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ミーターの大冒険 第九部 エピローグ 第12話 ダリバウ(Daribow)

194第12話ダリバウ(Daribow )
ミーターの大冒険
第九部
エピローグ

第12話 ダリバウ(Daribow )

あらすじ

 ファウンデーション暦491年(西暦25058年)末、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号は太陽系の第4惑星の火星でついに、待望のダニール・オリヴォーに面会できた。

 それからダニールの月面基地から地球の放射能除去溶液と装置の準備を調(ととの)えて地球に降下して行った。

 人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
 
 かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。

 R・ミーター・マロウは、不死の従僕ダニール・オリヴォーに助けられて、主人アルカディアの志しをいまや成就させようとしていた。

 彼らの地上での行動はミーターは別として、2時間と制限されていた。

 そのイルミナのリードによって北上したアース・オービターは、無事にニフのフニ山頂上に着いた。

 放射能除去に必要なポニェッツ仕様のラヴェンダーエキスとオーストラリア産のデオライトの混入液を水蒸気発生装置でフニ山頂から昇化させ、地球上の各地山頂から同様に実施させていった。

 案の定、双子座流星群は降ってきた。この年は例年とは違い、幸運にも何ヵ月も継続した。

 流星群は成層圏に拡散している特殊水蒸気の雲に注ぎ、水蒸気を雨化させ、地上に雨を降らせ始めた。

 ミーターは、北アメリカ大陸の頂き、南アメリカの頂きを踏破し、残りのアフリカ大陸、ユーラシア大陸、オーストラリア大陸をも踏破していった。

 その間にイルミナは、アルファのモノリーさんのお土産である粉末の分析が完了していた。

 その粉末の正体は、ナノサイズに加工した地球上のほぼ全種類の植物の種だった。雨が降れば、地球の緑化が再生する。

 ミーターがその特殊蒸気発生機の最終段階で、かつてオーストラリア大陸と呼ばれていた地域のタウンゼント山頂で早朝シルクベットから起き上がった時だった。しっかりとして威厳のある響きが頭上からあった。

 ダニールはミーターに、2つの任務を依頼した。

 地球の古代の伝説「ノアの方舟」にあるような大量な雨が1ヶ月以上も地表に降り注いだ。

 その結果、大気中の放射能濃度は、驚くほど減少していった。

 1番目のダニールからの任務依頼を終了後、約束していたミーターはニフの中央東に位置する海岸から切り立った小高い山頂に夜明け前に到着した。

 そこにダニールとペイリー・リャン(当時19歳)が待ち受けていた、3人は、海中から浮かび上がる緑色の光を目撃する。

 それからほどなく、東の水平線上に陽が昇って来た。

 ダニールは、ミーターに「カビレ」の本当の意味を解き明かす。そして地球放射能除去の段階の終了を宣言する。

 ダニールはミーターに養女ペイリー・リャンをミーターにファー・スター2世号の新メンバーに加えてもらうよう頼む。

 彼らは、アルカディアの残りの悲願に向かってファー・スター2世号に改めて乗り込む。

 ミーターは、自分の胸ポケットの秘密を隠しながらも、ペイリーのイヤリングに注意がいく。

 ペイリー・リャンはまた彼女の名前の由縁も解き明かす。

 そこから、イルミナの歴史消滅以前の情報量が異常に増えはじめ、またたくまに全銀河の図書館にそのデータを拡散させていった。

 イルミナの歴史消滅からの復興という大事業の伸展の裏で、彼女のホントの正体を遠回しに吐露する。

 ミーターは、それに知ってか知らずにイルミナに向かって、「アルカディアの魂君」と呼んだ。

 新たな旅がはじまろうとしていた。
 このとき旅には小さな夢も、第一歩からはじまって、次の一歩を踏み出すのも「真摯さ」が大事であろう。
 しかし、それは素晴らしい旅となることには違いないが、その旅には終わりがあろうともなかろうともそれを一歩一歩味わうことに意味がある。
 彼らの帰途、ガール・ドーニックの故郷惑星、シンナックスに立ち寄り、3人(?)は、長旅のバカンスを取ることにした。

