【AdtechTokyo2017】コンテンツマーケティングは今や、「消費者目線での価値デザイン」という基本概念として浸透している。

10/17、18は、アドテック東京に参加。ここ数年自分が感じていたことがかなり整理されたので、備忘録のため書き留めておこうと思う。

● はじめに
軽く自己紹介をしておくと、私は2013年に新卒で入社した今の会社でニュースプラットフォームのビジネス開発を担当した後、新卒2年目の時にアメリカのデジタル広告の新しい潮流として注目されていたコンテンツマーケティング事業の立ち上げに任命された。業界の知識が乏しかった私にも、デジタル広告も有益で楽しいコンテンツであるべきという発想は疑いもなく明快で、ステマを排除した正しい市場作りに強い使命感を持った。それから3年、市場形成のための啓蒙活動や、提携先とのPMIを中心とした事業開発を推進してきた。

その間、コンテンツマーケティングは新しい市場というよりも、「企業目線の一方的な価値発信<消費者目線での価値デザイン」という基本概念であると解釈するようになった。当然そうあるべきの概念が、デジタル広告でなぜか軽視されてきたのだと。

● アドテック東京で感じたこと
そんな私のフィルターから見ると、アドテック東京では、「ユーザーファースト」「True Customer Centricity」「自分ごと化」「カスタマージャーニー」等様々なキーワードで表現されていたが、きっとどのセッションも、その基本概念を元に語られているのだと受け取った。下記に、登壇者の方々の言葉を引用しながらまとめてみる。

1. テクノロジーの進化と消費スタイルの変化への課題意識
言うまでもないが、スマホとSNSの普及によって私たちが日常生活で得られる情報量は圧倒的に増えた。さらに、クラウドの出現によってマーケティングの可能性も圧倒的に広がった。一方で、私たちが消費できる情報量は変わらないため、メディアや企業の発信は消費者に届きにくい時代となった。そしてこの変化は、フェイクニュース、ビューアビリティ、アドフラウド、ブランドセーフティ等、デジタルメディアの信頼を危機に晒すような様々な課題を抱えるようになった。ここで改めて、メディアと広告のあり方について再考しなければならない。これが業界共通の課題意識だと思う。

2.  わざわざ人が時間やお金を使う”意味”を明確にする
そんな情報過多な時代だからこそ、わざわざ個人の時間や頭のメモリーを使うだけの何かがないと消費されない。自社の商品にその”意味”を付与することこそがブランディングなのだと資生堂ジャパン株式会社執行役員音部氏(以下、音部氏)は言う。例えば化粧品のMAQuillAGEには、 「カワイイのその先の、レディになる冒険を。」といったような意味が付与されている。これはメディアも一緒で、そのメディアに何を期待すれば良いのか?が明確になることで、そこに集まるコミュニティも明確になり、読者や広告主が安心して時間や予算を使うことが出来る。メディアに関してさらに言えば、効果指標はページビューやインプレッションだけでなく、そのメディアがどんなブランドを目指していて、それがどれだけ認知、達成されているか?が重要視されるべきで、これが量から質の議論だ。

写真;【スマニューLIVE@adtech 10/18 14:40-15:20】セッション No.6:ブランドのメディア化とメディアのブランド化(動画はこちら

3. ブランドエクイティはユーザーの頭の中にできる
そして、元米P&G社のヴァイス・プレジデントの和田氏(以下、和田氏)が説いたように、ここで忘れてはいけないのはブランドエクイティはユーザーの頭の中にできるということだ。その前提に立てば当然、”意味”は消費者にとっての価値になっている必要がある。つまり、消費者の生活サイクルや課題、欲求の文脈の中にブランドの価値を置くことで、初めて自分ごと化してもらえるのだ。
そこで、現代人の消費スタイルを考えてみると、モノ消費→コト消費へ移行しているのは、”ソーシャライゼーション”(人との関わり)へのモチベーションが高まっているからだとも言える。それなら、その中にブランドの価値を置かなければいけない。

写真;10/18 11:45 - 12:35【B-6】PRの視点からマス、デジタルの広告を考える

例として、近畿日本鉄道部長の能川氏のセッションにあった、「あまり知られていないが実は伊勢神宮は、神様にお願い事をする場ではなく感謝する場。大切な人と訪れよう。」というソーシャライゼーションを元とした”コト”の価値をアピールし、乗車券という”モノ”を売るという話がわかりやすかった。

また、消費者は常に一つのブランドを求めているわけではない。例えば近畿日本鉄道の例では、もっと上段に「思い出に残るようないい旅行がしたい」という欲求があり、それは、旅館、食事、カメラ、旅行情報、洋服、あるいはスーツケースといった関連するモノでも満たされるかもしれない。もし複数のブランドが消費者にとっての大義を元に連携してマーケティングを行うことが出来れば、消費者の満足度を上げ、ブランドの資源を効率的に使うことが出来ると音部氏は言う。こういった取り組みをアライアンスマーケティングと名付け、今後より進んでいくだろうとオイシックスドット大地株式会社執行役員奥谷氏も提唱している。

