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こんにちは、ゼミ生2年の山本です。今年の夏休みは自由にどこでも行かれるわけでもなく観光を学ぶ私たちにとっても厳しい夏になりました。

さて、観光を学ぶ、と書きましたが、そもそも「観光」とはどのようなものなのでしょうか?日常会話でも観光、という単語は頻繁に出てきますし、私たちは当たり前のように使用している言葉です。今一度改めて観光とは何か、ということについて勉強してみましょう。

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「観光」の語源は?

まず、観光という言葉の語源についてです。観光という言葉は古代中国において書かれた『易経』という書物の中の「国之、利用賓于王(国の光を観るは、もって王に賓たるによろし)」に基づくものです。この場合の観光とは「国の光を観る」ことであり、国を訪れた人は国王の人徳と善政によってもたらされた繁栄によって国が光り輝いて観える、という意味となります。つまり観光とは受け入れ国側からすれば国威発揚の意味を含んでいます。日本では明治年間までおおむねこの意味で使用されていました。

ただし、現在の「観光」はツーリズム(tourism)の意味で使用されています。tourismは巡回や周遊といった意味を持つtourに、行動や状態、主義を意味する接尾語のismをつけたもので、観光や観光現象、観光事業といった意味を含みます。

つまり、観光という単語は元々が「光を観る」ということが語源にあるため、何か目的物を観に行くというニュアンスに近くなり、tourismというよりはsightseeingの意味に近いのです。しかし私たちが学ぶのは広い意味での観光であるので、ツーリズム(tourism)に関することです。現在の観光は本当の意味での「観光」では表現しきれないくらいに幅が広くなっているということでもあります。

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観光の定義は?

では、観光、とは具体的にどのような行動のことをいうのでしょうか。

日本における観光の定義として、1995年に観光政策審議会が、観光とは「余暇時間の中で、日常生活圏を離れて行う様々な活動であって、触れ合い学び遊ぶということを目的とするもの」と定義しました。ここで表されている様々な活動、つまり観光活動についての範囲は広く、限定することは難しいと言えます。また、この定義ではビジネスの商用旅行は観光には含まれないと読み取れますが、2000年度版の観光白書では「兼観光」という言葉が用いられており、楽しみを兼ねる商用旅行の存在が意識されています。

国際観光の分野では商用の活動も観光に含まれています。国連世界観光機関(UNWTO)では観光を「継続して1年を超えない範囲で、レジャーやビジネスなどの目的で日常生活環境以外の場所に旅行し、滞在する人の活動を指す」と定義しています。

これをもとに、日本では観光に関する統計を取る際、観光客を「ビジネス、レジャーあるいはその他個人的な目的で、1年未満の期間、非日常圏に移動する旅行者」と定義しました。また、この中でも観光を、国内居住者の国内観光(domestic)、国外居住者の国内への観光(inbound)、国内居住者の国外への観光(outbound)と細かく分類しています。さらに、宿泊客旅行を「自宅以外で1泊以上の宿泊をするすべての旅行」、日帰り旅行を「片道の移動距離が80km以上、又は所要時間(移動時間+滞在時間)が8時間以上の非日常圏への移動」と定義しています。

これらの細かい定義が世界でなされたことで、観光の概念は日本でも整理されつつあるといえます。また、これらの定義を見ても現在の観光は何か目的のものを観に行く、というよりは、「移動する」ということ全体を指していることがわかります。

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観光の構造は?

観光は様々な要素で成り立っています。観光を一言で表すとしたら「日常の生活圏を離れて行う様々な行動」といえます。そこには実際に観光行動をする「観光客」「旅行者」はもちろん、非日常体験をする観光地など観光対象となる「観光資源」それらをサポートする観光産業や交通手段も含めての「観光関連産業」、そして観光客を受け入れる「地域社会」が存在します。つまり、観光は幅が広く様々な要素が複合されて成り立っています。そのため観光に関する研究や分析は非常に難しいのですね。

中島 ゆり枝


最後に

今回はそもそも観光とはどのようなことなのか、についてまとめてみました。知れば知るほど観光事象を一言でまとめることは難しく、観光の学びの幅広さがわかりました。これから観光について学ぶ上で疑問が生まれた際は一度基礎の基礎に戻って観光とはどういうことなのか、について考えてみたいと思います。

以上、ゼミ生山本でした。ありがとうございました。

(参考文献:竹内正人・竹内利江・山田浩之編著 2018. 『入門観光学』ミネルヴァ書房.)

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