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うまいチャーハンとは一体なんだろうか?

この1ヶ月、僕の頭の片隅にずっと残り続けている事がある。人間は環境や努力によって成長する。なので、仮に同じ能力の人間が集まったとしても、別々の成長課程を描くことは当然の結果だ。ではそれを、チャーハンに当てはめた時にはどうだろうか?

お米、卵、チャーシュー、葱。基本的にチャーハンのメンバーは変わらない。にも関わらずお店によって価格や人気が異なるのだ。この現象が妙に引っかかった。

本来、食材のポテンシャルには大差はないはずなのに、なぜチャーハンの価格や人気は異なるのだろうか?

お米も卵もチャーシューも葱も、環境や努力によって成長するだろうか?お米のデザイン力や卵の拡散力が変化したり、葱が急にバズって風味が増すだろうか?そう、素材の戦闘力はほぼ同じにも関わらず、この世にはうまいチャーハンと不味いチャーハンが存在するらしいのだ。

当然、職人の腕や調味料の差はあるだろう。しかし、たくさんのチャーハンを食べて職人の手つきや調味料を見る感じ、それだけでは解決できない差があると感じてしまったのだ。

うまいチャーハンとは一体何が凄いのか?この問をどうしても解決したい。この欲求によって僕の生活はチャーハンによって一変した。

僕の仮説ではチャーハンを食べることで何かが見えてくるはずだった。ご飯のパラパラ感。絶妙な味加減。職人の手捌き。うまいチャーハンとは、これだ!という法則が見えてくるはずだった。

その根拠のない自信を疑うこともなく、この1ヶ月間、行く場所行く場所で「◯◯駅 チャーハン」と検索をかける。そしてチャーハンを食べる。そして打ち合わせや仕事をする。という行動サイクルを可能な限り実践した。打ち合わせ時に僕の唇が油でキラキラしていたということは言うまでもない。

来る日も来る日もたくさんのチャーハンを食べた。本当はラーメンが食べたかった。でもチャーハンを可能な限り食べた。

でもある時その手が止まってしまったのだ。そう、僕にはチャーハンの違いが全くわからなかったのだ。いくらチャーハンを食べても素人に違いはわからなかった。分かったことは、レンゲよりスプーンのほうが食べやすいということくらいだった。

渋谷の町で途方に暮れた。僕はこのままいくらチャーハンを食べ続けたって、チャーハンの真理には辿り着けないかもしれない。だって、どんなチャーハンを食べても大差を感じられないのだから。「美味しい」以外の感想が出てこないのだから。


僕のチャーハンに対するモチベーションが死んだ。そもそもチャーハンって原価100円くらいだと思う。そもそも僕たちは650円のチャーハンに何の価値を見出しているのか?原価100円とした時に、550円に何を得ているのだろうか?

もう次で最後にしよう。もう諦めよう。チャーハンを食べ続けて、チャーハン素人の僕に何が出来るというのだろうか?これまで食べてきたチャーハンを思い出し、決意した。次のチャーハンで最後にしようと。

そう思いながら渋谷駅で「渋谷 チャーハン 名店」といつも通りグーグルで検索をかけた。そして僕は、最後の店に決めた。そこは

ラーメン王 後楽本舗

というお店だった。僕はここで僕なりのチャーハンの真理を知ることになる。


渋谷駅の井の頭改札方面に佇むラーメン王 後楽本舗。もう、佇まいからただならぬ気配を感じてしまった。そして迷わず僕はチャーハンを頼んだ。

席につくと、たくさんのメニューがあるにも関わらず、約半数の方がチャーハンを食べていた。そして僕の注文に合わせて、3つのチャーハンの注文が一斉に入ったことを覚えている。

小気味の良い中華鍋の音と職人の手捌きを眺めていると、あっという間にチャーハンが出てきた。申し訳ないが、やはり見た目はいつものチャーハンだった。何も変わらない。味だってきっと大差はないだろう。だって、チャーハンだもの。そう思って口に入れた時、僕は気分が高揚したことを覚えている。

「これは別格だ」

うまいや美味しいという感想は頭に浮かばなかった。他のチャーハンとは明らかに一線を画す味だった。別に味が大きく違うわけじゃないのだ。でも、明らかにそいつはレベルの高いチャーハンだった。

食べながら原因の究明を始めた。いったいラーメン王のチャーハンは、なんでこんなに美味しいのだろうか?食べ進めるうちにすぐ気づいた事があった。

黒い灰のようなものが所々ご飯に付いているのだ。胡椒なのか?そう思ったけど明らかに違った。焦げかと思ったが、苦味や嫌な感じが全く感じられなかった。胡椒でもなく、焦げでもなければ一体これはなんなんだ?全く正体がわからなかった。でも僕はこの黒い灰から、強烈な中華を感じたのだ。

完食した後、店員さんにこの黒い灰について聞いてみた。すると驚きの答えが返ってきた。

店員)「う〜ん、それは中華鍋の歴史かな」

僕)中華鍋の歴史!!!!

でも僕は合点がいった。僕なりのうまいチャーハンの正体がわかった気がした。


旨いチャーハンとは中華鍋の歴史である(かもしれない)

前述の通り、お米や卵など、素材の力が大きく変わらないのがチャーハンだ。チームビルディングやコミュニケーションなんて通用しない世界だ。もし、素材を活かすのであれば、それは職人の腕や調味料の違いによるものだろう。

だけど、うまいチャーハンにそれだけじゃない。そう、中華鍋だ。過去にどれだけチャーハンを作ってきたのか?作り続けてきた過去のチャーハンが、今のチャーハンの旨さに関わってくる。

原価が安いチャーハンに僕たちは何を求めればいいのか?それは中華鍋の歴史かもしれない。美味しいチャーハンを食べたくなったら、チャーハンが多く出ているお店に行くのが良いと思う。=名店に行け!なわけだが、人気があるお店が美味しいということではない。ぼくが伝えたいのは、たくさんのチャーハンを作った歴史のある中華鍋で作られたチャーハンほど、美味しいチャーハンはないということだ。


僕が1ヶ月で見出したチャーハンの真理は「中華鍋の歴史だ!」(持論)

◆番外編◆

僕はチャーハンを食べる中で、当然冷凍チャーハンも数種類食べた。中でもダントツで美味しかったのは、Theチャーハンだった。

皆様、おわかりだろうか?そう、Theチャーハンにもあるのだ。黒い灰。そう、中華の証が!!!!恐らく冷凍チャーハンで初じゃないだろうか?
ネギ油によるものなのか?それとも中華鍋の歴史なのか?それは定かではない。でも、圧倒的に美味しかった。

このチャーハンの歴史は浅いかもしれない。しかし、相当なペースでチャーハンを作っている。このチャーハンはまさに急成長している。歴史を積み重ねているのだ。

僕はこのチャーハンを自然解凍して、中華鍋で炒めて食べた。香ばしさが増してよりお店のチャーハンっぽくなる。タイミングが難しいので、冷凍のまま、もしくは少しチンしてから炒めるのがしれないが、是非機会があれば試してほしい。このチャーハンは、多分これからもっとうまくなる気がしてならないから。

店舗紹介:ラーメン王 後楽本舗 24時間営業 東京都渋谷区道玄坂2-7-4 清水ビル 1F チャーハン550円(スープ付き)


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