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前世は紙魚

うだうだと這い回るように、紙の上の文字を指でなぞって読む。
貪るようにインターネットに溢れる文字の奔流の中を泳ぎ進む。
私の主食は実は文字だったのではないか?と思うほどに、文字を読まねば物足りなさ、ひいては息苦しさを感じるような人間である。

紙魚(しみ)という虫がいるのをご存知であろうか。私は大して紙魚ちゃんに詳しいわけではないのだが、紙魚とは書いて字のごとく、紙を好んで食べる害虫である。梅雨の季節になると発生しやすく、本やダンボールなどを食い荒らしてしまうのだとか。
私はゴキブリすら発生したことのない母によって驚くほど美しく管理された実家で生活していたために紙魚ちゃんにすらお目にかかったことは無いのだが、初めて紙魚という存在を知った時には震えたものである。紙魚が食うのは紙、そう紙なのだが、紙の表面を這い回って印字されたところが読めなくなる様はまるで文字を食っているようではないか。

まるでその姿が、書かれている事柄を理解し、概念ごと食べてしまうロマン溢れる妖怪のように見えたのだ。私には。
お前の概念の内側にはどれほどの意味が詰まっているのだろうね。
それに私の脳みそが追いつく日は来るのだろうかね。

それまでは私も貪るように、飢えを癒すように、文字の波の中に揺られていたいと思うのだ。

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