Web記事に素人写真・ヘタな写真を使ってはいけない理由
「写真はWeb記事でも大事だ。欠かせない」に反対する人は多くないでしょう。しかし、いうほどには重視されているとは思えず、素人写真・ヘタな写真があふれています。この記事では、それら「素人写真・ヘタな写真」とはどんなものを紹介し、どんな悪影響を与えるかを考えてみます。
ただし、ここで話題にする記事とは「取材もの」です。ネットなどで調べるだけで書ける「こたつ記事」では、写真はそう大きな意味を持っていません。写真をはさむ理由は「文字ばかり続くと読みにくい」で、使う写真もストックサービスから借りてきた無難なものが大半です。「毒にも薬にもならない」といったところです。
写真のところで離脱する読者もいる・記事の信頼性が落ちる
Web記事の読者や、そこに使われる写真にはどんな特徴があるでしょうか。以下は、あくまで本や雑誌、新聞などの活字媒体との比較です。
Web記事の読者は逃げ足が早い
Web記事の世界では「読者」ではなく、「訪問者」との言葉も使われます。「読む人・読んだ人」ではなく、「訪れる人・訪れた人」です。「訪問者」の方がむしろしっくり来るのは、「ちらっと見ただけで、すぐに離れてしまう人も多い」からでしょう。
すぐに離れる理由としては、「知りたかった情報が書かれていない」「デザインがイマイチ」などたくさんあります。
そして、おそらくWebディレクター、Web編集者、Webライターらの盲点になっているのが……
その「離れてしまった理由」には素人写真・ヘタな写真もある
……です。この記事で触れたいのもその点です。
使ってはいけない理由① そこから読者が逃げる
素人写真・ヘタな写真は見る人を不安・不快にさせます。後で解説しますが、この「素人写真・ヘタな写真」には、「水平線が傾いている」「色がおかしい」「構図が散漫」などがあります。
「ピンぼけ・手ブレ」もそれらの一種ですが、「その程度の語は、説明してもらわなくてもわかる」と思うかもしれません。しかし、大半の人が思うよりもピントなどは厳密にする必要があります。
また、「水平線が傾いている」や「ピントがよくない」といった写真があっても、それを指摘できる人は多くはないでしょう。おそらくは、「なんとなく嫌な感じがする」「じっと見ていられない」となるだけです。
その写真だけ飛ばして、先に読み進んでくれるとは限りません。「ほかのページやサイトに移る」も当たり前にあるのではないでしょうか。つまり、写真がそのページやサイトにとっての「離脱ポイント」になってしまうのです。
使ってはいけない理由② 記事の内容の信頼性が落ちる
「いかにも素人が撮った」「雑に撮った」写真が使われていると、もしかしたら「手作り感がある」などと好意的に見られる場合もあるかもしれません。ただ、あるとしても、個人のサイト限定でしょう。
企業のサイトがこれならば、訪問者にすれば「お金も手間もかけていないサイトだろう」と思うのではないでしょうか。サイトデザインがダサいのと同じです。その企業へのイメージにはマイナスにしかなりません。また、個々の記事にしても、「写真同様に文章も素人の手によるものだろう」と書かれている内容まで信頼性が落ちることになりそうです。
素人写真・ヘタな写真の悪影響は、なぜか検証されていない
サイト全体や記事に対しては、効果を検証しているサイト運営者もいます。むしろ、「効果が気にならないようならば、まともなサイト運営者ではない」とみなしていいでしょう。
効果を計測する数値としては、基本的なものだけでも「離脱率」「読了率」「滞在時間」「コンバージョン率」などいくつもあります。「ウェブ解析士」という専門家を起用してまで計測するほど重視もされます。
これらの数値を把握しておかないと、せっかくのサイトが無駄になっているのにも気が付きません。記事を入れ替えたりリライトしたりした際には、これらの数値の変化で効果のほどもわかります。ページまるごとやサイト全体のデザインを変えた場合も同様です。
しかし、写真1枚1枚については検証されていません。少なくとも私の知る範囲ではそうです。
(1)WebディレクターやWeb編集者らがそれだけ写真に対する関心が薄い。知見がない。
