武磊留洋!エスパニョールへ

1月28日、スペイン1部リーグのRCDエスパニョール(RCD Espanyol)は上海上港から武磊(Wu Lei)の加入を発表。背番号は24

現時点の報道では契約期間は2年+1年延長オプション、移籍金などは明らかになっていない。

■経緯、背景

1991年11月生まれ現在27歳の武磊、上海上港の下部組織出身で14歳10か月で上海東亜(当時)で3部相当の中乙リーグでプロデビュー。2013年に上港が中超(1部)昇格以降6年間でリーグ戦102得点を記録、6年間全て二桁得点&中国人選手得点王。そして2018年は29試合27得点を記録しリーグ得点王&MVPに輝き、同年上港のリーグ初優勝に貢献した。上港ではリーグ戦通算296試合151得点、公式戦通算344試合169得点。2010年にデビューした代表では63試合15得点

因みに2018年中超得点ランク上位を見るとイガロ(ナイジェリア代表)バカンブ(コンゴDR代表)ジエゴ・タルデリ、アレシャンドレ・パト(元ブラジル代表)グラツィアノ・ペッレ(元イタリア代表)...

またリーグMVP最終候補に残ったのは武磊以外にレナト・アウグスト(北京国安)パウリーニョ(広州恒大)共にW杯出場したばかりの現役ブラジル代表

こんな面々を押しのけてのリーグ得点王&MVP。以前から欧州移籍の話はあったが武磊は「育った上港でタイトルを取るのが先だ」と明言、昨年リーグ戦でそれを実現、キャリア絶頂のタイミングで有言実行となった。


■エスパニョールのメリット

エスパニョール(中国語・皇家西班牙人)の筆頭株主は中国企業の星輝互動娯楽(Rastar Gr)、2015年末にエスパニョールに出資しその後筆頭株主に。同社CEO陳雁升(Chen Yansheng)がクラブオーナー、はい中国資本の企業によるスポンサー主導の移籍です。ただ中国人選手の高騰もあって、逆に言えば中国資本のクラブでないとそこまでして獲らない側面もあるだろう。

陳氏は以前から中国人先週獲得意欲を明言しており、既に下部組織には張奥凱(Zhang Aokai)が在籍している。同じ中国資本のウォルバーハンプトン等と共に移籍先の候補にはあがっていた。

■移籍金、待遇

中国では選手の年俸は公開されておらず、各種媒体などの推測によれば武磊の上海上港での年俸は少なくとも1000万人民元(1.6億円)に加えてクラブからのボーナスがあり実際はその倍近くと推測される。

エスパニョールが同額を支払うのは現実的でなく年俸ダウンは濃厚。だが代わりに肖像権が武磊自身に帰する契約となり、これで元を取れるとされている。

https://sports.qq.com/a/20190129/002329.htm

↑こちらの報道によると移籍金200万€(2.5億円)未満、年俸年俸100万€。中国人選手の移籍金高騰や武磊の市場評価額は350万€とされている点を鑑みれば上海上港が妥協したことは間違いない。年俸100万€も武磊の現行給与半減とも思われる。中国では選手の年俸は公開されておらず、各種媒体などの推測によれば武磊の上海上港での年俸は少なくとも1000万人民元(1.6億円)に加えてクラブからのボーナスがあり実際はその倍近くと推測される。

この情報の信ぴょう性は不明だが、いずれにせよ年俸ダウンは確実。一方で肖像権が武磊自身に帰する契約となり、これで元を取れるとされている。

一方エスパニョールとしては気軽な投資ではないはずで、戦力以外に商業面のメリットを見込んでいるのは間違いない。

因みに移籍発表前のエスパニョールTwitterアカウント @RCDEspanyol フォロワー数は11万人だったのが、移籍発表後28日夜には39万人と3倍以上に膨れあがっている。

