見出し画像

欅坂46新曲「黒い羊」が最高であり、難解だったのでMVの意味を追ってみた。

欅坂46は、前代未聞であり、異様なアイドルグループだと思った。

センターを務める平手友梨奈は、主演した初映画「響」にて日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。

この異様さを想像してみてほしい。

このアイドルグループのセンターは、日本の新人役者中で、最も優れた役者でもあるのだ。

-

2019年2月27日、欅坂46の新曲「黒い羊」MVがyoutubeにアップロードされた。

Billboard JAPAN 週間シングル・セールスでは、74.5万枚を売り上げ、首位を獲得した。

もはや、これまでのアイドルMVでよく見られた、「可愛さ」とか、「かっこよさ」とか、「ダンスがすごい」という要素は今作からはあまり感じられない。

純粋にキャスト全員が「曲の世界観や意味を全身全霊で伝える」ということに全て振り切っているように感じる。

MVを見終えると、まるで1本のショートムービーを見たかのような心地良い疲労感に襲われる。MVに映る彼女たちはもはや一流役者のようだ。

-

だがしかし、今回のMVもあまりに凄すぎて、結成時からの欅ファンである僕ですら、彼女たちのパフォーマンスを理解しきれず、ただ視聴後に鳥肌が立つという事態に陥ってしまった。

悔しい、悔しすぎる。MVが深すぎるのだ。

1つ1つのシーンや、幾度となくメンバー同士で抱きしめ合うシーンは一体何を表しているのか。

考えても全くわからない。

自分の理解力の乏しさに愕然とした僕は、本屋に走った。

そして、雑誌『BRODY』を手に取り、「黒い羊」のMVを監督した新宮監督のインタビュー、そしてメンバーの曲に込めた想いを読むことで、初めてMVの意味を理解し、それを表現しようとした彼女たちのパフォーマンスにじわじわと鳥肌が立った。

初見でMVの意味を真に理解するのは難しいなと思ったので、本日は、欅坂46新曲「黒い羊」のMVに込められた思いや意図をまとめてみようと思います。

※雑誌インタビュー内でも、この曲の意味を知っているのは、秋元康さんのみであり、監督や振付師、そして彼女自身も深く意味を共有されていないそうです。キャスト自身で曲の意味を理解して表現されているそうです。

そのため、本当の正解というものは秋元康さんの中にしか存在しないと記されています。なので、解説は絶対ではなくあくまで参考という前提で読み進めていただければ幸いです。

-

まずは、「黒い羊」という言葉の意味について。

そもそも、黒い羊という言葉には、「のけ者」、「厄介者」、「変わり者」という意味が含まれています。

大人になると、どうしても自分の意見を殺し、変わり者だと思われないようになってしまう。でも本当に自分の意見を殺すべきなのか?自分の中に芽生えた尊い意見を曲げるべきなのか?

アイデンティティを隠し、正直者を煙たがる絶望の世界で、私達は黒い羊(変わり者)であり続けるんだ!というメッセージが込められた曲だと僕は理解しました。

雑誌『ROCKIN'ON JAPAN 4月号』には、平手友梨奈の全26Pに及ぶインタビュが掲載されています。その中で平手さんも、黒い羊のテーマは「絶望」だと伝えています。

そんな曲の方向性を知った上で、詩を御覧ください。

信号は青なのかそれとも緑なのかどっちなんだ?
あやふやなものははっきりさせたい
夕暮れ時の商店街の雑踏を通り抜けるのが面倒で
踏切を渡って 遠回りして帰る

放課後の教室は苦手だ
その場にいるだけで分かり合えてるようで
話し合いにならないし
白けてしまった僕は無口になる
言いたいこと言い合って解決しよう
なんて楽天的すぎるよ

誰かが溜め息をついた
そう それが本当の声だろう

黒い羊 そうだ 僕だけがいなくなればいいんだ
そうすれば 止まってた針はまた動き出すんだろう?
全員が納得するそんな答えなんかあるものか!
反対が僕だけならいっそ無視すればいいんだ
みんなから説得される方が居心地悪くなる
目配せしている仲間には僕は厄介者でしかない

真っ白な群れに悪目立ちしてる
自分だけが真っ黒な羊
と言ったって同じ色に染まりたくないんだ

薄暗い部屋の明かりつけるタイミングって一体いつなんだろう?
スマホには愛のない過去だけが残ってる
人間関係の答え合わせなんか僕には出来ないし
そこにいなければよかったと後悔する

人生の大半は思うようにはいかない
納得できないことばかりだし諦めろと諭されてたけど
それならやっぱ納得なんかしないまま
その度に何度も唾を吐いて
噛みついちゃいけませんか?