(2)入れ替える写真を用意するのが簡単ではない。
(3)入れ替えて数値を取り直したところで、数値を変化させる要素が多すぎて、「写真が理由」とは断定しにくい。
こういった事情があるのではないでしょうか。あえて「どれが最大の事情か」といえば、(1)のような気がします。やる気にさえなれば、(2)や(3)は乗り越えられるでしょうし、サイトデザインの模様替えや、記事(文章)のリライトなどは当たり前に効果が計測されていますので。
素人写真・ヘタな写真の種類 読者に与える悪影響の種類
今まで写真に興味のなかった人たちにすれば、「どのように見るのが嫌になるか。なぜ嫌になるのか」はなかなか言葉にはできないでしょう。次のようなものがその代表です。
ただ、先に触れたように「どのくらい読者を逃してしまうか」の検証はされていません。「私自身(柳本)がやればいい」とも頭をかすめますが、おそらくWeb解析の専門家でないと手に負えません。あくまで「一般論でしかない、限界のある話」としてお聞きください。
ピンぼけ・手ブレ
「全体がもやっとしている。何が写っているかもよくわからない」といったピンぼけもあります。もちろん、論外です。
ここで問題にしたいのは、「写真に詳しくない人がはっきりとは気が付かない程度のピンぼけ」です。例えば、人をドアップで撮ったとき、ピントはカメラに近い方の目に合わせるのが定石です。逆をやるとじっと見ると嫌な気分になってきます。
散漫な構図
「肝心の被写体は入っているが、豆粒ほどの大きさでしかない」がこの典型です。全くの素人は、「カメラをそっちに向けてシャッターを切るだけ」とやってしまいがちです。それだけではなく、わざわざ「念のために」と要りもしない周囲まで含めるのも珍しくありません。
たとえば、「愛車の写真を撮ったところ、画面のほぼ上半分は青空。車体よりも手前は道路ばかり」といった具合です。
色が悪い
「料理やスイーツが、照明のせいで全体的に黄色っぽい。白いはずのお皿まで黄色く見える」といった写真はよく目にします。肉や魚、ケーキなどもおいしく見えません。ヘタをすると汚らしくさえ見えます。
実は、どんなにいいカメラを使っても写真は見たとおりには写りません。仮に見たとおりに写ってもそれが写真として正しいとも限りません。
というのは、目が自動的に明暗や色調などの補正をかけたり、脳が記憶をすり替えたりします。これは撮った本人などその場を見た人だけではなく、ほかの人も経験的に同種のものに対しての記憶を持っています。写真と記憶のギャップが大きいようならば、写真を見たときに違和感が発生するのです。
たとえば、照明のせいで実際には黄色かったりほかの色になったりしていても、“白い皿”は“白い皿”として記憶に残ります。
撮るときにカメラボディーで補正を掛けたり(「ホワイトバランスを調整する」といいます)、ストロボの光を当てて発色を良くしたりします。あるいは、撮ったあとの画像データをPhotoshopなどで補正し、「記憶に残ったのに近い色にする」にする必要があります。
素人写真・ヘタな写真があふれている理由
これほど素人写真・下手な写真を目にするようになったのには、「SNSとスマホが普及した」「メディアの主流が印刷物からネットに移った」せいだと考えています。
ライターや編集者がスマホとSNSしか知らない
もう中高年しか知らない世界でしょうが、かつては、新聞・雑誌などの印刷物がメディアの主流でした。対抗できるのはテレビぐらいです。印刷物のメディアは数が限られており、大半はお金も支払わないと手に入りません。そこに使われる写真の多くはプロが撮ったものでした。あるいは、プロが撮っていなくても、チェックを入れる編集者らは写真についても教育を受けていました。
ネットのメディアは費用の面でも人材の面でも簡単に作れるようで、雨後のたけのこ状態です。「ディレクター」や「編集者」を名乗っていても、単に職場内の割り振りでそう名乗っているだけの人も少なくありません。当然、写真や文章についても「昨日まで素人」です。もしかしたら、特段の興味もないかもしれません。
