私、『悪い先生』になりたい。(Re:Re:シンコンセプト)


たばこのみ

たばこを吸う人のことを、たばこのみという。
と、言うのを知ったのは奥田民生のツアーグッズの灰皿とライターにプリンティングされていたからだ。

好奇心と多少の興味と周りの家族の影響で吸い始めたタバコは長い習慣になっていたが、新しく始めた投薬治療に影響を与えると聞いてきっぱりとやめた。
確か来年の一月で三年くらい禁煙してることになる。久しぶりに会う友人は私が喫煙所を求めてウロウロしないことにあまりにも驚きすぎて別人かと思ったらしい。  

たまに、シーシャを吸いに行くことはある。初めてシーシャ屋さんに連れていってもらったのはガールズのるつたさんだった。
香りと風味の豊かさにすっかりハマって一人でも仕事帰りに立ち寄ることもあれば、時間潰しにショートで入ることもある。
「シーシャは大人のおしゃぶりですから」
というるつたさんの言葉に納得しながら私は香りのする煙に夢中になっていた。 

たまに、思考をするときに紙巻きタバコが恋しくなる時もある。
さすがに今の家の契約に禁煙が掲げられている以上、また別のフロアにお子さんがいることも考えると蛍族も出来まい。
自制しながらこうやって文章を書く。傍らに紙巻きたばこがあった時は時折手を止めて深く肺に煙を吸い込むだけで徐々に文章の中に没頭できる気がしていた。

不良になりたい

鏡を見る。金髪が伸びてプリン部が長くなっている。
来週には染め直しに行くからと弁明を述べているがおしゃれを通り越して不良の域に達しているなとしばらくの間美容室に行くタイミングを数度逃してしまった事を後悔している。

るつたさんと再びのシーシャ会をして試着の旅を終えて買い物袋を片手に家に帰ってから自問自答をして買った服とそれ以外の服を完全に仕分けた。
数えてみると気に入った服は全シーズン合わせて20着。そのほとんどが真っ黒。
明日から20着だけで過ごせと言われても大丈夫。
どれも社会に迎合しているようでしていない服ばかり。
会社員らしい服、ではない。だがこれを仕事に着ていこうとしている。し、着ている。

昨年末恐る恐る染めた金髪はいつの間にか一年掛けて馴染んできた。
いつも出勤の度に特殊な服を着ていて金髪にしている人。
それが今の会社内での私。

先生という人生

私の主要な仕事を端的にまとめると人前で、時にはオンラインで企業向けの研修講師をしている。
「先生」というイメージを考えた時に真面目な服を着なければと思いながら服を集めていたがそのほとんどは最近私の手によって捨てられてしまった。

先生の服、20着、どこかがおかしい服ばかり。
……それの何が悪いのかしら。

大学時代にお世話になった先生方は「圧」が強かった。
(学科の特色が出ていたのかもしれない、とあきやさんには伝わるかも)
白髪のおかっぱで眼鏡が特徴的だった先生。
黒髪のおかっぱで常に黒い服に身を包んでいた先生。
(おかっぱ率高いな、なんでだろう)
他にも色んな先生はいたが学科で有名人で王道を歩く人たちはみんなかっこよかった。その分、ひどく厳しかった。
卒論発表会でやりあったのも上記のおかっぱ2先生とだったなあ。
ピリピリしたけど自分の一年かけた考えをぶつけてしっかり反論して貰えるのは気持ちよかった。

うちの学科の先生と喫煙所ではち合ったことはないからたばこのみの人はいなかったのだろう。
お酒を酌み交わすことも無かった。
ただ真面目に学問に向き合ってる人たちだった。

今、『先生』と呼ばれる立場になってみて思う。
教えることに真面目に向き合うことは当たり前だけどどんな先生も強い個性を放っていた。
「そりゃ、私みたいに学生に手本を見せる必要がある立場だったら別ですけどね」
学校で講師をしている後輩がそう前提を置いてから私に話してくれたことがある。
「姐さんみたいに大人を相手にする先生なら、何着たってどんな髪型にしたって全然いいんじゃないですか」
言われてみれば確かにそう。
髪を色とりどりに染めている友人Sは
「私ら技術職は髪が何色だろうが服が何だろうが評価なんて変わんないよ」
と今月も髪の色を変えている。

じゃあ私はどんな先生になりたいんだろう。

Re:Re:シン・コンセプト

『正しい行き先を照らしてくれる、悪い先生』

教えるという仕事はちゃんとやる。
真面目な人には更に伝える。
だが寝ている生徒や内職している生徒は無視して先に進んでいく。
自分のペースで勝手に進むそんな先生。

だけどその代わり髪も服も勝手にやらせてもらう。
アクセサリーだってごてごてにつける。
たまには退廃的にシーシャでチルってもいいだろう。
酒が飲めないだけで大人の味わう一定のほの暗いことは粗方経験している先生。

今日買ったリミフウの春物ジャケット兼ボレロを着た自分を見てそんな妄想が湧いてきた。
式典でつまらなさそうに体育館の天井に収まったバトミントンのシャトルを見て「(ねむ……)」と思っているような、周りのペースに合わせられない、黒一色の服を着た先生。

「あの先生さあ、変だったけど面白かったよね」
「あの先生苦手、すぐに先行くし」

私の好き嫌いが大きく分かれていていい。
ただ進むべき道だけはしっかり照らすように教えてはいる。
だからそれを信じてほしい。

『照らす』ことは前のコンセプトから引き継ぎました。

あのとき、卒論発表会で戦った諸先生方にはまだ敵わないですが
似たような職業になって、こんなことを考えるようになりました。
あなた方の個性に負けないような我を持った先生に、私もなりたいです。
それをまずは、服装で表現……する前に自己研鑽しろ、ですよね。

はい!承知しました!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?