編む* 季節を進めたなら果てまで観ててね

平成最後の朝よ
暖かい雨が季節をまたひとつ先に進めるのね
家から少し離れた畑のことを考えているのでしょう
柔らかく耕した土に種を播いたから
たくさんの命の始まりを考えているのよ
彼らは乾燥した眠りから覚める必要なんかなかったかもしれないのに
私が彼らの季節を進めてしまったのね

芽吹きに必要な熱を欲しがるでしょう
その間、あなたは待てるのかしらね
自分の始めたことなのだから
見つめ続けることが責任なのよ
だんだんと老いて硬くなる関節と引き換えに
土を持ち上げてくる双葉と出会えるまで
ただただそこに在ると約束するのが
大人になるってことなのじゃないかしら

しゃがんで埋もれた菜花の合間で
目の前に伸びてきた蕾をひとつちぎって前歯で食めば
あの人との口づけと同じ
甘い命の味がしたのよ

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