 そして、彼らの帰途、ターミナスに悪い予感を抱いた3人は、もうひとつの惑星に下船した。

 ファウンデーション暦493年、ミーター、イルミナ(?)、ペイリーはターミナスに着いた。ジスカルド・ハニスとは地球への音信以来連絡が途絶え、ターミナス全土を探したが、見つけられなかった。

 アルカディア農園は無事だった。ハニスとコンパーが上手に政府の力から手練手管で守っていたからである。

 代理人としてジム・ヘンダーという50代の男が農園を維持していた。

 ミーターは、ジムの履歴正体をつまびらかにする。

 後日、二人はターミナスのアルカディア記念博物館に隣接しているサルヴァー・ハーディン博物館にムン・リー・コンパーを変装して訪ねた。ヘルダーを通して申し合わせしていたからである。

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コンパー 無事でなにより!ミーター君、君は全銀河の誉れだ!君の8年間に亘る数々の武勇伝は大まかにハニスさんから聞いている。
 ご苦労様です。
 
 そちらが地球の衛星から来られたペイリー・リャンさんですね? ようこそターミナスへ。宜しくお願いします。私が、ムン・リ・コンパーです。

 第2ファウンデーションを代表して第1発言者からの伝言をあなた方に伝える。

「今回のあなた様のご活躍によってセルダン・プランが本来の大筋に戻れました。篤く御礼いたす。そしてこの銀河の歴史消滅結束点以前の全歴史が復活し始めました。このことはそのままドーニック・プランの完成への緖に就くことを意味します。今後は、どうにかして第1ファウンデーションが我らを敵視から連合への転換によって全銀河の福祉と豊かさを造り出して行きたいものです。それともう一つのグループともに。」

 あなたたちの活躍については詳しくはヘンダーから聞いてます。
 あらためてご三人に感謝いたします。もっともイルミナちゃんはここにはいませんけどね。

ミーター 畏れ多いことです。こちらこそ、過分なご謝意、ありがたいことです。

 ところで、ハニスさんのことが心配です。
 ハニスさんの行方についての新しい情報はありませんか?

コンパー 僕は一ヶ月前にダリバウにいたハニスさんから伝言をもらって以来、連絡は途絶えています。

ペイリー ダリバウ?

ミーター ターミナスからほぼ50パーセクの離れているスミルノに近い惑星です。

 そこでハニスさんは地下政治活動をしていたんですね?

コンパー そうなんだ。僕はブラノとコデルらの取り締まりが以前より一層厳しくなるから、一旦中止した方がいいと言ったりもしたんだが、ハニスさんの信念を変えられなかったんだよ。
 すまん、ハニスさんを守れなくて。

    ・・・・・・・・・・・

ミーター ペイリーさん。ここは2つの行動を同時に進めなくてはならなくなったみたいだね。

ペイリー わかりました。そういうことですね。
 それにしても、何ですか、あのムン・リーとかいう人のスタイルは?
 ほかのターミナスの人たちとは全然違うんですね!
 いけすかないわね。「イルミナちゃん」とか言っちゃって!
 男のくせして女のような風体、ブロンドの髪を長めにウエーブして、瞳は青く、それに眉の下にも青のアイシャドーなんか塗って!

ミーター そう言わないで、ペイリーさん。ハニスさんからの報告では、わざと目立つようにしているみたいですよ。政治家を目指しているらしいからね。それに彼はシリウス星系のコンポレロンの出身だからね。ここ保守的なターミナスでは、そういう自意識が必要なんだ。

ペイリー そうかしら?でもイルミナさんに「ちゃん」はないですよね。

ミーター イルミナの完成にはコンパーさんの尽力なしでは不可能だったんだ。
 ペイリーさん、そう言わないで、もう少し彼を理解してみてくださいよ。

発展しつつあるターミナスの首都モーヴ(Mauve)

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