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最期の時まで⑨

5月9日
3年前の母の日
貴女と逢えた最期の日

全て覚えている
まるで昨日の事の様に
この時間も側にいた。

午前10時
不動産屋さんと待ち合わせしていた
マンションに車で向かった
内見している途中で貴女は
『胃が痛いから、お母さんの車で待ってていい?』と言って部屋を出た。
狭かった事もあるが、具合の悪い貴女が気になり、早々に切り上げ、2件目の物件はキャンセルして家に戻った。
薬を飲んでしばらく寝ていた。

カーキ色のジャンパースカートを履いていたね。

豚汁とお魚を焼いて、ほうれん草のお浸しとお粥を作りお昼を食べた。

洗濯、掃除を済ませたら孫が
夕飯はマックが食べたい❗️買いに行こう!とリクエストされ、貴女はフィレオフィッシュなら食べれると言うので、孫と2人で買いに行った。
ところが帰宅して袋を開けたら注文したはずのフィレオフィッシュが入っていなかった。
車で往復30分。
もう一度行って来るよと言ったら貴女は
『冷凍庫におうどんあるよね?それを作ってもらえる方が嬉しい』と言った。
3人で夕飯を済ませ、お風呂を沸かしている時に宅急便が来た。
貴女は『あぁー良かったぁ!間に合ったぁ!はい、お母さん、母の日のプレゼント。いつもありがとう!』
そう言って、私の大好きな香りのハンドクリームとパウンドケーキのセットをくれた。
『ごめんね、今年は買いに行けなかったからネットで注文したんだ。このハンドクリームね!出した時と手に塗った時と香りが変わるんだって!付けてみて!』と、この日初めて笑った。
ムスクとジャスミンだった。
(ホントだ!変わった!いい香り〜)
そう言った私の手の甲に顔をつけて
香りを確かめた貴女…
あの感触、あの香り…
あの時と貴女のお葬儀の時しか使っていない
ハンドクリーム。
次の日、学校の孫と仕事の私
帰ろうかな?と思ったが、どうにも気持ちがザワザワして帰れなくて
ソファに背中を丸めて座っている貴女の背骨が浮き出た背中をさすりながら
『2人でお風呂に入っておいで。○○ちゃんの髪を乾かしてから帰るから。』と言った
出て来て、ドライヤーで髪を乾かし
おやすみを言ってベッドに入った。
今度こそ帰ろうと思ったが、後ろ髪を引かれて帰れなかったので、貴女に白湯を入れて
薬を飲ませ、貴女が眠くなるまで
おしゃべりをした。
『お誕生日に来れなくて、ごめんね。金曜日から泊まりに来るから土曜日にみんなでケーキ食べようね』
そう言ってしまった。
仕事の展示会やイベントがぎっしり詰まった週だった。

『お母さん、大丈夫だよ。1人で出来るから仕事して。』
貴女のいつもの優しさに
いつもの様に甘えた。
夜11時を回っていた。
もう眠くなったから寝るね。
そう言った貴女の顔。
そう言った貴女の声。
離れ難い夜。
おやすみ……
おやすみ……
永遠に……

何故帰って来た?
何故お誕生日には来るよと言わなかった?
何故貴女の手を離した?
何故貴女は大丈夫だと言った?
何故?何故?何故?
ごめんね!
ごめんね!
お母さんは本当にバカだった!
どんなに貴女を愛していたって
1番離してはいけない時に貴女の手を離した。
どうしたらいい?
どうしたら許される?
どうしたらもう一度貴女にお母さんと呼んでもらえる?
お願いだから、もう一度母の日のプレゼントして欲しい!
お願いだから!

お母さんは貴女を守れなかったね。
それなのに、貴女は最期まで私に優しかった。
私の子に産まれていなかったら
貴女は今も生きていただろうか?

あの日に返りたい。

じゃあ、帰るね。


さよなら

さよなら

さよなら

#さよなら私の大切な娘
#さよなら私の生命

さよなら…
おやすみ…

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