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秀平さんぽin本丸御殿

まちなか寺子屋「秀平さんぽin本丸御殿」は、昼間とは表情を変えた夜の名古屋城本丸御殿にて、首相官邸などの建築物やNHK大河ドラマ題字作成など幅広く活躍する挟土秀平さんの誘いで幕を開けました。

まずは建築文化財に携わる職人達の現状からお話が始まり、生の現場での体験が若き職人を育てる事、式年遷宮は神殿の継承だけでなく技術の継承の為の物である事など、飾らない絶妙な言葉のチョイスで伝統技能を未来へ繋いでいく大切さが語られます。

また、名古屋城の石垣を秀平さん目線で見た感想も興味深く、全国の大名が区画ごとに普請した為にクオリティに違いが出ている所もすぐに見抜き、特に天守の石垣は石の選び方から積み方まで手が込んで色使いや空間的センスも抜群だとの事。石垣の中に自然美を感じるという目の付け所にも驚きましたし、名古屋の民として誇らしくなりました。

そしてお話は建築の素材にまで及び、百年使える伝統的な漆喰と二十年程しか保たない現代のインスタントな漆喰の違いから、経年で風合いや味わいを増して価値を上げる日本古来の建築、和釘の錆びや風化する素材へも美しさを見出す日本人独自の感性へと拡がっていきます。

お話の後、秀平さんのざっくばらんな語りと共に本丸御殿を散策でき、壁の漆喰の塗り方から金箔の貼り方まで秀平さんチェックが入って「この部分を担当した職人はちょっといい加減でかわいい」等、文化財の奥に垣間見える携わった人々へも親しみの目を向けて、職人の個性や顔が浮かんでくるような楽しい時間になりました。また、素材に対する感性を磨いて「本物」がわかるようになると、真実を見る目も養われ、日々や心が豊かになるというお話も印象的でした。

秀平さんは「近代の高層ビルは出来上がった時に最も価値があり後は朽ちていくだけ、伝統建築は出来上がりが始まりで百年経った時に風合いや美しさが磨かれてお金で買えない価値が生まれている」と語ります。
人にも同じ事が言えるのではないでしょうか。長年の経験に裏打された「本物」の確かな技術や知識と、飾らない人間的魅力でお客様方の心を掴む秀平さんを見てそのように感じました。我々も経年で朽ちるのではなく、磨かれていけたら素敵ですね。
そんな素晴らしい伝統の技を受け継ぐ、古今の職人達の個性を楽しむ新しい目線で、色々な建築文化財へ出掛けてみたくなる寺子屋でした。

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レポート:近藤加奈子 写真:堀田三千夫

■レポートしたプログラム

■まちなか寺子屋

■やっとかめ文化祭

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