そういった人らが知っている写真は、「スマホで撮って、SNSにアップする」だけのようです。
スマホ&SNSだと、多くの場合、撮るときは「そっちに向かってシャッターを切る」だけで特段の工夫もしません。撮ったあとのレタッチもしません。もしレタッチをしたとしても、「インスタ映えするように、コントラストを上げ、色もどぎつくする」と、むしろ写真としては質を落とすのも珍しくありません。
スマホ&SNS式にやってしまうと、「記事にとってどういった効果があるか」「長く大事に使われるように」には気が配られません。「2、3日話題になればいい」ぐらいのところではないでしょうか。少なくとも私が接したWeb編集者らの大半は、そうとしか思えない写真の扱い方をします。
素人同士で情報交換している
かつてカメラは、写真に興味を持った人が「自分はこんな写真が撮りたい」「どこのメーカー、どの機種がいいか」「予算はどのくらいかけられるか」と考えて買うものでした。興味を持って始めるからには、『写真の撮り方』といった本にも目を通します。
今は、スマホにカメラがついています。スマホは生活必需品なので、「カメラが欲しいかどうか」を考える前に、手元に(スマホ内蔵の)カメラがあります。なんの前段階もないままに写真を始めてしまうのです。
そんな始め方をしても、なかには興味を持ち、撮り方を気にする人もいます。さらにはミラーレスやデジイチに進む人もいるでしょう。
しかし、「SNSなどのネット情報」が立ちはだかります。
ネットの世界では、ちょっと分かったつもりの人が情報を発信し、それを真に受ける人が出てきます。これは、「写真の撮り方」だけではなく、「カレーの作り方」から「ネコの飼い方」「Webデザインのノウハウ」、あげくは「がんの治し方」まであらゆることに共通する傾向です。
本当は何カ月何年かけてじっくり取り組まないといけない話も、「ポイントをひとつかふたつ押さえればOK」になりがちです。面倒くさいことをいうとフォロワーさんに敬遠されますので。しかも、そのポイントもしばしば間違っています。
写真にまで費用がかけられない
「雨後のたけのこ」だけにネットのメディアはもうかっているとは限りません。どうやらかなりの低予算でやっているところが大半らしく、その場合、記事に使う費用も微々たるものです。
取材ものの記事でも、カメラマンは使わずにライターについでに撮ってもらうのが珍しくありません。写真に品質を求めようもなく、「スマホの写真でもOKです。ライターさんが撮ってください」といった募集も当たり前に見かけます。
これを受けて、多くのライターが自分のアピールポイントに「写真も撮れます」を掲げています。そのアピールの文言でよくあるのは「デジイチも持っているので写真も撮れます」です。「所有機種、Nikon○○、Nikon○○、レンズは○○、○○」と持っている機材の名前をひらすら挙げている例もあります。
どうやら、写真撮影に腕(スキル)が必要とは思っていないようです。
これが板前や大工だったらどうでしょう。「包丁とナベがあるので、料理ができます」「ノコギリとカナヅチがあるので、工事もお任せください」といっているようなものです。あなたは仕事を依頼するでしょうか。
サイトの効果を考えるのならば、写真への興味は不可欠
スマホ&SNSでしか写真を知らないWebディレクターやWeb編集者と、「カメラを持っているので写真も撮れます」のライターらの関係は、いわば「 割れナベにとじぶた」です。互いにストレスなくやっていけているのならば、「どうぞお好きに」というしかありません。
しかし、もし真剣にサイトに取り組んでいて、「離脱率」「読了率」「滞在時間」「コンバージョン率」に一喜一憂しているようならば、写真が盲点になっている可能性も考えてみましょう。
それには、「『じっと見ていられる写真』と『すぐに目を離してしまう写真』があるのに気がつく」が第一歩だろうと思います。違う言い方をすれば、「写真に興味を持ってくださいな。自分も訪問者になったと想像して、素人写真・ヘタな写真にどう反応するかイメージしてみましょう」です。
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