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フリースタイルバトル

今回はMCバトルのお話です。

ラップバトルと言った方が分かりやすいでしょうか。

ラップはヒップホップの一ジャンル。ヒップホップは主に以下のジャンルの総称と言われています。

・ラップ
・ブレイクダンス
・グラフィティ
・DJプレイ

MCバトルはこういったヒップホップ文化のひとつとして発展したもので、1970年代後半のアメリカが発祥とされています。

80年代、90年代を経てその存在はポピュラーとなり、エミネムが主演した映画『8 Mile』(2002年)の登場により一気に世界中に知れ渡ることとなります。

日本のヒップホップシーンではこれに遅れて90年代後半からMCバトルの大会が開催されるようになりました。以降浮き沈みはありながらも徐々に裾野を広げ近年TV『フリースタイルダンジョン』の登場によりブームが再燃しています。ラップが若者向けということもあってTVの深夜番組やネットを中心と限定された範囲ではありますが各種メディアへの露出が増えているので、ブームを肌で感じる方もいらっしゃるかと思います。

■MCバトルの主要イベント

・『B-BOY PARK MCバトル』(1997〜)
※1999年~2001年、KICK THE CAN CREWのメンバー「KREVA」が3年連続優勝
・『ULTIMATE MC BATTLE』(2005〜)
※略称UMB。2012~2014年、「R-指定」が全国大会で3連覇。
・『戦極 MCBATTLE』(2012〜)
・『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』(2012〜)
・『フリースタイルダンジョン』(2015〜)

日本ではまだまだ文化的には歴史が浅いこともあり30代のMCでもベテランと呼ばれ、40代で一線を張っているMCとなるともはや重鎮扱い。下を見ると「BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権」出身の若手MCが続々とメインストリームにのし上がり虎視眈々と下克上を狙っている。下からの突き上げによりベテランたちもうかうかしていられない群雄割拠の様相を呈しています。

個人的には世代と世代のぶつかり合いをもっと期待したいところで、若い世代がテクニックに走るだけでなく気迫を見せてくれるとより緊張感が生まれて面白くなると思っていますし、その応酬が今後日本のヒップホップ文化を次のステージに引っ張ってくれると期待してもいます。

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MCバトルはMC(master of ceremonies)同志がDJが鳴らすビートに乗せてフリースタイルのラップでバトルするものです。

MCが個性を活かして互いのスタイルを相手にぶつけ合う”言葉の格闘技”とも例えられる白熱したバトルが展開されます。実際そのまま喧嘩へと発展することもあるようで…。

MCたちはそれぞれ自身のスタイルに強いこだわりを持っていて、これでもかとライムを詰め込んでリズムを刻んだり、印象的なワードセンスとパンチラインで観客を魅了したり、こっぴどくディスって相手を意気消沈させたり、逆にあえてライムを無視した構成にして既存の枠組みを壊したりと、オリジナリティーを利かせた武器で戦います。

バトルというだけあって傍目にはひたすらお互い罵倒しあっている状況。生理的に受け付けない人もいるでしょう。

ところがハイレベルなMCたちは、抜群のスキルと音楽性を即興で演じ、わたしのような素人にも違いを分からせてくれるのです。

言葉で説明しましたが見てもらった方が早いかと。

「R-指定」「晋平太」「鎮座DOPENESS」「呂布カルマ」「mu-ton」「Lick-G」「じょう」などでググればいろいろ見れますし、興味が湧いたら関連リンクをたどって深掘りしてください。

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バトルというからには勝敗があって、観客の拍手の量で判定する大会もあれば、審査員がジャッジする大会もあります。

■主な評価基準

ライム(韻を踏むこと)
パンチライン(印象的なセリフ)
バイブス(雰囲気、気合い)
ビート
フロウ(歌い回し)
ディス(相手をけなす)
ワードセンス
即興性

ルールは 8小節(ラップする時間)×2本(ラップする回数) とか16小節×4本など決められた小節のなかで韻を踏みながらディスるという基本的な流れは存在していますが、戦い方はフリースタイル。また採点要素は多々あれど基準はあいまいでフィギュアスケートみたいに詳細に審査項目が設けられてはいません。あくまで審査する側の感性に委ねられています。オリンピック競技に採用されるような高度に洗練されスポーツ化された様式は、ヒップホップというカウンターカルチャーとは相いれないものなのです。

実際のMCバトルを見てもらえれば一目瞭然ですが、どの項目が評価点が高いとかいうことはなく、総合力のあるテクニック重視のMCもいれば特定分野だけで一点突破するMCもいます。ただ上手いだけで個性のない(印象に残らない)MCは勝ち上がれません。会場をヒートアップさせる熱量が求められます。

これはつまり印象が勝敗を決するということ。
どちらがより会場を沸かせることができたのか。これに尽きます。
どうやったら会場が沸くのかというと、相手の感情を突き動かすこと。
感情の揺らぎに触発されて脊髄反射的に観客はアクションを起こします。
逆に何も感じなければ動きません。
目の前の敵と一対一のバトルを繰り広げながらも、それを評価、支持してくれのは外野。

結局のところ感情を動かし周囲を巻き込むことができる人が勝利するのです。

わたしが今回のコラムで伝えたかったポイントはここ。

仕事でもプライベートでも、必ずしもすべての局面でルールや採点基準が固まっているとは限らない。むしろそういうお膳立ての済んだ場所や場面はすでに誰かが踏み均しているいわばレッドオーシャン(競争の激しい既存市場)。逆に基準の明確でない分野はブルーオーシャン(競争相手の少ない穏やかな市場)である可能性が高い。ブルーオーシャンは洗練されていない。そこに乗り込んで自分の道を切り開いていくにはフリースタイル(自分のスタイル)でとにかく場を熱狂させること。周りの人の脳みそを揺らし意欲(モチベーション)を高めること。技術は後付けで問題ない。

まずは戦いの場を見つけること。

次に演者になること。

そして自分の武器を見つけ、それを磨くこと。

戦い、相手のリアクションに即答すること。

その応酬のなかで周囲を巻き込むこと。

味方を作ること。

ところであたはどこで誰とどんな戦いをしていますか?

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