こんばんは。

上野由岐子さん、西矢椛さん。連日、「日本代表」の方々には、心から感動をもらっています。

もちろん、感染だ、なんだとあって、別に自分たちがコロナを生んでいる訳でもなんでもないのに、何か肩身の狭い思いをしながら、インタビューを受けていても、まずは「開催を許してくださり」みたいに言わないと、誰かは分からない誰かに許してもらえない。

そんな中で、だけど「メダルは取ってこい」みたいに無言の要求をされている。あるいは「五輪に興味ない」と、同じ日本人から言われてしまう。上野さんたちも、いじめっ子に囲まれているみたいで、針の筵というか、島国の村八分的な視線にさらされることもあって、辛かったと思います。

それはさておいて。２７日に行われたソフトボール決勝、上野さんに対する言説をめぐって、わたしは、本当に腹立たしいです。

それは、上野さんを語るときに、常に「３９歳」という表現をセットにしている、メディアやコメンテーターの姿勢です。とくに誰とは言いませんが、本当にみっともない言動だと思います。

この「３９歳なのにすごいね」という感覚って、いったいどういう思考回路から出て来るのでしょう。「３９歳の挑戦」みたいな言い回し。

それって「３９歳になったら、人間にスポーツをしたり、五輪に出るような可能性なんてない」という「決めつけ」とか「固定観念」だと思うんです。

たとえば「８０歳の挑戦」とかならまだ分かります。「８０歳なのにすごいですね」とか、すごく実感できます。わたしの父、７０代で認知症になりましたから。

でも、３９歳って普通じゃないですか。これって「４０代になったら、まあこんなことしかできないよね」みたいな、そもそも「決めつけ」から発した言葉だと思うんですよね。そういう言葉を発する人は、なにより、自分自身がそういう人間なんだと思います。あるいは、そんな人しか身近にいなかったんだと思います。４０代。疲れやすい。何もできない。だからすごい。

でも、３０代でも４０代でも、出来ることは出来るし、１０代だって２０代だって、出来ないことは出来ないと思うんですよね。自分がそういうことをして来なかっただけのことで、してきた人には出来るんだと思います。

カゼインフリー、グルテンフリー、糖質制限、ケトン代謝、毎日水６ℓ、白米とトウモロコシ、パンの禁止。鳥ささみや肉の推奨。こういう食生活を本当に徹底して、ちゃんと筋肉も鍛える。そうやって飛んだり跳ねたりしている４０代の動画なんて、たくさんあります。

結局のところ「４０代はこうあらねばならぬ」なんて、「女はこうあれ」だとか「日本男児たるものこうあれ」という思考回路と同じなんだと思うんですよね。自由を許さない。何か理想像がある。

どこかで聞いたか忘れましたけど、「高齢出産」という言葉があるのって、先進国では日本だけだそうです。「年取ってる＝何もできない」。結局は、こういう発想がこびりついているんだと思うんですね。

逆もそうです。

西矢椛ちゃん。彼女は１３歳ですけれど、「１３歳なのにすごいね」とか、必ず言われているけど、これだって彼女にしてみれば「できるんですけど」という話だと思うんですよ。

つまり、「１３歳＝まだ幼い」みたいな考えと、「幼い＝何もできない」という考えがくっついているから「１３歳なのにすごいね」という発言になって出て来るんだと思う。これも固定観念だと思います。

人間は無限の可能性がある、みたいに言っておきながら、返す刀で「４０代はもう終わってる」とか「１０代だから出来るはずない」みたいなことが、思考の根っこにあるんだと思うのです。

耳障りのいい言葉が上滑りしてしまって、実際にはそんな考えは、少しも持ってない。だから「わたしってバカだからさ」とか言っておきながら「お前は馬鹿だよね」と言われると、きちんとカチンとする。思ってもいないなら言わなければいいのに。

結局、テレビのアナウンサーやコメンテーター、番組を構成する人たちは、ほとんどが「３９歳は何もできない」「上野さんは３９歳」「上野さんは何もできない」みたいな、固定観念に満ちた三段論法で考えていて、そのことを逆説的に「だから上野さんはできるからすごい」みたいに言っているだけなんですよね。

でも、それってモノの見方がものすごく差別的で、「アラフォー過ぎたら、人に可能性なんかありゃしない」という、社会的な思考構造になっている気がするから、ものすごく怖い。

上野さんや西矢さんが、どう頑張って来たのか。ただただ、それだけを純粋に見てあげられない社会って、ものすごく怖いと思うんですよね。

五輪そのものにも賛否両論があるんでしょうけれど、五輪に出場した選手へどのような言動が発せられたか。それ自体にも、すごく注意深く見ていないと、きっとこれから先、取り返しのつかない恐いことになると思うんです。