写真;【スマニューLIVE@adtech 10/18 14:40-15:20】セッション No.6:ブランドのメディア化とメディアのブランド化(動画はこちら)

4. 顧客を中心としたデータマネジメントによる、360度の体験デザイン
このような消費者行動は、当然一つのチャネルでは完結しない。そのため、飲食も小売もどの業界においても、出来る限り全てのチャネルでの消費者行動データを取得し、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)で一元管理することで、顧客一人一人のエクスペリエンスをカスタムすることが求められる。もはやデジタルかアナログかの話ではなく、顧客を360度囲い込むエクスペリエンスだ。Oro Analytica CEOのThoryn Stephens氏のキーノートでは、好みや生活圏、LTV等のデータを取得するスターバックスのアプリを例に、顧客やブランドの価値を理解するには、正しいデータを取得し、活用してるかが重要だと語られていた。日本ロレアル株式会社CDOの長瀬氏は、ブランドごとのカスタマージャーニーを把握し、より接触の多いメディアやプラットフォームとの戦略的提携によりデータを積極的に取得するべきだと言う。

10/17 10:10 - 10:50
【Keynote 2Evolution】カスタマー中心のデータマネジメント

5. サステナブルなブランド育成を実現する人材が重要
このような環境の中で、サステナブルなブランド育成を行うには、ブランドマネージャーを、売上責任、戦略の立案等の全ての中心に据え、各関係部署がそれを支える"マルチファンクショナルチーム"を機能させることが必須だと、和田氏は説いた。そして、それが出来る人材の育成を怠らないことだ。

写真;10/18 9:30 - 10:10【Keynote 4 】サステイナブルなブランドを育み、ブランドを育む人を育てるために

6. 良質なコンテンツが供給されるエコシステムが必要
最後に、クリエイティブに目を向けてみる。消費者目線で今の広告を見てみると、どうだろうか。直接的な言い方は避けられがちだが、音部氏の提言には多くの人がスッキリしたことだろう。「広告はもはや公共物であることを認識するように。広告がこれ以上忌避の対象にならないよう、再考が必要だ。」何秒間見られたら良しとしようとか、スキップ出来ないから良いとかではなく、嫌がられながら広告を無理やり見せても意味ないということにそろそろちゃんと向き合うべきだと思う。

写真;10/18 11:45 - 12:35
【B-6】PRの視点からマス、デジタルの広告を考える

そしてそのためには、より良質な広告コンテンツが制作されるエコシステム(お金が回ること)が必要だと言う意見も多かった。この話は、広告に限らず、ONA創始者でスマートニュース株式会社ヴァイスプレジデントのリッチ・ジャロスロフスキー氏(以下、ジャロスロフスキー氏)のメディアの話にもリンクしていると思う。
ジャロスロフスキー氏は、グーグルやフェイスブックを例に、急速に巨大化するプラットフォーマーがユーザーとの接触機会や広告予算のコントロール権を増しフェイクニュースの流出を止められない中、ユーザーは懐疑的になりデジタルメディア全体の信頼性が失われていっていると話した。アメリカではこれを受けて所謂スプリンクラーネットのような政府の介入も検討され始めると予測するが、そんな事になればインターネットの正義であるはずのコンテンツの自由な流通やオープンな発言が制御されることになる。
そして、この動きを止められるのはそのエネルギー源となっている広告主だけなので、広告主はプラットフォーマーに透明性と安全性を強く訴え、ダメなら断ち切って信頼できるメディアに予算を費やすべきと警鐘を鳴らした。

個人的にはプラットフォームにも出来ることがあると信じているが、メディアの未来が危機に面しているという課題意識は、私の仕事へのモチベーションの大きな要素の一つなので、このプレゼンには大変共感出来た。広告以前に、持続的に良質なコンテンツが供給されるエコシステムが必要なのだ。

写真;/10/18 10:10 - 10:50
【Keynote 5】 デジタルメディアが直面する課題と機会

● 感想
テクノロジーの進化はあまりにも急速で、広告に関して言えばブランディングに予算を使う広告主がデジタルに進出したのは最近のことなので、まだまだ課題があるのは仕方ないという声もあったが、どの課題も業界全体で取り組まなければ解決できない大きなものばかりだ。だからこそ、こういう場で業界の課題について共通認識を持つことが大事だと思った。
メディア、広告主、プラットフォーム、代理店、ベンダー、それぞれが、それぞれの立場の利益の上段にユーザーファーストを意識していけば、きっと改善していくはずだ。少なくとも、私が信じて推進してきたコンテンツマーケティングの概念は正しいと改めて確信したし、自分も業界でリーダーシップを取り、より良い世の中に変えていく人材になりたいと強く思えた二日間だった。頑張ろう。



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Yuki Kamimoto

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