No No No No
全部 僕のせいだ

黒い羊 そうだ 僕だけがいなくなればいいんだ
そうすれば 止まってた針はまた動き出すんだろう?
全員が納得するそんな答えなんかあるものか!
反対が僕だけならいっそ無視すればいいんだ
みんなから説得される方が居心地悪くなる
目配せしてる仲間には僕は厄介者でしかない
わかってるよ

La La La…

白い羊なんて僕は絶対になりたくないんだ
そうなった瞬間に僕は僕じゃなくなってしまうよ
まわりと違うそのことで誰かに迷惑かけたか?
髪の毛を染めろと言う大人は何が気に入らない?
反逆の象徴になるとでも思っているのか?
自分の色とは違うそれだけで厄介者か?

Oh
自らの真実を捨て白い羊のふりをする者よ
黒い羊を見つけ 指を差して笑うのか?
それなら僕はいつだって
それでも僕はいつだって
ここで悪目立ちしてよう

ソース・Source: https://www.lyrical-nonsense.com/lyrics/keyakizaka-46/kuroi-hitsuji/ より引用

-

では、MVについて雑誌を元に、各シーンが何を意味しているのかを紐解いていこうと思います。

まず、このMVの理解を助けるために2つのキーワードがあります。

それは、「平手友梨奈が持つ彼岸花の有無」と「階段」です。

このMVでは、平手友梨奈は手に赤い彼岸花を持ちながら表現をしています。この彼岸花にはたくさんの花言葉があります。

情熱/独立/再開/あきらめ/悲しい思い出/思うはあなた一人/また会う日を楽しみに

平手の持つこの彼岸花はMV中に、大切に本人に握られていたり、投げ捨てたり、誰かに奪われたりしています。これは、自分のアイデンティティーの保持と放棄を意味しているそうです。

彼岸花を持っているときは、自分のアイデンティティーを保持している。
彼岸花を持っていないときは、自分のアイデンティティーを放棄している。
ことを表現しているそうです。

平手が持つ彼岸花に注目して表現を追うことで、細やかな表現に変化を感じ取ることが出来そうです。

そしてもう一つの観点が「階段」です。

黒い羊のMVをよく観察すると、階段によって3つのフロアに分かれています。

1階では、平手の手に彼岸花は常にある状態。
2階では、途中で彼岸花を投げ捨て、持っていない状態。
3階では、幼少期の自分から彼岸花を手渡され、取り戻した状態。

このように、彼岸花とフロアを意識することで、彼女たちのパフォーマンスを捉えることで、MVの伝えたかった事が見えてきそうです。

では、2つのキーワードを意識しながら、MVを順に追っていきましょう。

-

まず、最初のシーン。ピアノの演奏と共に、殺人現場のようなシーンでMVがスタートしています。

しかし、この現場に死体はありません。ここでは、フィジカルな死ではなく、メンタル的な死を表しているそうです。

冒頭のシーンでは、実際の死ではなく、メンタルの死をメタ的に表現していくという意図が込められているそうです。

そして1階では、家庭崩壊やいじめ、万引きなど社会とのトラブルをメンバーが表現しています。

サビに差し掛かると、それぞれ問題を抱えたメンバーを平手が抱きしめていきます。しかし、彼女たちの主張を受け入れようと抱きしめても、受け入れられず突き飛ばされ続けてしまいます。

その中で、制服を着ていじめられていたメンバーの小林由依は、平手の思いを受け止めかけて、彼岸花を握ります。打ち解けたようにも見えますが、結局想いは届かずに離れてしまいます。

そして、様々な理由で社会から断絶されたメンバーは、逃げるかのように2階へと上がっていきます。

前述の階段の仕組みを知った上で、2階から降りてくるメンバーの長濱ねるを見ると、何かしらの問題を抱え、これからトラブルに直面していく表現をされてるのだと予想することが出来そうです。一体この手紙には何が書いてあるのでしょう。

そして、2階へとシーンが切り替わっていきます。

-

2階では、自分の主張を曲げ、社会を受け入れている表現をしているメンバーを感じることができます。

そのシーンの中で、少し異質な誕生日の温かいシーンが登場します。

このシーンは、もともと脚本にはなかったそうですが、歌詞の意味や表現をする中で、平手さん自身が必要だろうと訴え、取り入れられたシーンだそうだ。

自分のアイデンティティーを隠して自分の心を殺す時、心境の段階として、自分の幼少期を回想するシーンが存在し、やがて様々な理由とともにアイデンティティーを殺すようになるという流れがある。だから、この幸せを回想するシーンは必要だと思うと、平手自身から主張されたそうだ。

監督も悩んでいたポイントだったらしく、話し合いの上で取り入れられたそうだ。このエピソードを読んだ時、僕は彼女の才能とその主張が出来ること、欅坂チームの素晴らしさを感じることができました。

このシーンを経て、自分自身のアイデンティティーと社会との絶望に葛藤しながら、大切に彼岸花を抱えながら、地団駄を踏むシーンは彼女の高い表現力が遺憾なく発揮されていて、いつも鳥肌が立ってしまいます。

