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何もかもが一度きり

「初めて」の経験は一度しかない、なんて当たり前の話。生まれて初めて食べたものがめちゃくちゃ美味しくて、同じ味を求めて探し回っても最初の感動に敵わないなんてこと、珍しくもなんともない。
二度と元通りになれないこと、なんて一度きりだ。
だけど、人生で何度か経験することであっても、1回目、2回目、3回目はそれぞれ1回きりしかないんだよねって、それも当たり前の話。

同じ場所に何度も行くことがある。
例えば千葉にある夢の国とか。
初めて行ったのは3歳のとき。楽しみすぎて当日大熱を出してしまい、ベビーカーに載せられ冷えピタを貼って連れ回された。あんまり覚えてはいないが、朧気に剽軽な犬にお手手をぎゅっと握ってもらった記憶がある。
その次はたしか6,7歳のとき。あんまり覚えてはいないんだけど、まだ小さな従姉妹が一緒だった。祖母の家に当時の写真が飾ってあって、確かにそこにいたのだと感じる。
その次は15歳のとき。中学校を卒業する記念に連れていってもらった。夢の国の地図が読めるようになって、自分の要望が出てきて食べたいものや乗りたいものを色々リクエストした思い出がある。当時持っていたゲーム機と、お下がりでもらったデジタルカメラの両方で園内の写真を色々撮ったのがまだ残っている。
その次は17歳のとき。高校の修学旅行で、半日自由に夢の国で遊ぶスケジュールだった。当時一番仲の良かった友人3名と連れだって高校生らしくはしゃいだ思い出は、今でも大切なものだ。
その次は、22歳のとき。これは大学卒業のタイミングで、まだ行ったことのない宇宙庭園の案も出ていたけれどやっぱり行くなら夢の国がいいと私が自分で望んで連れていってもらった。
過去に積み重ねたいくつもの思い出が私を何度でもそこへ向かわせる、しかし私はそのどれもが全く違う体験であることを全身で知っている。
年齢も、一緒にいる人も、時間も、乗れる乗り物も、食べるものも、私の服装も、気持ちも、価値観も、何もかもが違う。全ては一度きりなのだ、だとしたら、当たり前のようにやってくるように感じている毎日の繰り返しもすべてが一度きり、だから本当は小さなシワを手で伸ばすように大切に生きたい、生きたいんだけど。
人間ってそこまで器用じゃないからね。

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