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ペプシチャレンジ

あなたは「ペプシ」と「コカ・コーラ」どっちが好きですか?

アメリカにはコカ・コーラ社とペプシコというコーラ販売の2大大手が存在することはご存知でしょう。

1886年にコカ・コーラ、1896年にペプシが誕生し、それ以降両者は100年来のライバルとしてしのぎを削ってきました。

ライバルと言いましたが実際のところはこの間、常にコカ・コーラが王者で、ペプシが永遠の2番手としてその背中を追い続けているといった関係が続いています。

両者の評価を分かつものとはいったい何なのでしょうか?


『ペプシ・チャレンジ』

ペプシ・チャレンジとは同業のコカ・コーラに大きく販売面で水をあけられたペプシコ社が売り上げアップ策の一環として企画したもので、1970年代のアメリカと1980年代の日本で行われました。

内容は一般消費者を対象にペプシコーラとコカ・コーラを飲み比べてもらい、どちらをおいしいと感じるかを調査するというものです。

≪実験結果≫
どちらのコーラかを明かさない場合       ペプシ>コカ・コーラ
どちらのコーラかを明かした場合   ペプシ<コカ・コーラ

このように結果は「コーラは味覚よりもブランドネームで選ぶ傾向にある」ということが分かりました。消費者は「よりおいしいものを選ぶ」とは限らないのです。

この現象はマーケティング界隈では有名な話で「ペプシパラドックス」と呼ばれています。

パラドックスとは「矛盾」「逆説」「ジレンマ」などといった意味を持つ言葉です。

このキャンペーンによりペプシコはコカ・コーラ社に対しての味の優位性を示し、企画の様子をコマーシャルとして放映することで、彼らの思惑通り売上アップを果たすこととなります。

この結果に動揺したコカ・コーラ社は、巻き返しのために「カンザス計画」と言われるCOKE FORMULA(調合方式)変更計画を発動します。
そして、1974年から研究を始め、1984年9月に「ニューコーク」を完成させます。ニューコークはコカ・コーラ社独自の試飲調査でペプシを上回る結果を出しました。しかしオリジナルコークを全面廃止したことで消費者から大反発を招き、3ヶ月で生産中止という大失敗を犯してしまうのです。

結局、もとのコーラを「クラシックコーク」として再販売することとなり、コカ・コーラ社はなんとか挽回を果たします。

その後は皆さんご存知の通り、いまでもコーラ販売においてはコカ・コーラの優位性は揺らいでいません。味はずっとペプシの方がおいしいはずなのに。

コカ・コーラ社がよりおいしいコーラを作ったとしてもダメだったことにより、「おいしい」ということが必ずしも消費を促す決定打とはならない、ということがよりハッキリしました。

両者についてもう一つおもしろい話があります。


アメリカのベイラー医科大学で脳科学を専門とするモンタギュー博士らが行った実験です。

この実験によると、ペプシとコカ・コーラを名前を隠して飲ませると被験者の脳内にある「腹側被殻」という満足感に関わる部位が同じような反応を示すが、名前を見せてから飲ませると、コカ・コーラにだけ前頭葉にある「海馬」と「背外側前頭前野」が固有の反応を示す、ということです。

「海馬」は記憶の処理をつかさどり、「背外側前頭前野」は行動を実行するための判断を処理する機能をつかさどっています。コカ・コーラを飲むときにだけ、これらの機能が反応を示し、ブランドのイメージや記憶を呼び覚ます、というわけです。逆を言うと、ペプシブランドはこの刺激が弱いことを意味します。

コカ・コーラはたとえ味覚勝負では負けたとしても、お客様が認識している全体の世界観(ブランドイメージ)に関しては味覚の弱さをカバーするほどの高い評価だったといえるのです。

コカ・コーラはこれまで一貫して「爽やか」というキャッチコピーを様々な広告展開で発信し続けてきました。「おいしい」ではなく「爽やか」です。

コカ・コーラは確かに飲み物ではありますが、それを飲むことを通じて「楽しく幸せな時間を仲間と共有する」という体験が得られるのです。

消費者の頭の中にこのようなポジティブイメージが刷り込まれ消費行動へと繋がっていきます。だから、「おいしい」ペプシより、爽やかな体験という付加価値がついているコカ・コーラの方が「好き」なのです。

営業活動を行ううえで、自分たちが扱う商品やサービスを通じてお客様がどのような体験をしているのかを分析することはとても大切なことです。

どれだけ品質の良いサービスを揃えたとしても、それがかけ合わさってプラスに作用しているとは限りません。トータルでお客様にどのように伝わっているのか。お客様の深層心理にどのようにリーチし、その結果どういった行動に繋がっているのか。

気持ちは行動に現れます

だからわたしたちはお客様の行動をみてその気持ちを判断しなければならないのです。

なぜなら人間は行動を通じて体験を得ているからです。

もしわたしたちが、お客様のためを思って施策を打ったとしても、もしそれがお客様の好みに合わなかった場合は、コカ・コーラが「ニューコーク」から即座に撤退したように、わたしたちもやり直さなければなりません。

お客様と対話を繰り返しながら、自分たちのブランドをデザインしていくこと。

それを地道に続けることができれば、より愛される企業へ一歩づつ近づいていけるでしょう。

あなたはお客様にどんな体験を提供していますか?

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