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音声ツールのレクチャーをしました

お誘いを受けて土曜ことばの会で発表しました(オンライン)。

以前書いた記事でWASPというブラウザで使える音声分析ツールを紹介したのですが,そのことをということでというリクエストでした。

WASPだけだとあまり時間が持たないのと,「授業で非音声学者が使う」ツールというくくりで考えても良かろうと思い,国語研のリアルタイムMRI音声データベースを一緒に紹介しました。

様々なレベルやニーズがあると思いますが,音声学を1コマでも教える教員であれば下の2つが実現できると授業の質が上がることかと思います。

  • 学生に手軽に自分の音声を見させる

  • あわよくば手軽に様々な音声を聞くだけでなく目で見せる

今回,音響音声学をやる意味を少しだけ話したのですが,非専門家の間では「音素(音声記号)は等時間」のような思い込みが多かれ少なかれ見られるように感じます。例えば/atata/と/adada/はどちらも記号で言えば5つの音からできています。しかし,時間的な実現を見ると,/t/は/d/よりも長く,2つ目の/a/は/tat/の方が/dad/よりも短くなります。

音声学・音韻論では離散的な記号と連続的な音声の橋渡しをせねばならず,その第一歩として時間的な実現を知るのは重要で,その点でやはり音響音声学は扱いたいところです。

また,実際の音声にバリエーションがあることももう少し知られてほしいところです。発音に個人差があるのは常識なはずですが,「日本語の「ん」は発話末で口蓋垂音になる」みたいなことが一人走りし,音声が一様のように受け取られているのもまた実情です。

そこでMRI音声データベースで様々な話者や環境の音を見ることで,こういった多様性とそれをどう考えるべきかという切り口の授業ができるのではないかと思います(もちろんこれそのものを研究のテーマにしてもいいわけです)。

今日の発表では語学の授業での応用はほとんど言及できなかったのですが,例えばOJADでもイントネーションを見ることができて,音声を見ることでの教育的な効果は高いと思います。

いずれも私自身の授業が関わらないのがもどかしいところではありますが,現場の方の教育改善に繋がればと思います。

余談。トークの前にドーナツを1つ食べたんですが,帰りに妙な体調不良を感じ,「この感覚は!」と思い,予備に買っておいたもう1つドーナツを食べたらすぐに回復しました。やはり研究発表はカロリーを消費しますね。

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