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「ダイの大冒険」に再会す。 その4:未来を指し示す光、屈することを知らない魂。 ーレオナとヒュンケルー

再アニメ化により「ダイの大冒険」に再会し感動したイイトシの元オタクが、色々語ってしまった記事でございます。

以前の記事はこちら↓↓↓

【ネタバレあります】
あらすじでフレイザード編まで、ざっくりとは鬼岩城上陸後、基本的にはアニメの進行度以上はいかないようにしています。(2021年9月現在)


大魔王バーンが地上侵攻を始める前にダイと出会った王女レオナと、アバンの使徒でありながら魔王軍の軍団長となり、その後、仲間となる剣士ヒュンケル。
ダイの大冒険の本格的なはじまりは、レオナに出会ったことから始まります。そこからパプニカ王国の王様の依頼でアバンがダイのもとへ派遣され、勇者になるための特訓を受け、その最中にハドラーの襲撃があり…まさに大冒険がはじまったわけです。

クロコダインを倒したダイたちは、レオナの身を案じ、ロモス王国を後にしてパプニカ王国へ向かいます。パプニカは魔王軍との激戦区になっており、ダイが港に到着するとその付近は廃墟と化していました。
そこに現れたのが剣士ヒュンケル。アバンの使徒であることを認めますが、同時にパプニカを攻めた不死騎軍団長であることもあかし、ダイたちを圧倒的な力で追い詰めていきます。

間一髪のところでクロコダインが現れダイとポップを救出し一時撤退、残されたマァムは人質として囚われの身に。マァムを救う為、ダイとポップは対ヒュンケルの特訓を重ね、ヒュンケルのところへ乗り込んで行くのです。
ダイたちの奮闘も虚しく、桁違いに強いヒュンケルにまたもや追い詰められます。瀬戸際でダイは新たな力に覚醒し、ヒュンケルは敗戦、マァムの説得もありヒュンケルは改心します。

そこへ魔王軍の軍団長である氷炎将軍フレイザードが現れ、ダイたちもろともヒュンケルを始末しようとしますが、ヒュンケルはその身を犠牲にしてダイたちを救い、一時退場します(?)。
助かったダイたちはレオナが魔王軍の攻撃から逃れていたことを知り、合流しようとしますが、フレイザードによりレオナは人質にされてしまいます。

…この辺りはあらすじだけでもすごいことになるんで割愛しますが、ざっくりいうと、ダイ抹殺の為にハドラーが魔王軍を引き連れ参戦、苦戦するダイたちの前にクロコダインとヒュンケルが仲間として現れ、苦戦しつつも魔王軍を撃退しフレイザードを倒し、レオナを助けるのです。

その後、パプニカ王国は王女レオナにより復建の道を歩み始め、ダイたちもまた、新たな局面をむかえていくわけです。
王女レオナと剣士ヒュンケルが仲間になるエピソードは、いかにも王道でしたし、ヒュンケルが改心して仲間になるあたりはまさに「少年ジャンプあるある」。連載当時もやっぱりねえ、みたいな感じでした。

主要な仲間が揃い、これから物語は核心に迫る内容になっていきますが、ここから終盤の話の拡がり方を思うと…。
まだまだ序の口でしたねえ(笑)。

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パプニカ王国の王女であるレオナ。
ダイが冒険に旅立つ前は(要するに連載開始前は)、はじめにロモス王国の王様に出会い、そこからパプニカ王国に伝わって、王女レオナがダイの元へやってくるというエピソードがありました。

王家のいざこざに巻き込まれたレオナを助けたということで、勇者としての可能性を見抜いたパプニカ国王がアバンをダイのところへ派遣したのです。
レオナの出会い自体は最初ということになるのですが、仲間になるのは結構あとになってからになります。
王女ということで、おしとやかなのかとおもいきや、勝ち気で強気、言いたいことはちゃんという、かなりメンタルの強い王女様で、国王亡き後の国を引っ張れば物語もグイグイ動かしていきます。

職業としてはあらゆる呪文を駆使できる賢者の卵であり、マァムが転職するきっかけも、回復呪文の能力の高さに敵わないと思ったからでした。

王女で賢者で有能というキャラではありますが、どういう環境で育ったかは謎で、父親の国王は物語初頭で亡くなり、母親の描写はありません。ただ、自分が背負う背景に絶対の自信を持っており、それを踏み躙ろうとする輩には容赦がありません。魔王軍だろうがなんだろうが、毅然とした態度で接して抵抗するのです。

表面上は女子力を発揮して恋愛沙汰に首を突っ込んだり茶目っ気ある行動をしてるんですが、ふとした瞬間、王女というか次期国王としての気概が現れる。思考がちょっと他の仲間とは違う感じがします。

