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楽曲の元ネタを探っていく聴き方ってもうしないのかな?

これは「音楽について Advent Calendar 2023」の9日目の記事として書かれました。

音楽の聴き方っていろいろありますが,90年代にフリッパーズ・ギターにはまり,小沢健二・コーネリアスのふたり,ブリッジ,スパイラル・ライフ,中村一義,などを聴いていきました。ちょっと知ってる人だとこのあたりは渋谷系にまとめられると思います。もっとも私自身は東京にいた22年で渋谷には3回ぐらいしか行ってませんが。

渋谷系の特徴としていろんなジャンルの洋楽からモチーフだったり楽曲の一部を持ってくること(引用)が多くありました。私は当時『クイック・ジャパン』を好んで読んでいたので,『前略 小沢健二様』(厳密にはその前にあったクイック・ジャパンの特集だと思うけど覚えてない)で元ネタの存在を知り,そういう作り方があるんだということに意識的になりました。この辺は後発の『渋谷系元ネタディスクガイド』の前書き(村田知樹氏)を紹介するのがいいでしょう。

 美術でも映画でも文学でも、パクリってのは存在する。どんな表現でも、過去の作品を参考にして、新しいモノを作りだすってことは、洋の東西を問わず、ずーっとやられてきたことだ。
 それは、特に一時期「渋谷系」と括られた音楽では顕著だった。
 『前略 小沢健二様』という800円本のシリーズで、ボクはPWM-MLの仲間に協力してもらって、プリッパーズ・ギターのネタをできるだけ詳しく解説した記憶がある(この本にあるコーネリアスのリストと、ピチカート・ファイブのネタを開設したリストの多くも、そのPWM-MLによるもの)。
 その『前略 小沢健二様』が発売された当初、「こんなにいろんな作品をパクってるなんて、ショックです!」ってなお便りが来るんじゃないかって心配してた。それは……ボクらの伝えたかったこととは違うから。でも、ほとんどのお便りは、ボクらの意図を充分すぎるほど汲んでくれた。
 「ネタを聞いてから、フリッパーズ・ギターでも小沢健二でも、ホントにオリジナルな音楽なんだってわかりました!」そう、ボクらが伝えたかったことはこういうことだった。引用があっても、それを上手に料理していれば、素晴らしい作品になりうるということ。そして、逆にそのネタを輝かせることにもなるということ。それが伝わってうれしかった。
 また。ネタを知って、それを聞き込むことで、新しい音楽へと興味がどんどん広がってくこともあるだろう。ソウル~フレンチ~ボサノヴァ~ソフトロック……ボクたちもそうやって音楽の幅を広げていった。今は、そういった意味でも、彼らの音楽に感謝している。この本を出すことになったキッカケは、こんなところだ。
 今回はもちっと幅を広げて、「渋谷系」といわれるミュージシャンを全体的に扱っている。そりゃ、使ってるネタもワケも、各々いろいろあるんだろうけど、それは各章で書いてくれてるから、ここで述べることはしない。ただ。この本に書かれている音楽を全部…...いや、半分でも聞いたら、キミの目の前にまた新しい何かが広がっているということだけは約束しとこう。
 この本を出したことで、ボクらはもうネタ探しの旅ってのをあらかた終えてしまった。今は、新しい音楽の聞き方が、少しだけ見えてきたところだ。この本を読み終えたみんなにも、そんな地平が見えればいい。そう、信じている。

『渋谷系元ネタディスクガイド』

つまり新しい音楽を聴くための取っかかりとして元ネタがある,もちろん元ネタから作った音楽もすばらしい,わけです。

もちろん常に元ネタは何だろうという聴き方をするわけじゃないですが,たまたま聴いた洋楽に「もしかして?」なんてのがあると嬉しくなります。

上の本にたぶん載ってないで私が気づいたのだとカジヒデキ「ラ・ブーム~だってMY BOOM IS ME~」(1997年)の冒頭部分(この曲は広末涼子が(さらに)話題になったドコモのCMで流れてたやつです)。

Ben Folds Fiveというバンドにある「Julianne」(1995年)のやはり冒頭部分。

速めのテンポで8分音符で連打するみたいなのはありふれたものかもしれないし,Ben Folds Fiveの方にだって元ネタはきっとあるでしょうけど。

で,世の中的にはもうYouTubeだのサブスクだの音楽をある意味で無制限に聞けてしまう時代なので,きっと最近の楽曲の元ネタなんてのもいろんなところに情報があふれてるんだろうと思ってたんです。

が,検索しても出てこないこと。僕はあまり洋楽に詳しくなく,それこそ上の本にあったようなのを聴いていたので,ハロプロでもback numberでもYOASOBIでもサカナクションでも韓流グループでも,音楽好きが元ネタを解説してくれていたりするなじゃないかと期待していたんですが,そうでもないんですよね。

上の引用にもあるように,元ネタは音楽の幅を広げるには格好の材料で,サブスク全盛の現代にあった能動的な音楽の聴き方になるんじゃないのかなあ。

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