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大学祭で研究のアウトリーチイベントをやってみた

現職について10年,ひとまず自分の研究を進めることは基本として,研究という営みに対する社会からの見方についてもいろいろと考えることが増えてきました。たぶんきっかけは2009年にあった諸々の大型研究に対する事業仕分けだったと思います。事業仕分けの結果に対しては学会が声明を出したりするなど大きな動きもあったのですが,私としては研究のファンを増やすための活動ってたしかに少なかったもんなあというのがひとつの感想としてありました。それでなくともあまり物事を考えずに楽しそうなことに足をツッコんでしまうので,これまでも月刊ポスドクに記事をいくつか出したりしたんだと思います。

また,Twitterを見ていると秋になると他大学の特に理工系分野を中心に大学祭の研究関連の展示情報が流れてきて,正直うらやましいという気持ちになったということもあります。本学でもゼミを単位にした研究展示はいくつか出ていて,同じようにして参加する手もあるのですが,私は現在初年次の日本語科目(レポートの書き方を教える)のみ担当していて自分の研究室・ゼミがないため,別の手段を考える必要がありました。それで思いついたのが研究ポスターの展示です。この記事では2019年に企画・開催したイベント「北星アカデミックサロン2019」について備忘録ついでに簡単な報告を書いておきます。同じような企画を考えている方の参考にでもなればと思います。

場所を探す

大学祭の出店は場所によって集客が大きく変わることはほぼ確実だと思います。通常,研究展示は大学の教室を借りて行うのですが,教室はわざわざ来ないといけません。もちろん好きな方であればすすんで見に来てくれるのですが,今回はそれよりも特に関心を持ってない方々(嫌いな人ということではない)に研究を届けたい。さてどうするか…?それで目を付けたのがセンター棟という建物の1階です。

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このスペースは普段国際ラウンジという留学生との交流に使われることが多いのですが,大学祭の期間はほぼ休憩所になっています。その一方で2階でピア・サポーターが縁日もやっているのでそれなりに人通りもあります。ということで,この建物を使用することに。

ポスターを集める

もともと数年前からぼんやりと企画していたときから基本はポスター展示にしようと決めていました。ポスターパネルは星学祭本部で貸し出しているのでそれを利用したのと,会場にちょうどいい大きさの吊りパネルもあったのでそれを利用しました。

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ポスターは研究内容の紹介または専門分野の紹介ということにして,ポスター発表の経験者には使用したポスターの再利用(現物・データいずれでも)もOKにしました。その一方でポスター発表という形態は学会によってはまだ浸透していません。そのため,参加のお誘いをするときに特に慣れていない人向けに以下のケアをしました。

テンプレートの提供 テンプレートとしてPowerPointファイルでA0の縦長・横長に設定したファイルを作成し提供しました。分かる人には分かると思いますが,このテンプレートは伝わるデザインにあるものがベースになっています。

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ポスター作成のお手伝い としてはポスターにする内容を整理するために研究の話を聞く,作ってもらったポスターのデザイン修正,原稿と写真からポスターの作成まで行いました。こうやってケアを充実させることで敷居を下げることに繋がったのではないかと思います。

来場者とのコミュニケーションを付せんで

学会でのポスター発表と違ってコアタイムどころか来場不要(来てもらうのは歓迎だけど)としたので,来場者とコミュニケーションをとる手段がありません。そこで会場のテーブルやポスターの近くに付せんをたくさん置きペンを用意して自由に質問や感想を書いてもらえるようにしました。これは一定の効果があったようで,ポスターによっては5枚ほど貼られていたと思います。

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これは京大100人論文にあったアイデアを頂いています。

トークも企画しちゃった

当初はポスターだけ置いておこうと思っていたのですが,それだけじゃという思いもあり別の企画も盛り込みました。ただ基本は休憩所でもあるので,使いづらくしないようにミニセミナーと称して会場の比較的端にある大型モニターを使ったトーク企画にしました。他にも国立情報学研究所がオープンハウスでやっている研究100連発(もとはニコニコ超会議ですね)やサイエンス・カフェも考えましたが,まだそこまで練りきれないと思ったので結局時間を30分と決め,その間の使い方はお任せしました。集客に不安もあったのですが,開始時にちょっとした呼びかけをしたり,いなくても始めてもらうことで結果として最大で10名前後の集客がありました。

セミナー

セミナーは教員のもののほかに,学部学生のグループによる発表もあり,これはこれでいろいろなタイプの研究紹介ができたんじゃないかと思います。

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他にいろいろできるかもしれない

このように「とりあえずやってみた」企画ではありますが,幸い大学広報にも紹介されたり,何人かの同僚にも来てもらったりといいスタートが切れたのではないかと思います。セミナーも会場にある大きなスクリーンを使っても良さそうな雰囲気ですし,もっといいやり方がありそうです。余裕があれば続けていきたいですね。

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