平等病棟

「産婦人科で性行為の経験を聞かれたけど相手は同性、どう答えればいいの?」|平等病棟24時


看護師の目から見た医療現場と、マイノリティの生きやすさ・生きづらさにスポットを当てたコラム、第2回のテーマは、レズビアン・バイセクシャルのシスジェンダー女性が産婦人科で遭遇しやすい困りごと。

「Q、産婦人科で
“性行為の経験”を聞かれたけど
相手は同性、
どう答えればいいの?」


平等病棟24時
著者|木村映里


「性行為」の定義

「性行為の経験はありますか?」「最後に性行為をしたのはいつですか?」
産婦人科を受診してそう訊かれて、答えに詰まったレズビアン、バイセクシャルの女性はいませんか。

セックスしたけど相手は女性だし妊娠の可能性はないから性行為はないって言っていいのか、でも彼女の指は膣に触れたしどうなんだろう。数年前に出来心で一度だけ男とセックスしたのをいまさらカウントに入れるべきなのか、でも言いたくないなあ。なんて悠長に考え込む時間を目の前の産婦人科医はくれないし、医師から当然のように投げられる質問は、「性行為」の定義は何なんだと、レズビアンやバイセクシャルを唐突に混乱に巻き込みます。

また、レズビアンやバイセクシャルの産婦人科での困惑といえば、パートナーと子どもが欲しい、妊娠・出産というものも大きく関わります。現在、同性パートナーシップ制度の取り組みが進められているとはいえ、同性婚が完全に認められているわけではなく、レズビアンカップルの子どもや精子提供をした男性の法律的な立ち位置も定まっていない状況では、レズビアンカップルの妊娠出産にどのように医療が関りを持つかを検討するにあたり、複数の課題を超える必要があります。

今回は、看護師である私を含む、シスジェンダーのレズビアン、バイセクシャル女性が産婦人科で遭遇しやすい困りごとに焦点を当て、どのように医療と向き合えば戸惑いを最小限にしながら病気や困りごとの解決ができるのかを検討していきます。


婦人科疾患として受診する場合

産婦人科を受診する理由は大きく分けてふたつ、婦人科疾患もしくは妊娠・出産に関する受診です。

生理周期の乱れ、生理が来ない、経血の量が多いあるいは少なすぎる、生理痛が強い、陰部が痒い・痛い、不正出血がある、おりものが増えた・色や匂いが気になる、等々婦人科の悩みで産婦人科を受診する場合、問診表に書くか直接訊かれる形で確認されることは、冒頭に書いた通り「性行為はありましたか?」です。女同士のセックスをどう伝えれば良いのか、というか伝える必要があるのかと、この質問に困ってしまったことは私自身何度もあります。

例えば性器からの不正出血がある、という理由で受診したとしましょう。医師は原因として、心配しなくて良い程度のホルモンバランスの乱れから、性感染症やポリープ、がん、子宮膣部びらん、異常妊娠(通常妊娠したら生理が止まりますが、早流産や子宮外妊娠といった理由での出血が起きる場合がある)などを考え、診察の中で可能性を絞っていきます。

異性間でのセックスであれば妊娠の可能性がある一方、同性間のセックスであれば、妊娠はありえません。一方で、膣の状態によっては指や何か道具の挿入による刺激で出血することがあるので同性間のセックスでも膣からの出血の可能性はあります。また、性感染症に関しては、粘膜同士での接触やオーラルセックスで感染することがあるのでひとまず可能性としては残ります。そんな風にして何種類もの疾患から状況に合う病気を取捨選択していきますが、それぞれの選択肢をどの程度現実的な可能性として考えるかは、内診や超音波検査、血液検査といった、問診以外の診察も総合して考えます。

不正出血以外の他の症状に関しても、異性間での性行為だからリスクが上がるものも、女性同士の性行為でもリスクがあるものも存在する上に、性行為が原因となる可能性を持ちつつも性行為がなくても起こり得る症状もあります。その辺りに関しては完全に専門医、プロの領域ですから、患者側が、「こういう症状だからここまで話そう」という自己判断をしてしまうのは危険です。

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暮らしに関することを、いろんな人にたずねて、話してもらうクラスです。 2018年11月から小さな編プロが編集業務の部分を引き継ぎました。手の空いた人がほかの仕事のあいまあいまにお手伝い編集をするし、話してくれるみなさんも仕事のあいまに話してくれるので、のんびりしています。

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