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ミーターの大冒険 第九部 エピローグ 第10話 全体主義からの克服

192第10話全体主義からの克服
ミーターの大冒険
第九部
エピローグ

第10話 
全体主義からの克服

あらすじ

 ファウンデーション暦491年(西暦25058年)末、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号は太陽系の第4惑星の火星でついに、待望のダニール・オリヴォーに面会できた。

 それからダニールの月面基地から地球の放射能除去溶液と装置の準備を調(ととの)えて地球に降下して行った。

 人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
 
 かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。

 R・ミーター・マロウは、不死の従僕ダニール・オリヴォーに助けられて、主人アルカディアの志しをいまや成就させようとしていた。

 彼らの地上での行動はミーターは別として、2時間と制限されていた。

 そのイルミナのリードによって北上したアース・オービターは、無事にニフのフニ山頂上に着いた。

 放射能除去に必要なポニェッツ仕様のラヴェンダーエキスとオーストラリア産のデオライトの混入液を水蒸気発生装置でフニ山頂から昇化させ、地球上の各地山頂から同様に実施させていった。

 案の定、双子座流星群は降ってきた。この年は例年とは違い、幸運にも何ヵ月も継続した。

 流星群は成層圏に拡散している特殊水蒸気の雲に注ぎ、水蒸気を雨化させ、地上に雨を降らせ始めた。

 ミーターは、北アメリカ大陸の頂き、南アメリカの頂きを踏破し、残るはアフリカ大陸、ユーラシア大陸、オーストラリア大陸をも踏破していった。

 その間にイルミナは、アルファのモノリーさんのお土産である粉末の分析が完了していた。

 その粉末の正体は、ナノサイズに加工した地球上のほぼ全種類の植物の種だった。雨が降れば、地球の緑化が再生する。

 ミーターがその特殊蒸気発生機の最終段階で、かつてオーストラリア大陸と呼ばれていた地域のタウンゼント山頂で早朝シルクベットから起き上がった時だった。しっかりとして威厳のある響きが頭上からあった。

 ダニールはミーターに、2つの任務を依頼した。

 地球の古代の伝説「ノアの方舟」にあるような大量な雨が1ヶ月以上も地表に降り注いだ。

 その結果、大気中の放射能濃度は、驚くほど減少していった。

 1番目のダニールからの任務依頼を終了後、ミーターは、約束していたミーターはニフの中央東に位置する海岸から切り立った小高い山頂に夜明け前に到着した。

 そこにダニールとペイリー・リャン(当時19歳)が待ち受けていた、3人は、海中から浮かび上がる緑色の光を目撃する。

 それからほどなく、東の水平線上に陽が昇って来た。

 ダニールは、ミーターに「カビレ」の本当の意味を解き明かす。そして地球放射能除去の段階の終了を宣言する。

 ダニールはミーターに幼女ペイリー・リャンをミーターにファー・スター2世号の新メンバーに加えてもらうよう頼む。

 彼らは、アルカディアの残りの悲願に向かってファー・スター2世号に改めて乗り込む。

 ミーターは、自分の胸ポケットの秘密を隠しながらも、ペイリーのイヤリングに注意がいく。

 ペイリー・リャンはまた彼女の名前の由縁も解き明かす。

 そこから、イルミナの歴史消滅以前の情報量が異常に増えはじめ、またたくまに全銀河の図書館にそのデータを拡散させていった。

 イルミナの歴史消滅からの復興という大事業の伸展の裏で、彼女のホントの正体を遠回しに吐露する。

 ミーターは、それに知ってか知らずにイルミナに向かって、「アルカディアの魂君」と呼んだ。

 新たな旅がはじまろうとしていた。
 このとき旅には小さな夢も、第一歩からはじまって、次の一歩を踏み出すのも「真摯さ」が大事であろう。
 しかし、それは素晴らしい旅となることには違いないが、その旅には終わりがあろうともなかろうともそれを一歩一歩味わうことに意味がある。
 彼らの帰途、ガール・ドーニックの故郷惑星、シンナックスに立ち寄り、3人(?)は、長旅のバカンスを取ることにした。

 そして、彼らの帰途、ターミナスに悪い予感を抱いた3人は、もうひとつの惑星に下船した。

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ミーター イルミナ、どんな国も政府も最初は高邁な理想を啓蒙して国民の幸福に寄与するけど、それが時とともに国や政府の横暴が目立ってくる。国全体の保全を重視して、個人の自活を保障するように見せかけて、個人の権利を剥奪してくる。
 他方、国民一人一人は、全体の保全にかこつけられて、一個の歯車のひとつとしてみなされ、使い捨ての部品のように磨り潰されて、消耗品化されてしまう。

