刀と算盤

何にこだわり、何にこだわってはいけないのか

 「刀と算盤」(光文社)発売中です!

 昨日は某出版社の編集者さんと七時間半にわたる打合せでした。

 ……実際に仕事の話をしたのはわずか1時間ほどで、残りは世間話やら広く小説の話(読んだ本の話や小説に関するあれこれ)で、いろいろと有意義な話をうかがうことができました。いやはや、某編集者さん、まことにありがとうございました&ご迷惑をおかけしました(お風邪をひいてらっしゃることを今思い出し、わたしの方から「もうそろそろ……」と切り出すべきでした、すみません……、って、誰に対する言い訳だ)。

 さて、そんな濃く、ここだけの話もめちゃくちゃ多かった打ち合わせですが、ふと家に帰ってから、一つ、大きな気付きを得ました。

 ずばり、「こだわり」です。

 ご同業の方にはご理解いただけるところだと思いますが、小説は「こだわり」で出来ているものです。けれども、百パーセントのこだわりでいいものができないのもまた事実。なぜなら、個人のこだわりは必ずしも目の前の小説における正解とは限らないからです。だからこそ、編集者さんという関門が存在するというのがわたしの現状での考えですが――。
 つまるところ、「こだわらなくちゃならない」のだけれど、「こだわりを棄てなくちゃならない」こともあるのです!

 ああ、ややこしい!

 ということはつまり、「ここはこだわるところ」「ここはこだわりを棄てるべきところ」という分岐点に差し掛かった際、作家は己のこだわりをどうすべきかを決めならないことになり、その際にコンパス――行動指針を持っておくべきだろうという結論に至ります。

 昨日の打ち合わせで編集者さんのお話をうかがいながら、ふと大悟したのです。

「己の理想に対してはこだわる」
「今の自分にはこだわらない」

 これだ、と。

 人間惑いやすいもので、ふと今の自分のスタイルにこだわってしまうものです。そうではなく、遠くにある大きな山――理想を目指して歩けば大きく道を間違えることはありません。

 そうか、「理想を持つと作家の軸が決まる」と某編集者さんがかつて言っていたのはそういうことだったか、と一人家でぽんと手を叩いている次第です。

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