そして悩んだ末、自己主張の有無を表している彼岸花を投げ捨てて、様々な傷を負ったメンバーともう一度抱きしめ合う。

自分の主張を捨てて、彼女たちに受け入れられようとするが、またもや突き放されてしまう。葛藤しながらも、彼女は彼岸花を持たずに抱きしめることを続ける。

よく見てみると、1階で分かり合いかけた制服を着たメンバーの小林由依に、2階で彼岸花を持たずに抱きしめたときには、すぐに突き放されている。こういった些細な表現の変化も見逃せない。

やがて傷を負ったメンバーは、自らを解放するように走り出し、3階へと登って走っていく。

ちなみに本MVのメンバーの動きは特に決まっていない部分も多いそうです。特に監督や振付師である「TAKAHIRO」さんからの指示はなく、感じたまま思ったままに表現してみて。とオーダーを受けているそうだ。(本番が始まると、監督とTAKAHIROさんは大声でオーダーを伝えて何度も撮り直すそうだ。)

彼女たち自身から生まれた動き、それに対して何度もリテイクし、MVは完成させられていくそうだ。毎回ここまで表現と向き合ったら、アカデミー賞に手が届いてもおかしくないと思えてしまう。彼女たちの努力に称賛を送りたいです。いつもMV最高です。

-

3階へ上がる階段の途中、少し象徴的なシーンがある。

平手と同じ服装を着た子供に彼岸花を手渡されるシーンだ。これは紛れもなく幼少期の主張を持った平手自身であり、彼女が主張を取り戻すことを表現しているそうだ。

長いイントロの中で、アイデンティティーを再び抱え、変わり者であり続けることを決心し、このMVのラストである3階へと向かっていく。

そして、3階に入る瞬間、平手は何かを叫んでいる。これも当初の演出にはなかったそうだ。平手自身がこの曲の世界観を伝えるために、アドリブで叫んそうだ。

一体、何を叫んだのか?その答えは雑誌インタビューでも秘密です。と隠されている。

-

そして屋上では、メンバーやエキストラが一斉に踊りだす。

メンバー1人1人の動きに合わせて、平手も同調し、お互いを分かり合っていくように、メンバーと抱きしめあっていく。

お互いを知り、同調することで理解し合っていく。そうやって平手は傷ついた彼女たちを救っていく。

その中で、メンバーの小池美波だけは、唯一平手から突き飛ばしている。彼女がまだ本音ではないことを理解し、突き放して叱咤する。本音が見えた瞬間に抱きしめて理解する。このシーンはそんな視点で見ることが出来るかもしれない。

そして、相変わらず大人とは分かりあえずに、突き飛ばされる。全員とは理解し合えない。みんなと抱きしめあってハッピーエンドにならないところが、彼女たちのリアルで媚びない世界観を伝えているのかもしれない。

そして、次第に一本の線を境に平手とその他に分かれていく。

平手はその他に対して激しく踊り、自らを開示する。

絶望の世界の中で、ありのままの自分を表現し、ボロボロになりながらうずくまる平手。

そして、ありのままの自分で生きる覚悟を決め、前に進んでいく。

最終的にそんな彼女の自己開示をきっかけに、止まっていた彼女たちも前に歩き始めている。

自らを開示し、自分をさらけ出す。そして、先頭になって絶望の世界の中を、ありのままで生きていく。

彼女に引っ張られるように、少しずつ歩き始める集団。

自己開示は少しづつ何かを変得るのかもしれない。そんな後味を残してMVは幕を下ろす。

(今回MVのスクリーンショットは、以下公式動画から引用いたしました。https://www.youtube.com/watch?v=MAkIYZiyJq4)

-

インタビューの中で、新宮監督はこんな言葉を残している。

白い羊も黒い羊も、どちらにも正義がある。にも関わらず分かり合えないのは、お互いを理解しようとしないからであり、こうやって戦争が生まれていく。だから、理解を表現するために、ダンスではなく何度もハグを取り入れました。

監督や彼女たちを見ていると、アイドルのMVの常識では考えられないような取り組みが随所に散りばめられている。ダンスで表現ではなく、曲を最大限伝えるためにハグを選択しているのだ。

そして、今作は、アイドルなのにカメラにピントが合うことが以上に少ないのだ。この曲の世界観を伝えることに集中し、覚悟を持って制作されたという心意気がMVからひしひし伝わってくる。

まだ見ていない方は是非、見てみてください。

雑味のない研ぎ澄まされた彼女たちの表現はいつも本当に清々しい。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

noteを読んで頂いたあとの嬉しいことランキングTOP3 1位 あなたの感想をTwitterで見れること 正直感想みるのが最&高に嬉しいです。格別です。100%見てます。 2位 スキ 良いと思って頂けたら是非! 3位サポート 恐縮なのでもし勢い余ったら。ラーメン食べます

わーい😊ちょっと↑のサポートメッセージ読んでみてください😃
74

うすい よしき

肩書:READYFORマネージャー/Voicyジャーナル編集長/25歳 エモい感じの文章を夜な夜なゆっくり綴っています。

すきなもの

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。