【天狼院書店短編100枚二ヶ月コース受講者向け】書きあぐねたあなたに⑥会話文をとっかかりにした書き方
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【注意】
こちらのエントリは、天狼院書店さんで開催中の「短編小説100枚を二ヶ月で書いてみる」企画参加者の方向けのエッセイです。参加していない皆様にもなにがしかに気づきがあるかもしれませんが、このエッセイは基本的に「初心者の方が小説を書き切る」という目的設定をした講座に向けたものでありますので、中級者、上級者の方がご覧の際にはそうした点をご注意の上ご覧ください。
【注意ここまで】
はい、中間講座から一週間です。皆様、書けてますか?
執筆って難しいですからねえ。慣れればなんということもないのですが、どうやって書いたらいいかわからないと筆が止まってらっしゃる方もたくさんいらっしゃると思います。今日はそうした方向けのヒントです。
皆さん、登場人物に会話をさせてますか?
もちろん、世の中には会話のない小説は沢山ありますし、そういう小説を書いてみたいという方は例外としても、登場人物たちに会話をさせてみると、案外物語に駆動力が出てきたりします。
例えば、どうしてもお話が動かないという方は、登場人物同士が一つの部屋にいて、会話をするというシチュエーションを思い浮かべてみてもいいかもしれません。
例えばあなたの小説にお調子者のA、寡黙で一匹狼なB、マイペースのC、怒りっぽいDが出てくるとしますよね。その四人を集めて、頭の中で会話させてみてください。そうすると……。
A「みんな、せっかくみんなで集まっているんだから、なんか話でもしましょうよ」
B「……」
C「ハンバーグ食べたい」
D「BもCも自分勝手な奴ね!」
A「いや、なんでお前が怒ってるの」
D「だってだってだって」
C「腹減った」
B「……(煙草をふかす)」
………
のように、会話を展開できるんじゃないかと思います(かなり雑にやったので、クオリティが低いのは許してね)。
でも、あてずっぽうで会話をさせただけでも、登場人物たちの輪郭が濃くなった気がしませんか。この会話だけでも、AとDは関係が近く、どうもB,Cとは関係が遠そうだということが分かります。Cは体格がよさそうですし、Bはちょっと気難しそうな大人の男といった風情でしょうか。
実は、こうして登場人物を会話させてみるだけで、当初は想定しなかった人間関係やディティールが浮かび上がってくるということもあるのです。
実は、作劇技法として、先に会話だけ作ってしまうというやり方があります。
つまり、先に上記のような会話文を作った上で、後々地の文を差し入れていくわけです。ちょっとやってみましょうか。
卓の前に座るAは部屋を見渡し、口を開いた。
「みんな、せっかくみんなで集まっているんだから、なんか話でもしましょうよ」
だが、窓際に立つBは反応しなかった。
「……」
それどころか、Cに至っては、
「ハンバーグ食べたい」
と卓の前でよだれを垂らす始末。
Dは卓を叩いて立ち上がった。
「BもCも自分勝手な奴ね!」
BもCも反応しない。我関せずの態度だ。
「いや、なんでお前が怒ってるの」
Aのもっともな疑問に、Dは顔を真っ赤にして首を振った。
「だってだってだって」
だが、横に座るCは我関せずの態度を崩さず、
「腹減った」
と上の空だし、Bに至っては
「……」
無言でたばこの煙をつまらなそうに吐き出すばかりだった。
………
まあ、かなり雑にやっちゃいましたが、台詞から地の文を想像しながら書き進めることができるんです。そしてここからはかなり高度ですが、あまりにどうでもいい台詞は省略したり地の文に組み込んだりする方がエレガントなので、上の文章だったら、わたしはこう直します。
卓の前に座るAは部屋を見渡し、口を開いた。
「みんな、せっかくみんなで集まっているんだから、なんか話でもしましょうよ」
だが、窓際に立つBは反応しなかった。
それどころか、Cに至っては、ハンバーグ食べたい、などともごもごと言い、卓の前でよだれを垂らす始末。
Dは卓を叩いて立ち上がった。
「BもCも自分勝手な奴ね!」
BもCも反応しない。我関せずの態度だ。
「いや、なんでお前が怒ってるの」
Aのもっともな疑問に、Dは顔を真っ赤にして首を振った。
「だってだってだって」
だが、横に座るCは我関せずの態度を崩さず、
「腹減った」
と上の空だし、Bに至っては無言でたばこの煙をつまらなそうに吐き出すばかりだった。
………
実は会話から地の文を想像して作るというやり方、これは登場人物の設定が出来上がっているとかなりやりやすいと思います。こういうアプローチもあるよ、ということでなにとぞ。
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