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外資に転職してよかったこと

 大学の教職員という特殊な仕事を除くと、最初は外資企業で働き、その後日系、すぐにまた外資へと移ってきた転職マン、いづつです。いやもう、古い企業にいると簡単に腐りますよ。もう二度と古い日系企業には戻れないなとすら思います。

 もちろん全ての企業をその資本だけで単純カテゴライズはできませんが、同じような転職経験者たちや転職エージェントたちに話を聞くと似たような見解が聞けるので、だいたい合っていると思います。ざっくりその傾向をまとめましたので、転職活動の参考にどうぞ。

■外資企業のここがいい

(1) 価値の低いことをやらない、やらせない

 言い換えるとコスト意識があるということ。「利益=収入ー支出」という当たり前のことが常に全員の念頭にある。人件費ってのは安くないのです。仮に利益率がプラスであっても値が低いと改善もしくは取引ストップがかかります。小さくてもプラスなら続けてもいいじゃないかと思いがちですが、代わりにより値の高い活動に置き換えろということ。これもひとつの人材の有効活用です。おかげでつまらない仕事がとても少ない。

 やることを探し回るマネージャーより、やらないことを決めるマネージャーのほうが価値が高いですね。やらない理由をわざわざ探すのは悪いことですが、やる理由がないものをやらないと決めるのは良いこと。

(2) 仕事は与えず、責任を与える

 ゴールだけ示されて、手段は問わないという考え方。責任さえ明確なら、自ずと意味のある仕事だけが自然に作り出されるものです。おかげで全社的に無駄が少ない。マネージャーは部下の手段についてあれこれ細かく関与しません。しかし、それを実現するためには納期、コスト、品質の3点セットとこれらの優先順位を必ず伝えてください。臆病なマネージャーほどこれらを決められず、結果部下に任せることができません。

 この方法は使いどころが肝心で、新規や臨時の件にぴったりハマり、一方でルーチンワークには向きません。この働き方ができる人というのは実はそんなに多くないので、人材集めの時は、こういう自分で決めることができる人を選びましょう。

 私はルーチンワーカーを歯車型、委任型ワーカーを駒型と勝手に呼んでいます。一定の動きしかできませんが、同時に余計なことをやらかさない歯車。個々特徴の異なる動き方ができ、適所にそれを配置できるかどうかが肝要の将棋の駒。古い日系企業は歯車の扱いにしか慣れていないので、歯車ばかり集めるし、駒のほうが向いている人まで歯車として使おうとします。私のような言いたいことを言いたいだけ言う異端者は歯車になれません。

(3) ステークホルダーが少ない

 事案1件あたりに関与する人数がとにかく少ないです。トップダウン経営が徹底されているので、社会学でいえば独裁政治といったところ。決定権のある人さえよければ関係者全員の同意を得る必要は必ずしもありません。だから決定権のある人も最低限ついてきてほしい人さえ説得すればいいので、コンセンサスをとるという行動に要するコストがとても少なく、おかげでプロセスがテンポよく進みます。

  こう書くと「意見を聞いてくれない職場では」と思えるかもしれませんが実は逆で、決定責任がないので好き勝手言いやすい環境です。ボトムアップ民主主義だと言い出しっぺが先導しないといけないので、かえって言い出しにくい。一方でメンバーからの提案を却下する場合にはマネージャーにはその理由を説明する責任が発生します。

(4) 英語が自然に身につく

  自然に使うんですよね、英語。オフィスで聞こえる言語の4割、ラップトップで見ている文章の半分以上は英語です。読み書きは必須だし、私はひどく下手なので要上達ですが話しもします。前職の日系企業は海外のあちこちに拠点を抱えている部長が英語を話せないという信じられない有様で、絶望したのを覚えています。

 言語だけでなく、既述のような効率重視のマネジメントのおかげでやっていることの時間単価もよく、シンプルにレベルの高い職場にいる実感があり、この環境の差は数年で自分を高めてくれると確信できます。人生を会社に依存したくないなら、こういうストレッチができる職場を選ばないと、歳だけとってできることが増えないので、どんどんリスクが高まります。

(5) 権利を行使するのは当然である

 日本の夕方に、まだ午前のヨーロッパと電話会議をすることがあるのですが、金曜日に「日本人はハッピーフライデーの夕方でも普通に働くよね、俺らじゃあり得んわwww」みたいなことを笑って言われました。現職だけではなく、以前の勤めた外資企業でも同じで、金曜日は正午から昼食をとったあと午後2時くらいまで世間話をしてからオフィスに戻り、3時になるとぱらぱらと帰り始めます。さぼっているのではなく月曜から金曜日の正午の間で、その週にやるべきことはやったというだけのこと。休暇の取得も盛んで、夏休みは20日くらいとるし、クリスマス休暇は12月10日くらいから始めます。(でも年始は1月3日から働き出します。)そうでなくても何でもない日常で突然1週間休むとかザラです。社員としての権利とかいう次元ではなく、人間としての権利を最大限に行使します。もちろん誰も咎めません。

 そんな企業傘下の日本法人で、さすがに午後3時に帰ることはあまりありませんが、残業しないで定時に帰るくらいのことは普通です。だって、その週にやることは終えましたから。

 一方で正当な権利である有給休暇すら取得するのに苦労する日本。「日本は人手が足りないから仕事が多いんだ」は言い訳。優先順位の低い雑用を雑用と認識せず立派な仕事だと誤解しているだけです。やるべきことが終わっていたとして、定時まで会社にいるという無駄を強いる就業規則も横行しているし、なぜかみんな律儀に守るし。休むと人に迷惑がかかるという感覚も勘違いだし、むしろ休みを得づらいあなたが迷惑を被っていると認識しましょう。

自由と責任のセット

  以上、総じてですが良い意味でドライな職場です。それは社員各々の責任範囲が明確だから成立する世界。仲間意識だとか苦労を分かち合うとかいうのが好きならいいですが、自由と責任をセットで与えてもらうほうが気持ちいいならば、迷わず外資企業から選んだほうがいいですよ。スタートアップも自由と責任の型が多いと思いますので、冒険心溢れる方はぜひ。

 最後に大事なことを補足して終わりましょう。すべて個人の感想です。


Yoshiyuki Izutsu

https://linkedin.com/in/yizutsu/


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