アーカイブズと分野間協力

◆International Council on Archives Congress 2016◆

2016年9月7日
分野間の協力

ICA総会2日目お昼に聞いた発表を二つ。
(ICA総会については以前のnote参照)

アーカイブズ分野内にとどまらない協力関係のお話。

※Abstractの翻訳をもとに。

[その1]実効的発展へ従来の概念を越えて:国際開発分野の専門家はアーキビストとアーカイブズコミュニティから何を学び得るか

オーストラリア国立公文書館のFiona GUNN氏と、フィジーの国立公文書館のOpeta ALEFAIO氏による発表。

世界の開発専門家は、いかにして開発の効果を高めるか日々議論を続けている。
貧困・不平等の軽減、成長の促進、生産性向上のために、オーナーシップ、相互のアカウンタビリティ、結果へのフォーカスなどの原理を取り入れることがより良いアプローチと考えられている。

フィジーの国立公文書館(NAF)とオーストラリア国立公文書館(NAA)は、2015年、オーストラリア外務省が支援する提携プログラムのもと、親密な関係を築いている。
このプログラムは効果的な記録管理をするための容量の増加と、公文書への平等な利用を通して、フィジーの行政を向上することを目的としている。

この提携を通して、アーカイブズ団体の発展において期待される実践的アプローチは、相互学習、協力、協同関係の原理を典型的に体現化していることが見出された。
これらの原理は、まさに友好関係の役割に光を当てる「ポスト発展アプローチ」を表しており、感化や分かち合いが通ずるような信頼ある環境を作り、情報の管理を高め、文化遺産を保護・保存する効果的な手段として、ピアートゥーピアーのつながりを育成するものである。

このアプローチは、アーカイブズとアーキビズトが国際的にもっている共通認識(「世界アーカイブ宣言」参照)によって実証される。
この共通認識と「共通言語」は、国際的な協力プログラムの成功において重要な要素である。


[その2]脱文脈のオブジェクト:アーカイブズ、証拠、知識及び損失

続いてもオーストラリアから、メルボルン大学のMike JONES氏による発表。

例えば図書館で収集されるものは一点ずつ分類して管理されるが、アーカイブズにおいては資料群のもつコンテクストが重要視される。
それを前提に、以下発表内容。

・・・・・・・・・

50年間で急速な技術の変化があったが、未だに博物館におけるコレクションの管理や収集は、モノや人口の産物、標本と、アーカイブズ記録とを別に考えている。
研究技術は、コレクションがすでに知られているか、他のところで同一のものが存在しているかどうかを気にせず、個人の利用者に対して、ばらばらのアイテムの関係を結ぶ責任を放棄してきた。

【これにより、もたらされる問題】
・重大なコンテクスト情報が博物館の関連オブジェクトとは切り離される
・暗黙の了解と個人的な記録管理システムに継続的に頼ってきたために、知識を喪失する危険性が高まる
・属性データに関する証拠を失うことでコレクション収集の権威が低下する
・一層窮屈になった視野・経路によってどのようにコレクションにアクセスし利用するかということを不必要に制限してしまう

これらの問題は随所に明らかであり、さらなるコレクションのデジタル化の普及と、伝統的な展示デザインと学芸員の習慣性によって、仲介を失ったアイテムレベルの記述を踏まえると、変化の必要がいっそう差し迫っている。

アーカイブズと博物館記述の学際的な向上によって、研究者やコミュニティー、一般大衆に役に立つ、コレクションを基盤とした知識の獲得と維持、普及の助けとなることを強調する。

コレクション記述において、協力的で関わりのある、ネットワークに基づくアプローチをとりいれることで、文脈と証拠のリンクを補っている事例:
The Field Book Project

(Smithsonian National Museum of Natural History)
博物学を記録するフィールドブックを身近に感じてもらうための入り口。

・・・・・・・・

オブジェクト、すなわちモノというのは、単独で存在するのではなく(not isolated)、何らかの関係性(link)を持っているということを主張されていたのが印象に残っている。


AY



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