夕暮れのいなばと夜汽車
鳥取で時間を潰して約2時間。今度は岡山へ向けて南下していく。
夕暮れの「いなば」
ここから「スーパーいなば」に乗り込む。「スーパー」を名乗る特急は速達列車や新型車との区別のためによくいたが、かなり減ってきた。北海道で消滅するなどしているが、山陰では「はくと」「まつかぜ」「おき」そしてこの「いなば」といった「振り子付き特急」がそれを名乗り続ける。
鳥取を出てしばらくは因美線を南下。大昔から急行列車「砂丘」が通るなどの主要路線だが、路盤の整備やハイパワーの「振り子特急」のお陰なのかかなりスピード感はある。それでもカーブが多く、「Y字分岐」で減速する。
智頭駅からは智頭急行に入る。新幹線を彷彿とさせる直線ベースの高架と盛り土で、列車はスピードを上げてかっ飛ばしていく。ただ、車両の前面が垂直で空気抵抗が悪く、トンネル入り口でちょくちょく減速もある。速いっちゃ速いが「ざんねん」さが漂う。
列車は上郡駅に到着。進行方向が逆転し、前後で協力しながらの「座席大回転祭り」。ただ、寝てる人がいるかもしれないというのが少し怖かったりするし、事前に逆向けているというパターンも多いから、なかなかこういう対応は戸惑ったりもする。
夕暮れの県境の峠を越えていく。ハイパワーのディーゼル特急はそれをお構いなしに軽やかに通過する。
山陰が誇るあの美声
夕暮れに合うのを選んだ他…
山陰行ったら、彼らを聴かないわけにはいかない。ボーカル藤原聡さんが「声帯ポリープ」の治療中である現在。完全復活してこういう歌声をまた響かせてくれることを願いながら、鳥取発車の場面で『ミックスナッツ』をセレクトした。音楽的には山陰の誇りだ。
後から知ったが、「Saucy Dog」のボーカル石原慎也さんも同じく山陰出身。『優しさの溢れる世界へ』が石原さんのピンポイントの故郷である「松江駅」の駅メロに起用された。次行ったらこれも聴くっきゃないやろ!!
ラッシュに揺られて
約2時間弱で岡山に到着。
ここから山陽線で倉敷へ向かう。今回は伯備線の備中高梁行きに乗車。2路線が乗り入れ、かなり移動しやすいが、県内で特に人口の多い2都市だからかかなり混雑しやすい。
逆向きはこんな感じ。「人口70万政令指定都市」これから向かう倉敷市も「県下第2の都市」だけある。
レアな“夜汽車”に揺られ
倉敷までやってきてここから宿へ行くついでにレアな車両に揺られる。
倉敷市内を走る「水島臨海鉄道」。化学系の貨物を主体にし、工場地帯である「水島地区」の通勤通学の旅客輸送も担っている。愛称は「水島臨海」「水臨」などのほか、「ピーポー」という可愛らしいのもある。そんなこの鉄道で一番注目度が高い車両にこれから乗っていく。
そこに止まっていたのは
国鉄生まれ
数がごくわずか
通常はいずれも平日朝と夜しか走らない
3つの意味でレアな車両。色違いの2つが連結され、各々別々の経緯を持つ。
「濃いめのたらこ色」を纏う「キハ37」は「キハ40」の反省点をフィードバックした「次世代型」として開発。量産や1両タイプなど汎用性の高さも考えられて良さげに思われたが、国鉄の財政難やローカル線の廃線で計5両しか生産されるに留まった。千葉県を走る久留里線でよく見られた他、山陰や兵庫の加古川線界隈でも見られた。この内、久留里線から「水島臨海」に移籍した3両が現役となっている。そのうち1両はデビュー当時の色に復刻されている。
白地に赤帯を纏う「キハ38」。八高線や久留里線など首都圏近郊で走っていて、オールロングシートという通勤仕様、トータル7両のみというこちらも少数派の車両。特にここには1両しかいない。その他、ミャンマーに渡ったのもいる。相方と同様デビュー時の復刻塗装で八高線で見られたものを纏っている。
今回は「キハ38」へ乗り込む。古い車両ながら、窪みの深い座席はイマドキのようなフィット感。
2形式とも広々していてキャパシティはある。ラッシュには持ってこいだ。
久々の「夜汽車」。夜の風景も去ることながら、無人駅からの乗客向けに切符を売ったり、降りるときに回収する車掌がいる「非ワンマン」スタイルはどこかタイムスリップしたような。車両にもよく似合ってる。
そんな風景を見ていると「ヨルシカ」を聴きたくなる。特に『夜行』はそんな雰囲気合う。
水島駅までやってきた。1駅先に三菱自工前という終点駅があるが、工場のための駅で大方はここが終点。さらに貨物専用線も多い。こういうところも巡ってみたい。
宿の最寄駅では無いが、さほど遠い距離ではないのとご飯屋を探したくてぶらり。良い感じのに町中華」に出会え、静まり返りながらも、スナックやご飯屋の煌びやかさ。見ていて、良い散歩だった。
ストリートミュージシャンの投げ銭のような感覚でお気軽にどうぞ。