イルミナ 仰る通りですね。ハッキリ言って、今のファウンデーションは、往時のインドバー政権より悪質だわ。まるでおとぎ話に出てきた世界でしたわ。
 科学力と軍事力によって、他の星々に圧力をかけ、おおっぴらに星々の人々から生産利益を収奪するようになってきてます。
 恥知らずで嘆かわしいことだわ。
 こんな状態で、銀河の復興、混沌からの回帰などできやしないわね。まるで真逆な圧政です。

ペイリー ファウンデーションのトランターってもっと人々が幸せに過ごしてる世界だと思っていましたが、実際はそうでもないのですね。
 ミーターさん、どうされますか?
 わたしたちができることなにかありますか。

ミーター ペイリーさん、そんなに焦っても。
 俺らがここヘリコンに来たのは、まず、その権力志向の実体を根本から凝視して、それからしかるべき戦略をたてることからはじめなくてはならないんだ。
 あのハリスさんも何度も失敗したからな。
 慎重に進めなくてはならないんだ。

イルミナ そうですよね。武力による解決では、かえって状況は悪化して、もともこうもなくなりますからね。
 それで、ミーターさん、ここで、この乾燥した惑星に降りて、何か気がついたことがおありですか?

ミーター うん、この乾燥しきった環境からハリ・セルダンは、なにを考えていたのであろうか。水資源の豊富さと、緑の大地、密林のような生物多様な世界を夢想していたに違いない。
 極度に少ない生産手段から、知恵のかけらを拾い集めて、広大な発展の構想を練る。

 イルミナ、ハリの心理歴史学の根底を支える発想について、それはどうだったか、参考になる理論や逸話かなんか知らないか?

イルミナ そうだわね、確か、ハリ・セルダンは長い心理歴史学の構築のあと銀河復興の戦略的段階のはじまりとして、当時発見されたばかりの銀河辺境の端のまた端に心理歴史学の本拠地を設立することを思いつきました。
 それは、当時の圧政者であったリンジ・チェンの思惑を逆手にとった兵法を使ったと記録されてます。

ミーター その兵法とやらのからくりの中身は?

イルミナ 相手の「虚」を衝くという行動よ。
 正確には「虚を敢えてつくりだす」っていう手ですね。

ミーター 具体的には、どうやって?

イルミナ チェン家は代々、銀河帝国以前から宰相を出す家系だったそうよ。
 そしてその初代先祖のリンタイ・チェンが、かなり凄いやり手だったとの言い伝えがありますよ。
 ガールの記録にも、「かれのとった策略があまりにも奇抜過ぎた」と残ってるわ。

ミーター だから、どんな手を使ったんだ?

ペイリー ミーターさんたら、ご自分を棚に上げてますよ。もっと冷静に、冷静に。

ミーター すまん、そうでした。

イルミナ リンタイ・チェンは当時の専制全体主義のある大国に対して憎しみを抱いて相当苦々しく思っていました。
 彼はひとつの戦略を立てて、ひとつずつその計画を進めて行きました。
 まず、二つの行動を同時に行って、ひとつはその国のトップに近い地位まで進みます。もうひとつはその国に隣接する島に密かに潜りこんで、その島の島民を誇りのある自由で民主制のゆき届いた豊かな理想的状態にもっていったのです。

 そしてその大国に、隣の島を占領する絶好の機会だと思わしめて、侵攻させたのです。
 その時の世界の国々は、その大国に反旗を上げてその国との貿易を中止したのです。
 その大国は突然、経済的にも行き詰まってしまいます。
 そして占領された島へ、流入した大国の人たちは、今までの生活がどれだけ惨めで、国から圧政を受けてきたかをかえって知るようになったのです。
 また島の住民は大国に入って、彼らの自由でおおらかな暮らしぶりを大いに宣伝して回ったものですから、その後、しばらくしてその国に民主化の革命が起きて、あっという間にその全体主義の専制国家は滅んだ、というのです。
 
 その方式を、ファウンデーション=ターミナスは同じく進めた、という具合だったのです。

ミーター なるほど、そうだったのか?
 じゃあ、基本的には今回もこの手を使えばいいんだな。

イルミナ ええ、原理的には、そうですね。

ミーター 少し長い期間が必要だなぁ!

イルミナ そうですね。でも工夫次第で期間を短くできるかもしれませんね。

ペイリー 面白がってはいけないことはわかってますが、実際、面白いわね!
 そうとわかれば、今度こそターミナスに直行ですよね。もうここの埃まみれの気候はまっぴらごめんですから。

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