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人間交差点

深夜3時の自分ってとても素直。

物分かりのいいオトナのフリをしなくていい。
寂しい、悲しい、辛い。全部認められる。

ホットココアやホットミルクみたいな落ち着く飲み物さえ体が拒否する。頬を伝う涙はそのままにして、少し凹んだペットボトルに入ったミネラルウオーターを飲み続ける。

生ぬるいミネラルウオーターが胃に落ちていくのは心地よい。涙との循環で、苦しい感情は外に出してしまいたい。

毎度悲しいことからは立ち直っている。
なんとか、衝突事故が起きる前の何も知らなかった自分に戻ろうと努力する。

仕事に集中して、友達と全力で夜遊びする。

それでも後遺症は残る。

メッセージの受信音に敏感になり、いるわけないのに、街中で知らない間にその人を探す。
いなくなったからこそ思い出の彩度は上がって、ただ家でゴロゴロしてDVDを観てたことすら美しいものに感じる。

きっとあの海外ドラマのシーズン4は一人で観る。

日常がどれだけ特別だったか。寝て起きてソファでくつろいで映画観て過ごすダラけた週末はありふれたサプライズには勝てない。

朝が来ればメイクをして仕事に行く。

私が涙をこらえながらファンデーションを塗ることや、こらえきれずに涙が出てアイラインが引けずに洗面所の鏡の前で佇む姿なんて想像出来るわけがない。

私が大丈夫になるのは、五日後かもしれない。一年後かもしれない。一生引きずるかもしれない。

それでも私はいつまでもミネラルウオーターを飲みながら泣いているわけにはいかない。

貰った服や持ち帰ってきたパジャマやマグカップ、化粧品は当分、紙袋にまとめて部屋の隅に置いておこうと思う。

自分のものなのに、自分のものじゃないみたい。

取り出した瞬間に漂う匂いは悲しい。いい匂いだけれど、悲しい。

貰った香水には触らない。手に少しでも匂いが付くと悲しいから。

街中であなたと同じ香水の人がいても振り向かない。違う人でもあなたでも悲しいから。

もしかしたらもう一度衝突事故が起きるかもしれない。
今はそれを期待しているけど、次はお互いの助手席に誰かが乗っているかもしれない。

もし乗っていたら、事故が起きた時に考えようと思う。

運命なんて簡単に変えられると思ってる。でも運命ならきっと一度出会う。
都合のいいように運命に流されたい。

泣き喚いて「行かないで」って言ってるわけじゃない。

人を愛するなら、その人の周りの世界ごと愛さなければならないはず。

きっと私は美学に惚れて、美学に殺された。





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