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廃止されるケーブルとリフト

猛暑続きでもお構いなしにいろんなところへ出かけた今年の夏。たくさん列車旅しまくってきた。

しかし、溜まりに溜まった下書きが多すぎる。サンライズからの東京旅行も下書き以前に写真をお蔵に入れている。これらはちょいちょい出していくとして、今回は7月下旬に大阪の山奥へ列車旅した話。今年廃止になる路線の乗り納めをしに行ってきた。

フリーパス

のせでん妙見の森フリーパス

7月下旬「妙見の森フリーパス」という乗り放題きっぷを使って乗ってきた。

このきっぷでは

  • 能勢電鉄全線

  • レジャー施設「妙見の森」にあるケーブルカーとリフト

  • 阪急電車全線(阪急の駅で買った場合)

が乗り放題。さらに能勢電鉄の沿線施設で使えるクーポン券も付いてくる。

阪急に乗って

急行宝塚行き

阪急電車で京都河原町から十三へ。そこから宝塚線の急行で川西能勢口へ。

阪急宝塚線のクロスシート
鎧戸付き

当たった車両は「クロスシート車両」。京都線以外では珍しい上、リニューアル工事で「ロングシート」への改造が進む。そういや、前に能勢電鉄行ったときも同じの乗ってたなぁ。デジャヴ?

能勢電鉄へ

能勢電鉄7200系。最新型だけど、阪急からの中古。
オールドルーキーってやつ?

そんなふとしたことを思いながら、川西能勢口駅へ。ここから能勢電鉄へ。

緑が増えてきた。
赤い屋根の下にはみんな大好き「三ツ矢サイダー」の看板

住宅街からみるみるうちに山登り。緑が多くなってくる。

山下⇆妙見口間を走るシャトル列車

山下まで来て、妙見口行きに乗り換え。川西能勢口から直通列車もあったが、2022年12月のダイヤ改正をきっかけに一部を除いて「日生中央⇆川西能勢口」「山下⇆妙見口」で統一された。

白と青の復刻塗装。2023年7月を持って運転を終了し、マルーンに戻されて復帰する予定。
能勢電鉄の醍醐味。

妙見口へのルートは山の中をひた走る。里山も見えて阪急電車らしからぬ光景。ただし、駅前に住宅地が点在していて、列車の本数も10分に1本ある。

都会+田舎で「トナイナカ」なるワードがあるが、能勢電鉄はその最たるものなのかもしれない。

そんな風景と合わせたくなる「ヨルシカ」こういう場所で大抵は合わせてるような。

妙見口駅

妙見口駅に到着。

ちょっと歩かなあかん。
妙見口のバス停

ここからバスに乗り換えて、ケーブルカーのりばへ直行する。歩きでも20分行けるが、上り坂だし、こんな猛暑で歩いたら、倒れかねない。

バスの時刻表。平日と土休日の差が激しい。

バスの本数もごくわずかだったので、これはラッキー。無かったら、ケーブルカーは諦めていた。

バスが来た

バスに乗って、登ること5分ぐらい。

「ケーブル黒川」というバス停で降りる。名前の通りここにケーブルカーがある。実はこれが廃止になる1つ目。このあとの2つ目で廃止になる経緯を紹介する。

妙見の森ケーブル

「妙見の森ケーブル」の「黒川駅」
古めかしい駅舎
独特の字体

レトロな風情ながら、「妙見の森ケーブル」というポップな名前と車両にギャップがある。

ケーブルカー
「ほほえみ」という愛称が付く。
車内

ケーブルカーは1960年代から使われているかなりのビンテージ。

  • 非冷房

  • 手動ドア

こんな時代に逆行していて面白い。小学校が非冷房だった僕にとっては少し懐かしくもなる。

えぐれた山肌
降りてくる車両とすれ違い。

険しい坂を登っていく。豊かな自然の美しさや大雨で削れたであろう、剥き出しの斜面で見る過酷さを感じられる。

約5分で「ケーブル山上」に到着。

山を上がり、広場に出て、「リフト」に乗り換える。

妙見の森リフト

かつてはここにもケーブルカーがあったが、戦時下での「鉄材供出」で廃線。戦後にリフトとして復活した。ちなみにさっきのケーブルカーも同じ理由で一度廃止。ほぼ元の形態で復活している。が、このリフトもケーブルカーと同時に廃止となる。

そんな面影は一切見当たらないものの、豊かな自然と時々吹く風が心地いい。

歴史の始まり

約12分で終点へ。

ここから行ってきたのが「能勢妙見山」という日蓮宗のお寺。先ほど乗ってきた能勢電鉄はここのために造られたのが歴史の始まりだ。

「能勢口(現在の川西能勢口)」から「一の鳥居」までが開通。その後、「妙見口」までが全通し、ケーブルカーとともに

能勢妙見宮への参詣者と能勢地方の産物の輸送を目的

と建設の経緯が記されている。

妙見山参拝→都心アクセス

ただ、本来の目的というのは失われつつある。日生中央を始め、沿線でニュータウンの開発が行われて、宅地が増加。能勢電鉄から大阪梅田へのアクセスという面が大きくなっている。実際、全路線通して10分おきの運転で特急が梅田から直通する。

廃止決定

一方で、妙見山周辺はなかなか人が集まりにくかった。そして、2024年6月にケーブルカー、リフト、自社レジャー施設「妙見の森バーベキューテラス」の営業終了が2023年6月に発表。

その後9月になると、運輸局からの認可で廃止期日が早まり、2023年12月3日を持っての廃止に繰り上がった。例年の「冬季休業」に合わせた処置と思われる。

いわば「能勢電鉄始まりの地」である路線の廃止は衝撃的。ケーブルカーに乗り合わせた大学ゼミグループの間でもこの話題で目を丸くしていた。

帰り道 

直射日光ガン光り。

そんな「妙見山」から折り返す。帰りのリフトは直射日光が直撃。日傘を差そうにも落としそうだから、仕方なく12分浴びることにした。

ときめき号

ケーブルカーは色違いの車両で。ビデオで見てた2000年代は黄色とピンクのイメージがあったが、知らない間にリニューアルされて「ログハウス」チックになった。「妙見の森」というネーミングには合う。


廃止が決定してるとはいえ、そんなに少ないというわけではなかった。この日も、ファミリーやハイキング、大学のゼミチームなどいろんな人がいた。

こんな良いところなのに、「妙見の森」を施設ごと廃止させるのはもったいないなぁと感じる。しかし、大阪からだと鉄道は遠いし、マイカーでも山道を走ることになるから利用が伸び悩んでいた節があるのかもしれない。

廃止まであと2か月に急激に縮まった今。たぶんこれで乗り納めなのだろう。そんな夏の思い出。

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