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救急救命士おすすめの3冊

月末に消防学校へ救急科の講師として出向します
その時の資料を昨日作ってましたが
自己紹介としておすすめの本を3冊紹介するので
その内容を抜粋して書き記しておきます
とても充実した内容なのでもう読んだことがある方もいると思います
まだの救急隊員も救急救命士の方がいましたらぜひ手に取ってもらえたらと思います


エマージェンシー臨床推論

望月礼子医師が書かれた医師向けの本です
僕がこの本を買った理由は
主訴から考えることを重きにおいていたからです
救急患者さんは病名をぶら下げて待っていてくれません

60代くらいの女性が事務室に来て

「すいません、旦那がちょっと・・・」

と慌てた様子で言われ、通信指令センターに駆けつけがあった旨を電話し
すぐに奥さんの元に向かいました

その日、僕は消防隊長でした
救急隊は出場準備をしていましたので
先に傷病者の初期評価に着手しました
車の助手席で座位、会話可能、意識レベル一桁、末梢冷感あり、橈骨動脈触知可能
「30分前から突然、胃の辺りが重苦しいです。冷や汗もかいてきました」
とのことです
さて、何を考えますか??
その後、救急隊長に引き継ぎ、車内活動を手伝いました
血圧測定、サーチレーション、12誘導心電図
収縮期血圧190台、サーチは100%、心電図ST変化なし

そこで病院選定し始めたので
僕は車から降り手伝いを終えました
直近医療機関は消化器でした
受け入れ可能ということで収容

その後、大動脈解離ということで3次医療機関へ転院となりました

この本は大動脈解離を見逃さないようになるための本でもあります
めまい、背部痛、胸痛、片麻痺、腹痛、頭痛、意識消失
いろんな症状があるけど大動脈乖離を忘れないようにしましょうということです

もちろん他にも非典型的な症状についての詳細な記載もあり大変参考になった本の一つです

レッドフラッグサインについて学びたい場合に特に適した本になっています
医師向けの本ですが、救急救命士なら面白く読める内容です
救急隊員向けのシリーズも出版されています

洞察力で見抜く急変予兆〜磨け!アセスメントスキル

ポケットサイズで持ち運びもしやすいです
もちろん現場に持っていくことはないですが、病院収容の後にすぐに振り返ったりもできるのではないでしょうか
急変予兆という言葉に反応して購入しましたが
本当に役に立った本です

医療機関へ搬送中、急変してしまい心肺停止に至ることはあります
しかしその予兆が分かれば、慌てずに対処できることもあると思います
僕たち救急救命士は心肺停止前に静脈路確保をすることができたり
酸素投与などの処置をすることができます
しかしその予兆を知ることがないと
手遅れになる可能性もあります
平均血圧が何を意味しているか理解して評価している救急救命士はどれだけいるでしょうか
脳神経の観察を自信を持って的確に行える救急隊員はどれだけいるでしょうか
救急救命士の再教育の実習でERで行われている治療や検査について理解できていますでしょうか
もしそうじゃないとしたら一回読んでみてもいいかもしれません
この本は youtubeの動画とも連携していて、本の内容を補完することができます
しかも動画の本数は300本以上です

70代男性、朝から右足が動かない旨通報
現場到着すると布団の上に長座してました
意識レベル清明、バイタルに異常なし
右足が動かないだけでその他の所見はありませんでした
「うーん、病院どうしようか」
単麻痺だけだとホットラインの基準を満たしていません

そこで足の裏をボールペンでグリっと擦り上げると
足の指が開きました
救急隊長と顔を見合わせ
すぐに脳疾患対応ホットラインに連絡、搬送が決まりました

バビンスキー反射を見逃さず観察できたのはこの本のおかげです

もし上記の対応に不明点があればこの本を読む価値はありそうです

他にも情報収集要領や患者さんとの関わり方について
看護師の目線で書かれています
それは救急隊にとってもとても参考になるものです

さらに主要な疾患の解説や検査についても詳しく触れています

この本で観察力をかなり上げることができたので
うちの職場では他にも数名すぐに買って同じような観察、考え方をできるようになりました

ナインデイズ 岩手県災害対策本部の闘い

悩みましたがこの本を選びました
救急科の講義での紹介ということでこちらにしました

というのもこの主人公の医師は
救急隊員標準テキストの編纂者の筆頭になっている方で
現在第5版になっていますが、防衛医大に所属してるようです

僕が消防学校の救急科や救助科に入校した際には
実際に講義に来てくれました

その時はまだ救急隊員標準テキストは第3版で
その第3版への熱い気持ちを講義で語っていたのはとても印象深く記憶に残っています

東日本大震災から13年が経とうとしています
当時、消防職員として活動した消防士は救急科の入校者にはいないはずです

おそらく、中学生や小学生で、まだ消防士になるとなんて思ってもみない年齢だったと思います
もちろん、その震災がきっかけで消防士を目指した方もいるかもしれません

そして、東日本大震災について所属する職場でどのように伝えられているか定かではありませんが
僕の所属では表立って、どんな活動をしてどんな反省点があったかというような内容の話をする時間をとっていることはありません
大切なことのはずなのに

今後同様の災害に遭うかもしれないですし
応援に行く立場になるかもしれない
そういう意味で伝承してい可なければならない事柄なんだと思います

そしてその時、どんな災害でどんな課題があったのか
それを知るためにこの本がとても役に立つと思います
ただ漫然と知りたいっていうレベルではなく
この県ではどんな対応があって、どんな課題があったのか
ということを知った上で自分たちの組織がどうだったのか
自分たちの組織がどうあるべきだったのか
そのように考えられる消防士になって欲しいです

ノンフィクションでとてもリアルな内容になっています
出版されてすぐに買いました

この3冊を選んだのは救急救命士として
救急隊員として
そして消防士として
身につけれる知識やスキル、考え方が散りばめられているからです

月末に講義をする際、言葉にしてこの内容を伝えようと思います
まだまだ若い職員に伝わるように工夫して
いい講義にできればと考えています

読んでいただきありがとうございました

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