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エッセー

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記事一覧

ご縁のメンテ

 2020年に西暦が変わった。新しいカレンダーをビニールから出して壁に貼る。

 ハワイの実家にいる親友が、日本時間0時に電話をかけてきた。日本語で「あけまして、おめでとうございます」と懐かしい声が聞こえる。ハワイは朝の5時だったのだけど、なんで起きてるの、何してるの、と聞くと「日本時間でお祝いしたかったから」とくすぐったそうに笑うので、目の前に彼がいないことが悔やまれた。窒息しそうなほど抱きしめ

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大晦日、ファミマにて

三日月が弓だったら、金星をまっすぐ撃ち抜けるような澄んだ夜だ。視界も良好。明日から便宜上新しい年となる。人間が制定したタイムゾーンによって一年は365日に分けられ、一時間は60分として一応みんながそれに従っている。人間の作り出したシステムなのに、なんだかありがたがっているのが不思議だ。天邪鬼の私がなんと言おうとともかく、明日は新しい年。今日は大晦日、ニューイヤーイブである。大晦日は家族で集まって過

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無題

 大学2年の時に書いたエッセイを発見した。その当時の私の人生の流れや、置かれていた状況を詳細に書かれたその文章を読みながら私はだらだら泣いていた。今更思い出さないような日々がそこにはしっかり形を残していたのだった。書き留めることをしなければ消えていってしまう日々だ。ドイツにいた頃は、何かあるたびに書き留めていて、それが最終的には卒業制作にまで昇華されたわけだけど、日本に帰ってきてからはそれをずっと

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Nothing's eternal

 初めて死という概念を直接体験したのは小学2年生の頃だったか。飼っていたハムスターが朝突然動かなくなり、学校から帰ると死んでいることに気づいた。それが私の人生において初めての死だった。泣きながらかごの前に立ち尽くし、このままここに置いとこうよ、という私に母は「死んじゃったら体が腐ってきちゃうから。悲しいけど、お庭に埋めてさようならをしよう」と牛乳パックを渡してきた。母はそれに小さく丸まって硬くなっ

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案外めちゃくちゃ幸せに生きている

案外めちゃくちゃ幸せに生きている

 アホみたいに忙しい日々を過ごしている。新規事業の立ち上げのバイト、留学生向け授業翻訳バイト、ウェブデザイナーのインターン3つ掛け持ちし、ボランティアで絵を描き、週4で学校にも行って3つの課題を同時進行でこなしている。画面を見すぎて頭がまあまあ痛い。帰りも遅い。でも毎日めちゃくちゃ楽しい。

 友だちは今まで通り少ないし、英語はオーストラリア訛だし、アメリカ人留学生に「は?」と言われることも多い。

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自殺について

自殺について

涼しい夜なのでよかった。

ここには書かないが、超2018年的な悩みと、超旧時代的な悩みのハイブリッドで心のバランスを崩し、医者からもらった小さな白い粒をとりあえず口に含んで、泣きながら家を出た。ワイヤレスイヤホンで音楽を爆音で聴きながら、ベッドタウンの住宅街を声を上げて泣きながら歩く21歳の女である。自分がどこに向かっているのかよくわからないが、最近行き始めた心療内科の方向だった。あら、随分遠く

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アンハッピーアニバーサリーおよびリレーションシップ2度目の月命日

 まだ2ヶ月しか経っていない。

 ってこれ書いたことあるな一回。付き合って2ヶ月の時だっけ。私たちのリレーションシップが死んでから、2ヶ月がたった。奇しくも、私たちのリレーションシップは、それが始まった記念日に命日となった。でも英語では命日も記念日もAnniversaryだから、私の人生は誰か、割とチャーミングな、それでいて遊び心のある人が脚本を書いているのではないかとすら感じ始めた。

 それ

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「向こう側」に行きたい

 人生は選択の連続である。道は常に二股に、またはいくつかの道にわかれ、私たちは常にどちらかを選択している。そして同時にどちらかを選択しないという選択をしている。選択は枝分かれし、すっかり幹から離れた場所に来てしまった。

 選ばなかった方を選んだ自分が遠くに見える。何の選択が私をここまで運んだのだろうか。コンビニで唐揚げを買わなかったからか、それともバス停についた瞬間にちょうどバスが来たからか、そ

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見えない壁を殴っていた話

見えない壁を殴っていた話

  Mさんと茶店で落ち合う。突然バカみたいに冷え込んだ春の日。桜ももうとっくに散り、渋谷の駅前の寂しい桜もすっかり緑に戻ってしまった。半年ぶりに会ったMさんは、Mさんらしさをアップデートしながらも結構印象が変わって、ますます洗練された印象だった。

  Mさんは個人的に慕っているデザイナーの先輩であり、お友達だ。とても成熟した考えを持っていて、はっとさせられることも多い。

 それに対して私はとい

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「自分の人生を生きて」ってふられたのでそうする

「自分の人生を生きて」ってふられたのでそうする

 前のnoteでも書いたけど、Sちゃんにふられた。

 簡単に説明すると、人生のタイミングが合わなくなった。

 Sちゃんが働きながら大学に入り直すことになり、生活費だけでカッツカツになるので海外旅行、つまり私に会いに来ることはできない。私も大学にあと2年は通わないといけないし、日本で就職すると思う。私がオーストラリアに行ってもいいけど、実家暮らしとはいえ学生だからそんなにしょっちゅう行くことはで

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恋人と別れることになりものすごくブログを書きたい、しかし開設すらできないでいるのでnoteにとりあえず書くことにした。

恋人と別れることになりものすごくブログを書きたい、しかし開設すらできないでいるのでnoteにとりあえず書くことにした。

 Sちゃんと別れることになった。

 'It's a long story' (話すと長いのよ)という感じなんだけど。気が向いたら書きたい。ブログを開設したいんだけど、ワードプレスがエクストラのお金を請求してきて、もう挫折。そんなこんなしながら、もう外は暗い。

 先日、オーストラリアのシドニーで三週間ほどの時間を過ごした。観光地巡りをしようとすると途端につまらなくなるシドニーの、郊外のSちゃんの

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好きな人とセックスしたのに気持ち悪くなって吐いた話

雑記。書きなぐり。書かないとやっていけなかった。

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ヌーブラのゆくえ

好きだった子と会ってきた。予備校時代からの友達で、大学も同じだ。私から展示を見ようと誘ったのだ。単純に、友達がいないから。ダメもと。そう思っていたのに彼女はあっさりオーケーした。人前でご飯を食べるのをあきらかに避けていた彼女が夕食も一緒に食べようと言い出したのは不思議だった。私たちの関係性も多分変わったのだろうと思う。彼女は複雑な色のカラーコンタクトを付けた目をくりくりさせながら話す。お金が欲しく

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2017年、「経血は赤い」という告白

2017年、「経血は赤い」という告白

 イギリスの広告界で初めて、生理用ナプキンの広告で「青い経血」の代わりに赤い液体が使われた。動画はこちら。

 母がつけっぱなしにするテレビの中では流行りのモデルが生理用品をポーチから取り出し、開いたものを顔の近くで持ち、その製品の薄さを存分にアピールする。CMの中でそれらが受け止めるのは、「青い経血」である。モデルは生理について具体的なことは一切述べずに笑顔を絶やさず、白いボトムを着たお尻を突き

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