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音楽を奏でる喜びのために 2

前回私は「音楽空間」という言葉を用いました。もう一度その言葉について解説しておきます。


ー前回記事よりー
音楽は人間の営みを凝縮した芸術だと私は捉えています。その凝縮によって曲が始まると一種の異次元ともいうべき空間が生まれます。私はそれを個人的に「音楽空間」と呼んでいます。それは長さに関係ありません。長い演奏時間を要する曲から、わずか1・2分の曲、あるいは短い鼻歌の一節のようなものまで様々です。本当に素晴らしい音楽家は、メロディーの断片を少し歌い・奏でただけで、空気を一変させるような「音楽空間」を生む力があります。


さて、私が少年だった1960~70年代頃からすれば、現代は音楽理論に関する書籍、進歩した演奏技術メソッドなどの情報が、比較にならぬ程豊富に提供されており、ネットで検索しても優れた教えに簡単に触れられます。実際にネットから得た情報を参考に練習してみると、以前の苦労は何だったのかと思うぐらい、効果テキメンというケースもありました。(もちろんネット上の情報は玉石混淆なので注意が必要ですが…)

しかし、たとえそのように技術的な問題・理論的な問題をクリアできたとしても、音楽として成り立つとは限りません。一番大きな課題は残ります。
どうすれば「音楽空間」に入ることができるのでしょう?

私はその疑問に取り組むうちに、呼吸という身体機能にそのヒントがあるように感じ始めました。 実際呼吸への意識的なアプローチを実践するようになってから、私の中で何かが変わりました。ミスはあったとしてもある程度以上の充実感が残るのです。それからこれは呼吸だけのアプローチによるものではないのですが、その頃から、音楽を更に深めてゆく糸口を発見する喜びも感じられるようになってきたのです。

私の演奏はもちろん完璧なわけではありません。ただ現在の私にとって、完璧さはそれほど重要ではなく「音楽空間」の経験そのものが喜びとなり始めているようです。そもそも誰からも、完璧さなど要求されていないので…。

さて結論を先に端的に記しておきますと、呼吸によって心・技・体を統合すること。そうまとめられるかと思います。しかし、それではあまりに説明が大雑把すぎます。

今、私はこの年末の時間を利用して、そのアプローチに関連している様々な問題を整理して、このマガジンに備忘録として残しておこうと考えるようになりました。それは自分のためでもあり、もしかすると私と同じように試行錯誤されている方に、ちょっとしたヒントをもたらすかもしれないという気がしているからです。

ただしこのマガジンは、まるっきりの初心者向けたのものではありません。そして演奏技術を語るものでもありません。少なくとも数曲のレパートリーがある方、中級程度の方への参考になればというものなので、その点はご了承ください。

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