこそなんで制服なんですか?」

「なんででしょうね。」

「いや、なんででしょうねではなく。」

「さっき初めて気づいたのだけれど、教室の私のロッカーに荷物は存在していなかったわ。」

 まぁ、そりゃあそうだろう。尾張さんの荷物は親御さんの元へ返還されたはずだ。

「いや、それはそうでしょうけど。尾張さん、幽霊なんだから、衣装チェンジとかできないんですか?」

「その幽霊って、私はまだ認めてないし、仮に、幽霊だとしても衣装チェンジとかできるわけないでしょう。」

 マンガの読みすぎよ。と尾張さんは呆れたように言う。

「その割にラケットは持てるんですね。」

「それは、持てるわよ。」

 ラケットくらい。と、片手でクルクルとラケットの面を確かめるように回す。
 これ、傍目にはラケットが空中に浮いてるように見えるのだろうか?

「なんか、尾張さんラケットの扱いに慣れてませんか?」

「そうかしら。あんまりやったことはないわよ?」

「そうなんですね。じゃあ、最初は軽くいきますね。」

 そう言いつつ軽くロブを打つ。山なりに飛んでいったボールは尾張さんの少し前に落ちるとバウンドする。

 尾張さんは、それをとても綺麗なストロークで返す。

 豪速球が僕の左頬を掠め、フェンスに突き刺さる。

「嘘つき!」

「なんの話よ。」

「どう考えても、上級者の動きじゃないですか!」

「そうかしら。本当にあまりやったことはないのだけれど。」

 そうだった。この人は、スポーツも万能だった。
 くっ、密かに尾張さんに勝てるかもと思っていたのに。
 このままでは、元テニス部としての面目が立たないので、

「ま、まぁ、目的は果たしましたし、これで終わりにしますか。」

 と、道具を片付けようとする。

「あら、もう終わりなの?今始めたばかりじゃない。ダメよ紀美丹君。少しは運動しないと、将来見るに耐えない姿になるわよ?」

「いいんですよ。目的は完遂したんですし。それと、僕の運動不足については大きなお世話です。」

「そういえば、目的ってなんだったのよ?いきなりテニスをしましょうなんて。」

 そう、疑問符を浮かべる尾張さん。

「現在の尾張さんがなにができるかを調べることですよ。」

「なにができるか?」

「尾張さんは現在、幽霊ですよね。」

「・・・・・・まぁ、仮にそうだとしましょう。」

 往生際が悪いなぁ。

「そんなゴースト尾張さんが、なにに触れるのか。どこまで移動できるのか。それと、僕以外に見える人間はいないのか。」

 それを調べていたんです。そう言う僕の目線の先には、一人の子供が立っていた。

「ゴースト尾張さんってなによ。勝手に妙な名前つけないでもらえる?」

 今、良いところだから、黙ってて尾張さん。

「あなたの心を揺さぶる物語を。」  あなたの感情がもし動かされたなら、支援をお願いします。  私達はあなたの支援によって物語を綴ることができます。  よろしくお願いします。