「ひとつの真実」

それは ある晴れた日のことだった
見知らぬ 男からの 一通の手紙

なんでもないの なんでもないのと 言い聞かせて

お気に入りの窓から 見える景色に
隠され続けてきた ひとつの真実

歪んでゆく 崩れてゆく
夢から覚める間際のように

思えば あのとき あなたはどこにいたの
思えば あのとき あなたはなにをしていたの

今さら そんなこと 言われても
確かめるすべなんて どこにもないわ

そのときは それが 当たり前だった
あなたは自由な人 そして無口な人

なんでもないの なんでもないのと 言い聞かせて

写真のあなたが 表情を変えてゆく
記憶を書き換えてゆく ひとつの真実

あるべきはずの姿に ベールを剥いでゆく

思えば あのとき あなたはどこにいたの
思えば あのとき あなたはなにをしていたの

今は もう昔
私の知らない あなたが 生きていた

言えなかったのかしら 言わなかったのかしら
美しいままで 心に残りたかったのかしら

それとも だれかを 守りたかったのかしら

思えば あのとき あなたはどこにいたの
思えば あのとき あなたはなにをしていたの

何度 尋ねても あなたはこたえてくれないわ

思えば あのとき あのやさしさは本当だったの
思えば あのとき あの言葉は嘘だったの

そこにいるあなたは 一体 だれなの？

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