また移籍発表後、星輝娯楽の株価は8%上昇している。

■展望

ポジション争いとかプレイ云々以前に手術とリハビリをせねばならない。

武磊はアジアカップ初戦のキルギス戦で左肩を負傷も、テーピングや痛み止めで粘り準々決勝まで計4試合でプレー。

・・本人の意思なのか,リッピらの要望か,または協会の圧力か,の議論はしないが上海上港やその時点で移籍大方確定していただろうエスパニョールとしてはこの決断に納得がいくはずがない。負傷が武磊のプレーに影響しアジアカップの出来は満足できるもので無かった。エスパニョールと契約後、ドイツで手術その後リハビリを行うため数週間から一部報道では3か月程度離脱とも言われる。もっと早く手術に踏み切ればもっと早く復帰し戦列に加われただろう。

一部報道ではエスパニョールの要求もありアジアカップ同様に強行出場する選択もあるが、軽易な怪我でないし、既に無理してきた点も鑑み、これ以上無理すべきではないと思うのだが・・

  現在15位エスパニョールのフォーメーションは4-3-3、9得点上げてるCFイグレシアス(Borja Iglesias)が絶対的エースであるが彼への依存が大きく両脇のルイス・ガルシアとレオ・バプチストンは得点数も伸び悩み満足なパフォーマンスとは言えず、両脇のどちらかと競争の余地ありか。なおスペインリーグはEU外選手枠制限あるが、エスパニョールに在籍する6人の外国人はいずれもラテンアメリカの選手で、2重国籍または3年以上在籍しEU内扱いとなっているため、この面の障壁はない。

中国人選手のスペイン1部リーグ移籍は張呈棟(Zhang Chengdong)以来、2015年夏に北京国安からのレンタルでラージョ・バジェカーノ(Rayo Vallecano)に加入した張はポルトガル、ドイツでのプレイ経験あり、語学力あり、様々なポジションをこなせる選手だが、彼もまたスポンサー絡みの移籍で、以下の通り監督から評価を得られず半年で中国に帰還。本人の努力から終盤に監督の評価を得てリーガ1試合、カップ戦3試合に出場したものの成功とは言い難い。

二人はポジションも違うし、状況も違うし、まあ何が言いたいかというと結局監督次第としか。そのためにも早く負傷を直しチームに合流して欲しい。

ただ少なくとも武磊は現役中国人No.1選手であり、彼が成功できなければ他の選手が欧州で成功することはもっと困難と言える。

日韓W杯前後は楊晨(フランクフルト等)孫継海(マンチェスターC等)李鉄(エバートン等)邵佳一(1860ミュンヘン、コットブス等)ら欧州1部リーグで活躍する選手も多かったが、中国代表の低迷と国内リーグの高騰化でめっきり代表クラスの欧州移籍は減ってしまった。5大リーグ1部リーグで言えば前述の張呈棟以来。ウォルフスブルクに半年在籍した張稀哲(Zhang Xizhe)、オランダリーグへてWBAに加入した張玉寧(Zhang Yuning)は怪我等もあって公式戦出場0に終わった例もある。武磊が久々の成功例となることを期待。

■上海上港

国有企業をバックに潤沢な資金力誇る彼らに移籍金のメリットはあまりない。中超王者としてリーグ戦とACLを戦う彼らの戦力的損失は大きい。自国代表エースの代役を見つけるのは容易ではなく、中国人選手高騰の現状では内部昇格が現実的だが、戦力ダウンは避けられないだろう

その状況でも武磊の欧州移籍を認可した上海上港の勇気に拍手したい。目先の利益等に拘り選手を放出したがらないクラブが多い中で、素晴らしい。ネット上の情報では他にも上港所属選手が欧州移籍する可能性がある。

例えばセレッソ大阪が香川を欧州に送ってから清武、乾、柿谷、南野と排出したように、上港も後進が出てくるはずだ。上港以外のクラブも選手を拘束することなく積極的に海外移籍を容認し、後進が育ち中国サッカー全体の底上げがなされることを期待する。


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