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ビデオ世代の自分探し

題名 「ビデオ世代の自分探し」
放送 NHK BS1 世界のドキュメンタリー
制作 Yuzu Productions フランス 2017
概要
・イタリア・フィレンツェで映画監督を目指すのアレッサンドラと、ジャーナリスト志望のケイシーの2人の15年にわたるセルフドキュメンタリー。

・フィレンツェで偶然同居人となった2人は意気投合するが、ケイシーはカタールの放送局アルジャジーラに就職し映像ジャーナリストに。アレッサンドラはドイツの放送局でドキュメンタリーディレクターになる。

・ケイシーは放送に使わなかった撮影素材を15年にわたりアレッサンドラに送り、スカイプなどで近況報告をしあう。それぞれの人生観は、当初からどう変わっていくのか。

感想
例によって調べてみるとこの2人にはその後があって、現在は2人で映画会社を設立している。それが制作の欄にあるYuzu Productionsだ。HPに日本の柚子のロゴが刻まれているのがなんだかほほえましい。(なぜか柚子と命名)

15年の「旅」の中でケイシーの様々な言葉が印象に残る。最初は目を輝かせてジャーナリストの世界に飛び込む。それもイラク戦争の報道で大活躍したアルジャジーラ。ガザ地区で寝泊まりしている映像では、夜中のミサイル着弾音が生々しく聞こえる中で、「今ミサイルが2発着弾した」とリポートする姿は第一線のそれだ。しかし、少しずつ何かが変わっていく。
医療が十分に受けられないために幼い命の火が消える瞬間を目の当たりにするケイシー。彼の言葉が変わっていくのは、その後のことだ。

最近どうだい?と聞くアレッサンドラに「よく分からない。旅ばかりで自分が行くところなのか帰るところなのかさえ分からない」
その後2人でアメリカのホームレス事情を取材をした時には、「分かっただろ?僕の仕事は他人の人生に入り込んで、去っていくの繰り返しさ」
そして、15年後。彼からの最後の取材テープが送られてくる。「これが最後。アルジャジーラを辞めた。これまでずっと色んな人々の人生に寄り添ってきた。これからは自分の人生を生きる番だ」

何だか分からないが、とても共感した。「自分の人生」という言葉に。記者をしていると本当に他人の人生の事ばかり考えていると思うことがある。それもよいことばかりではない。私のつたない経験の中でも、親しくしていた知人の死をニュースで報じなければならないことがあり、それはとてもつらかったし悩んだ。伝えないという選択肢は選べない。記者は「自分が主人公になれない物語」をいつも生きていると感じたこともある。

そんな人生の変化をともに過ごしてきた2人が、15年分の映像をもとに立ち上げた映画会社がYuzu。ドキュメンタリーを中心にすでに30本もの作品を作ったという。何ともドラマティックな話ではないか! 彼らが今、自分の人生の主人公になれた喜びの中にいることを願わずにはいられない。

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