なぜ政府は困っている人を助けないのか

全国旅行支援が始まって1週間が経過した。筆者は開始直後からフル活用しているのだが、そのあまりのメリットに困惑している節すらある。例えば1日3000円支給される現地で使えるクーポン、東京ではチェックアウト日が使用期限になっており、食事に使うにしても全く追いつかず、なるべく高くて量の少ない店を探すのに血道を上げている有様である。さらに「〇〇%ポイント還元」という施策を行っているOTA(Online Travel Agentの略でオンラインの旅行代理店を指す)も多く、これを併用するとマイナス価格(支払った額より戻ってくる額の方が多くなる現象)での宿泊が可能となる。

過去GoToトラベルという政府主導の施策が展開されていたが、コロナの拡大で停止されていた。また国民一人あたり10万円を支給する一律給付も実施された。そして今、全国旅行支援が展開されたが、野党が主張している国民一人あたり10万円再度給付するインフレ手当についての続報はない。

予想通りと言うべきか、こういう施策が展開されると「旅行に行く余裕のある人を支援するなら本当に困っている人を支援すべきだ」という主張を目にすることになる。今回に限った話ではないが、基本的に政府が支援策を打ち出すと、その支援の対象になっていない人から苦言が噴出する。

なぜ政府は一律給付ではなく旅行支援を優先させたのか。国民視点ではなく政府側の立場にたって考えてみると
・国民に10万円配っても効果が薄かった。
・観光業を支援したら効果があった。

こういうことだったのだろうと容易に想像がつく。
国民に現金を渡しても経済に寄与しなかった一方、観光業を支援すれば企業が潤い、従業員が潤い、循環が発生した、と。当然それはそうである。生活にすら困っている層を支援しても新たな消費は発生しないが、観光を支援すれば旅行するつもりがなかった層もそれをきっかけに旅行に行くようになる訳で、そこに新たな消費が発生する。政府としては限られた予算をなるべく効果の見込める分野に投下しようと考えるのは必然、外国人観光客を積極誘致する方向に舵を切った今、観光業に息切れされては困るという意図もあったかもしれない。

逆に考えると、10万円が支給された際に国民が総出で新たな消費行動をとっていれば効果ありとみなされ早々に再支給されていた可能性もある。しかし実際には貯蓄や普段の生活費に使われて新たな消費は発生しなかったという推測はおそらく間違いないだろう。

なぜ政府は困っている人を助けないのか。口には決して出さないが本音は「困っている人を助けても効果なし。無駄だ。」という判断なのではなかろうか。
日本は確実に格差容認社会に移行しつつある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?