だからこそ自分の国を攻め込んで父の死の原因を作ったヒュンケルを赦し、友好国だったであろうロモス王国を攻めたクロコダインを受け入れられた。ダイたちの心情を汲んだにせよ、一時の懲罰感情よりも大魔王打倒の可能性にかけた方が国益になると踏んだからかじゃないでしょうか。
その視野の広さは、ついに大魔王に対抗する為に世界の国々を束ねるという行動につながります。

連載当時は、おてんば王女様やん、で終わってましたけど、大人の端くれになってみると、王女っていうよりも政治家とか何かの活動家に近いなと感じました。
そう考えると、とんでもない10代なんですけど…。
でもまあ、両思いであろうダイもぶっ飛んだ10代だから、お似合いなのかも。

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レオナの国であるパプニカに攻め込んだり、同じアバンの使徒であるダイたちを容赦なく叩きのめしたりと、なかなかの悪役っぷりで登場した元不死騎団長の戦士ヒュンケル。

表面上はクールですが、内面は熱い心情をもつイケメン戦士です。
育ちがかなり特殊で、戦災孤児だったところを(人間)、ハドラーの部下バルトスに拾われて育てられ(魔族)、アバンに出会い剣士の道へ進み(光・人間)、魔影参謀ミストバーンに助けられて師事を受けます(闇・魔族)。ダイたちに出会い改心して正義の剣士(光・人間)と、いろんな属性・領域を巡ってきた背景があります。

内面的なところでいうと、魔王軍でありながら騎士道精神にあふれた養父バルトスを勇者アバンが殺したと思い、アバンに復讐しようと師事します。使徒として認められた直後、復讐に失敗し川に転落、その後ミストバーンに助けられ闇の武術を会得し魔王軍の戦士として成長します。
成人したヒュンケルは、人間でありながら魔王軍につきアバンと人間に復讐を誓うわけです。

ダイたちと出会い、実はバルトスを殺したのはアバンではなかったという事実を知り、マァムとなんやかやあって改心するところはまさに「少年ジャンプあるある」。

しかし、改心したら万事解決というほど、ヒュンケルの心は単純ではなかった。自分が魔王軍の戦士として活躍していたということは、人間に対してダメージを与えてきたということ。実際、レオナの父親が亡くなっている。
国王が死んだ要因を作ったんだから、通常は死罪が妥当。それなのに攻め込んだ国の王女はゆるしてくれるし、ダイたちは仲間に入れてくれるしで、バルトスゆずりの騎士道精神に火がついたんでしょうか。

ダイや仲間の為、肉体も魂も限界まで削って戦いはじめるのです。
その後の行動がストイックすぎて、大人になって読んだら若干引きました(笑)。
物語が進んでいくと、剣士から槍使いに転職するのですが、そこで背負う使命が生き様をさらにストイックにしていきます。

生命を始終削りまくりで、連載当時は自己犠牲キャラというポジションぐらいにしか思ってなかったですが、今読んでみると、意外と気配りキャラでもあるんじゃないかと思いました。複雑な背景があるが故に、他の仲間たちの心情がわかるというか。

…イカンですなコレは。モテますよ。
いや、モテてたんですけどね(笑)。
でも、自分が親で子どもが結婚相手としてクロコダインかヒュンケルを連れてきたら、クロコダインの方がうれしいですね(何言ってる)。

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レオナとヒュンケル、この2人は仲間になる時期は同時期、関係性もかなり因縁があります。
なにせ王女レオナにとって、自分の父親が死んだきっかけを作ったのが戦士ヒュンケルですから。

でも、レオナはそれは些細なことといわんばかりに前向きな行動に走りますし、ヒュンケルは贖罪の戦いに身を投じてレオナとダイの道を切り開いていく。

未来に生きる王女と、過去に囚われた戦士。
対照的だけれども、その視線の先は同じ。
己の背景から未来へ続く道筋を探り出し、リーダーとして兄弟子として、仲間のために指し示していくのです。

この2人の因縁、連載当時は本編でもさらっと流してたので、気に留めてなかったんですが、大人になって読んでみると「ちょっと待てぇ」になりました。
レオナのあっけらかんとした様子も「ええんか?」と思いましたが、それをふまえて読むとヒュンケルの行動や言動に深みが増しました。

何を着地点にするかによって、何をゆるし何を断罪するのか。より大きな目標の為に個人の感情、自分を犠牲にできるか。
だからこそ、物語も歴史も大きく動かすことができるわけでして。

大人になって読むと、その「責任感」のあるなしが物事の進行スピードを決めることがわかるので、なんていうか、身にしみますね…。
人間、でっかく生きないとあかんですわ。

その5に続きます。



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