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【法律読書録】NFTゲーム・ブロックチェーンゲームの法制(商事法務)

注目のNFT(Non-Fungible Token)やブロックチェーン技術をゲームで活用したいと考えている人や、これらに関わる法律について学びたいと思う人が最初に手に取ると良いと思う本をご紹介します。

本書の概要

本書は、NFTゲームやブロックチェーン・ゲーム(BCG)について、具体的なゲームなどを例にとり、法規制の概要とそのポイントを解説した本です。

執筆者は、一般財団法人情報法制研究所の「ブロックチェーンゲームの運用に関する検討会」の委員や、この分野のエキスパートの方々であり、信頼できます。

表紙を見るとお堅い感じをうけますが、法律の本の中では優しめに書かれており、通読向きです。

おすすめの読者層

  • BCGをサービスとして提供する企業の法務担当者

  • BCGに興味がある人(法律にそこまで詳しくなくても大丈夫)

役に立ったポイント

ゲームを例にした具体的解説

本書は、実際のゲームを紹介する形で解説が進んでいきます。アクシー・インフィニティといった最近のBCGゲームや、ウルティマ・オンラインのような懐かしい名前まで登場します。

法律独特の抽象的な記述は少なく、比較的身近なものとしてイメージができ、理解しやすくなっている点が良かったです。

図が多くわかりやすい

アイコンを多用した図が多く、議論しているサービスの建て付けや権利関係がわかりやすく書かれています。

暗号資産交換業者と前払式支払手段発行者のいずれの規制が適用されるかなどは、サービスの設計などで変わるものですが、こういったことが図で整理されているのは助かります。

雑感

辞書よりは通読向き

本書は、BCGに関連する法律の条文やガイドラインなどの詳細な解説をするものではありません。BCGに関連する法規制や課題などの全体感をざっくりと把握するのに向いてます。

そのため、辞書として使うよりは、通読向きと思います。

ユーザーとしてBCGを始めたり、サービス提供を検討するにあたって、一通り概要をおさえておきたい人にはちょうど良い本だと思います。サイズもコンパクトなので、移動中に読むのもおすすめです。

著者の情熱がすごい

世界的に有名なBCGであるアクシー・インフィニティについては、著者自身がプレイをしています。コラム形式で、著者がゲームを始める準備から、始めた後の学びなどの体験記があるのですが、実に30ページ弱を費やしています(本書本文は170頁ほど)。

プレイまでにはウォレットをインストールして、仮想通貨を準備して、NFTのキャラクターを購入して、さらにはガス代(ブロックチェーンのネットワーク手数料)もかかるなど、初期投資として5万円以上の結構なお金が必要になったようです。ここまで探求する著者の情熱にはちょっとした感動を覚えました。やはり、何事もやってみて突き詰めることが大事なのだなという副次的な学びを得ました。

ただ、人によっては、具体的すぎる体験談よりも解説を充実させてくれ、と感じる人がいるかもしれません。この辺りは好みの問題でしょうか。

有識者のコラムがタメになる

本書の各所に、この分野の有識者(いつメン感あり)のコラムがあるのですが、賭博罪に関することや、消費者保護の視点など、この分野でよく議論されるポイントに触れられています。

有識者のコラムは、議論のポイントを把握できるうえ、なんとなく業界の雰囲気も垣間見ることができるので、個人的には有益に思いました。

本書は、法律書独特の堅さがなく、比較的広めの読者層を狙って書かれているので、NFTやBCGの法律の面に興味がある人全般におすすめです。

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